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国土交通省 省エネ基準を段階的に引き上げ 今後を見据えた高性能住宅の仕様づくりが鍵に
4月から省エネ基準への適合義務化がスタートするほか、2030年にはZEH水準が求められるなど、省エネ基準は今後段階的に引き上げられる予定です。今回は、これから求められる高性能住宅の仕様に加え、ナイス㈱独自の省エネ計算シミュレーションによるサポートについてご紹介します。
4月から省エネ適合義務化がスタート
建築物省エネ法の改正により、4月から原則全ての新築住宅・非住宅に、省エネ基準への適合が義務付けられます。建築確認申請において省エネ関連の書類が必要となるほか、事前に第三者機関による「省エネ適合性判定」を受けることが求められます(図1)。工務店様の申請業務の手間に加えて審査機関の負担も増加することから、確認申請の遅延によって着工の遅れが発生することが懸念されます。
省エネ基準の適合判定においては、外皮性能や一次エネルギー消費性能の計算を行う「性能基準」と、各部位の断熱材の仕様や設備の性能などが一定基準以上であれば省エネ基準適合とする「仕様基準」の二つの適合方法があります。仕様基準を活用することで、外皮性能や一次エネルギー性能基準の計算が不要となるほか、事前の「省エネ適合性判定」が省略されます。「誘導仕様基準」を活用すれば、断熱等級5・一次エネルギー消費量等級6への適合判定も可能です。
仕様基準による判定では申請業務の負担が軽減されることから、当社でも仕様基準による省エネ基準適否判定を即時に確認できる独自のシステムを昨年開発しており、工務店様の効率的な仕様検討をサポートしています。
今後はZEH水準が最低ラインに
今回の義務化に続き、2050年のカーボンニュートラルの実現を見据えて、住宅・建築物での省エネ対策が今後も強化される見込みです。
2021年に国土交通省が公表した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」では、2050年にストック平均でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保と、これに至る2030年以降に新築される住宅・建築物はZEH水準の省エネ性能の確保を目指すとの目標が掲げられています(図2)。それを踏まえ、2月18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」においては、こうした目標と整合するよう規制・制度の在り方を検討し、住宅・建築物における省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施すると宣言したほか、更なるゼロ・エネルギー化を進める観点から、省エネルギー性能の大幅な引上げを実施するとともに、自家消費型太陽光発電の促進を行うよう、「ZEH」の定義を見直すとしています。加えて、ハウスメーカーをはじめとする、年間供給量が一定数以上の大手住宅事業者に対して通常より高い省エネ機能の目標を課すトップランナー制度においても、窓などの目標基準値の改訂や対象拡大に取り組むとしています。
こうした背景から、注文住宅・建売住宅の新築戸建住宅におけるZEH化率の推移は年々上昇しています。(一社)環境共創イニシアチブが12月に公表したZEHビルダー/プランナーの実績報告によると、2023年度の新築戸建住宅におけるZEHシリーズ供給戸数は97,065戸で、着工統計にみるZEH化率は27.6%となりました(図3)。ハウスメーカーは高水準で推移していることに加え、一般工務店も着実にZEH化率を伸ばしています。断熱等級5が求められるZEH水準が今後の最低ラインとなることを見据えて、仕様を見直す工務店様が増加していると考えられます。
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高断熱化に伴い重要度が増す気密性能
高断熱仕様を導入しても、気密性能が低いと外気の影響を受けやすくなり、居住者の快適さが損なわれてしまうことから、断熱性能と併せて気密性能を向上させることが重要となります。気密性は、施工完成前に専用の機器を窓に設置し、住宅の隙間の合計面積(㎠)を建物の延べ床面積(㎡)で割った値となるC値(隙間相当面積)の計測によって評価できます。現行の断熱性能等級は気密性については対象としていないものの、自治体の中には住宅の新築に対する補助金の要件としてC値の基準を追加している都道府県もあります(図4)。今後、高断熱化が進むにつれて同様の動きが拡大することも想定されるため、気密性能に着目した住まいづくりが求められています。
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高まる断熱等級6以上のニーズ
国土交通省は今年度の住宅取得支援策として、「子育てグリーン住宅支援事業」を創設しました。同事業は、2050年のエネルギー価格などの物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して、「GX志向型住宅(ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅)」の導入をはじめとする裾野の広い支援を行うとともに、既存住宅においても省エネ改修等への支援を行うものです。ZEH水準に満たない住宅ストックの更新機会が限られている中、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてストック平均を改善する牽引役として、「GX志向型住宅」の早期普及が不可欠とされています。
GX志向型住宅の具体的な要件は、一般の一戸建住宅の場合、「断熱等性能等級6以上」「再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率35%以上」「再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率100%」の三つの要件を全て満たすことが必要となります。加えて、HEMSにより、住宅全体が使用するエネルギーの見える化及び設備・機器の制御が可能な手法を導入することが求められる予定で、詳細については現在検討が進められています(図5)。
補助額は一戸当たり160万円と、昨年の「子育てエコホーム支援事業」での新築住宅への補助額から増額されていることから、本事業の活用を想定して住まいの購入を検討するお客様の増加も見込まれます。
モデルプランによる仕様のシミュレーションが可能
断熱地域区分5~7地域の場合、断熱等級6はUA値0.46以下、断熱等級7は0.26以下で適合となります。フェノールフォームなどの高性能断熱材やトリプルサッシの仕様が求められるほか、内断熱と外断熱の両方を組み合わせた付加断熱が必要となる場合があり、建築コストの増加も予想されます。コストパフォーマンスを考慮しつつ、断熱等級6以上を確保する仕様の検討を進めることが重要です。
当社では独自のシステムにより、工務店様がご希望する商品仕様をお伺いすることで、外皮計算、一次エネルギー削減率計算のシミュレーション結果をスピーディーにご提供することが可能です。断熱地域区分と事前に用意された複数のモデルプランから工務店様が建築予定の案件に類似するプランを選択し、断熱材や玄関ドア、エアコン等の仕様をお伝えいただければ、UA値及び一次エネルギー削減率の目安を計算することなく把握することができます(図6)。また、GX志向型住宅はもちろん、HEAT20のG2、G3といった性能の評価基準への適合も確認することができます(図7)。詳細は、弊社担当営業までご相談ください。