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政府 2024年度補正予算 3省連携により住宅の省エネ化を推進
「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」の財政的な裏付けに当たる、2024年度補正予算が国会にて成立し、一般会計の歳出総額は13兆9,433億円となりました。今回は同予算のうち、国土交通省・環境省・経済産業省・林野庁における住宅・建築物及び木材利用等に関する内容を主にご紹介します。
国土交通省
「子育てグリーン住宅支援事業」を新設
国土交通省は2024年度補正予算として、国費総額2兆2,478億円を計上しました。このうち住宅関連の取り組み支援として、総合経済対策の「物価高の克服~誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつける~」において掲げられた、エネルギーコスト上昇に強い経済社会実現に向けた省エネ住宅の普及促進を図るため、環境省との連携により新たに創設された「子育てグリーン住宅支援事業」に2,250億円が充てられました。同事業では、2050年カーボンニュートラルの実現を目的に、新築住宅について、エネルギー価格などの物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して、ZEH水準を大きく上回る「GX志向型住宅」の導入や、2030年度までの「新築住宅のZEH基準の水準の省エネルギー性能確保」の義務化に向けた裾野の広い支援を行うとともに、既存住宅についても、省エネ改修等への支援を実施するとしています。
そのほか、「国民の安心・安全の確保~成長型経済への移行の礎を築く~」においては、能登半島地震からの復興のための住宅整備に向け、自力再建が困難な被災者を対象に、自治体が整備する災害公営住宅への支援等に約215億円を計上しました・加えて、住宅・建築物の耐震化促進による防災・減災対策として、高齢者世帯の耐震改修の促進に向けた住宅金融支援機構の「リ・バース60」を活用した、耐震改修融資の無利子化への支援に22億円が計上されました。
環境省
既存住宅の断熱性向上を促進
環境省は2024年度補正予算として、4,740億円を計上しました。住宅・建築物の断熱化等や脱炭素志向型住宅の導入、自家消費型再エネ・蓄電池の導入のほか、二国間クレジット制度の促進等による途上国の環境保全や、一般廃棄物処理施設の整備を推進するとしています。
住宅・建築物分野では、「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2025事業)」に1,350億円が計上されました。同事業では、高い断熱性能を持つ窓への改修に関する費用について、工事内容に応じて1戸当たり最大200万円が補助されます。そのほか、断熱材、窓・ガラス、玄関ドアなどにおける高性能建材を用いたトータル断熱改修を対象とする「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」に9億円が計上、「子育てグリーン住宅支援事業」における脱炭素志向型住宅(GX志向型住宅)の導入に対する支援として500億円が充てられ、国土交通省・経済産業省との連携によって、住宅の断熱性向上が図られます(図)。
加えて、「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」に48億円が計上され、業務用施設のZEB化・省CO2化の普及を更に推進するために高効率設備導入等の取り組みが支援されます。
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経済産業省
家庭・企業における省エネ機器の導入を推進
経済産業省は2024年度補正予算として、4.4兆円を計上しました。このうち住宅関連の取り組みとして、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(給湯省エネ2025事業)」に580億円、「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(賃貸集合給湯省エネ2025事業)」に50億円が計上され、エネルギーコスト上昇への対策として家庭エネルギー消費量の削減が推進されます。
また、「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」に300億円が充てられ、工場・事業場等の産業・業務部門における省エネ性能の高い設備・機器への更新に関する費用について、企業の複数年の投資計画に対応する形で支援を実施し、中小企業等の省エネ機器等への更なる投資拡大が促されます。
そのほか、中小企業の賃上げ環境の整備に向けても、手厚い支援がなされます。「中小企業生産性革命推進事業」に3,400億円、「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」に1,400億円が計上され、生産性向上に向けた成長投資を支援することで、持続的な賃上げを推進する方針を掲げています。
林野庁
林業・木材産業の体質強化や国内需要の拡大を支援
林野庁は2024年度補正予算として、1,416億円を計上しました。このうち、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づく施策として、林業・木材産業国際競争力強化総合対策に459億円を計上しました。具体的には、「林業・木材産業の生産基盤強化」に111億円が充てられ、木材製品の国際競争力の強化に向けた合板・製材・集成材工場等の大規模・高効率化、低コスト化、高付加価値化等のための木材加工流通施設の整備のほか、原木の低コストかつ安定的な供給のための路網整備、高性能林業機械の導入、搬出間伐の実施等がなされます。また、「建築用木材供給・利用の強化」には30億円が充てられ、非住宅分野等における木材製品の消費拡大に向けたJAS構造材の実証的な活用、CLTを活用した設計・建築等の実証、木造公共建築物の整備等が支援されます。そのほか、林業機械の自動化や森林資源情報のデジタル化の推進、林業における新規就業者の育成・確保の支援も併せて行われます。
加えて、「持続可能な成長に向けた農林水産施策の推進」に向けた施策の一つとして、「花粉症解決に向けた緊急総合対策」に57億円が計上されます。「花粉症対策初期集中対応パッケージ」の着実な実行に向けて、スギ人工林の伐採・植替え等の加速化やスギ材の需要拡大、花粉の少ない苗木の生産拡大をはじめとする総合的な対策が推進されます。