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新春特別対談 2025年 日本経済の展望 日本銀行横浜支店長 大竹 弘樹氏・ナイス株式会社 代表取締役社長 津戸 裕徳
2024年の日本経済は、雇用・所得環境の改善が進むなど、緩やかな回復基調となりました。一方で、海外景気の下振れや、物価・エネルギー価格の高騰などにより先行き不透明な状況が続いており、経営環境の変化への対応が求められています。今回は、新春特別対談として、昨年に続いて日本銀行横浜支店長の大竹弘樹氏をお迎えし、2025年の日本経済の展望や住宅・木材産業の可能性などについて伺いました。
日本銀行横浜支店長
大竹 弘樹(おおたけひろき)氏
北海道出身。1997年東京大学法学部卒業。同年日本銀行入行。2009年政策委員会室企画役、2012年金融機構局企画役、2013年内閣官房出向日本経済再生総合事務局参事官補佐、2015年業務局企画役、2017年金融市場局企画役、2018年同市場企画課長、2020年システム情報局システム企画課長、2022年企画局企画調整課長を経て、2023年5月より横浜支店長。
ナイス株式会社代表取締役社長
津戸 裕徳(つどひろのり)
1998年当社入社。2020年3月当社上席執行役員資材事業本部副本部長、2023年3月当社上席執行役員管理本部副本部長、6月当社取締役管理本部副本部長、7月当社取締役管理本部長、2024年4月に代表取締役社長に就任。
2024年の経済情勢の振り返り
堅調な企業業績が株価の上昇に影響
津戸 まずは2024年を振り返りながらお話を伺えればと思いますが、株価の動向についてはどのように見ていらっしゃいますか。
大竹 2024年の株価動向を概観してみると、7月には史上最高値となる4万2,224円を記録しましたが、8月以降は米国経済の見通しの悪化や為替の円高等もあり、年初来安値をつける場面がありました。その後は上昇傾向にあると見ておりますが、年初来高値を更新するには至っていません。この背景として、2024年から始まった新NISAを通じて個人の投資資金が株式市場に流入したことが年初からの株価の上昇に寄与したという指摘もありますし、様々な統計や民間調査を見ても、2023年度の企業業績が前年比で増益となったこともあり、株式相場の上昇につながった面があると見ています。一方で、2024年度の業績については、総じて前年度に比べて控えめな見通しが多い印象です。7月から9月にかけては、為替相場の円高が輸出企業の業績に及ぼす影響が懸念され、投資家が先行きの経済環境の不確実性について意識を強めている状況でした。
津戸 為替動向についてはいかがでしょうか。
大竹 為替相場は様々な材料で変動しますが、2024年に関しては、日本と海外との金利差や、金融市場参加者における金利差の先行きの見通しの変化が、為替相場の動向に影響を及ぼしたという見方が大勢かと考えています。例えば、7月上旬から円高方向へ反転した動きの背景としては、米国の主要経済指標が少し弱めの結果となり、市場参加者が、日本の利上げ、米国の利下げを通じた日米金利差の縮小の見通しを強めたと見られます。一方で、9月半ば以降に円安基調に戻った背景としては、改めて米国経済の底堅さを示すデータが相次ぎ、米国大統領選挙の結果を受けて米国の金利が上昇したことがあると考えています。
津戸 次期アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が再選しましたが、選挙活動中にトランプ氏が優勢となるや、それを見通しとして織り込んだ様々な動きが見られました。
大竹 金融市場というのは、随時、情報を修正しながら動いていく部分が多分にあると思います。
「2024年問題」による人手不足が顕在化
津戸 昨年の新春特別対談において、2024年問題について、建設現場における「4週8閉所」や物流における時間外労働の制限など、様々な影響が出るのではないかとのお話を伺いました。振り返って、いかがでしたでしょうか。
大竹 人手不足については、建設や物流といった、いわゆる「働き方改革関連法」の対象業種を含め、日本経済の全体にとって大きな課題になっています。例えば、9月の日銀短観で見ると、企業の雇用人員の過不足について判断を示す指標である雇用人員判断DIは、全ての業種でマイナス、すなわち人手不足という結果となりました。2024年問題の対象業種である建設や物流に関しても例外ではなく、人手不足が更に強まっていくという見通しとなっています。人手不足の影響として、建設に関して言えば、工期の長期化や労務費の上昇により建設コストが上昇し、設備投資計画の先送りや縮小といった動きが一部に見られています。また、物流に関しては、サプライチェーンの機能に大きな支障・障害が発生している状況にはありませんが、輸送費用が上昇しているという指摘はあります。価格転嫁の実現という前向きな点がある一方、物流機能が十分に維持されているかどうかという点も含め、引き続き2024年問題の影響については注視していく必要があると考えています。
津戸 建設の人手不足感については当社も新築マンションの建設コストの上昇から実感しています。立地や間取り等の違いもあり一概には言えませんが、RC造の新築マンションの建築原価はこれまでの1.5倍から2倍近くまで上昇してきています。
大竹 特に建設業においては、工程や工事内容で分業化されており、どこか一つの工程で支障が生じた場合には、建物工事全体の工期の長期化等につながる側面があるかと思います。県内の建設会社様に伺う中でも、やはり人員の確保にご苦労されているように見受けられます。
2025年の経済情勢の展望
賃金と物価の好循環の実現に向けた歩み
津戸 「賃金と物価の好循環」を目指される中、現在、実質賃金は下げ止まっています。今後、賃金と物価の動向についてはどのように見ていらっしゃいますか。
大竹 消費者物価の上昇については、このところ前年比2%台半ばでの推移が続いています。一方、賃金については、消費者物価の上昇を考慮した実質賃金で見ると、賞与の増額等もあり一時的に前年比プラスとなりましたが、足下では横ばいとなっています。ただ、改善基調は続いていると判断しています。賃上げの動きは、2023年と2024年の春闘ではそれまでと比べて高水準のベースアップが実現しており、賃金と物価の好循環の実現に向けた歩みは着実に進んでいると考えています。2025年の春闘についても、引き続き賃上げの動きを期待しています。一方、中小企業を中心として、まだ価格転嫁が容易ではないとの声も聞こえてきます。賃上げの持続性の確保や、中小零細企業を含めた裾野の拡大に向けて、賃上げの原資となる企業収益の確保が重要であると考えております。
津戸 物価については、輸入物価の上昇によるコストプッシュ・インフレの状況ですが、景気の改善による内需拡大を通じたディマンドプル・インフレとなることが必要だと思います。物価安定の目標である消費者物価の前年比上昇率2%が継続するためには、どの程度の水準の賃上げが理想的だとお考えでしょうか。
大竹 2%程度の物価上昇が安定的に実現している状態を考えますと、それを幾分か上回る賃金の上昇が安定的に続いていくことが、所得の改善や消費者の生活実感など、暮らし向きの改善という点でも非常に重要だと思います。これが、ひいては消費の活性化にもつながり、まさに賃金と物価の好循環という状況につながります。実質賃金がプラス、すなわち消費者物価の上昇を上回る賃金上昇が安定的に実現していく、そうした持続性が重要であると考えています。
株式市場では輸出企業の業績改善等に注目
津戸 企業業績と株価の動向については、どのようにお考えでしょうか。
大竹 2024年度の企業業績の見通しについては、前年度に比べると少し控えめな見通しも見られています。2024年夏に見られた為替相場の円高方向への動きは、その後、円安基調に転換しており、今後、海外経済の動向も踏まえ、輸出企業の業績見通しが改善するのかどうか、どの程度の幅で改善するかに注目しているところです。また、内需型の企業につきましては、コスト上昇や物価上昇が企業の投資意欲や個人消費に与える影響について、今後の賃上げの持続性とともに見ていく必要があると考えています。ただし、年明け、米国の政権交代以後の政策の動向をはじめとして、経済環境は先行きの不確実性が高くなっていますので、この不確実性が払しょくされるまでの間は、株式市場においても企業収益の確たる見通しは立てづらい面があると思います。
津戸 今後の金利動向については、いかがでしょうか。
大竹 日本銀行では3カ月ごとに「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を出しています。総裁の植田は、これら展望レポートでの経済物価の見通しが実現していくのに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくと説明しています。また、その判断については、年8回開催している金融政策決定会合の場で行われます。10月に公表した展望レポートで各政策委員の見通しの中央値を見ますと、実質GDP成長率は2024年度が前年度比プラス0.6%、2025年度がプラス1.1%、2026年度がプラス1.0%との見通しとなっています。また、変動の大きい生鮮食品を除いた消費者物価指数は2024年度が前年度比プラス2.5%、2025年度がプラス1.9%、2026年度がプラス1.9%となっています。したがって、この見通しが実現していくであろうと判断できるかどうかを、毎回の金融政策決定会合で点検し、その裏にある経済のメカニズムを注視しながら、政策金利の取り扱いを都度判断する形になります。
神奈川県内の景気は回復基調
津戸 神奈川県内の景気動向についてはいかがでしょうか。
大竹 神奈川県の景気は、全体として緩やかに回復していると判断しています。企業部門について見ると、9月公表の短観において、2024年度の経常利益の見通しは4年連続の増加となっていますし、設備投資もコスト高や人手不足の影響を受けているものの、4年連続で増加する計画となっております。企業部門においては、収益から設備投資という好循環が引き続き維持されていると考えています。一方、家計部門に目を向けると、雇用・所得環境は持ち直してきており、個人消費は一部に弱めの動きが見られますが、着実に回復していると判断しています。個人消費の面では、物価高の影響を受けた生活防衛意識から、スーパーなどを中心として支出抑制の動きが引き続き見られていますが、インバウンドも含めた高額品の消費などは総じて堅調であり、サービス消費も同じく堅調に推移しています。
住宅投資に目を向けますと、新設住宅着工戸数は全国に比べてやや強めの推移となっていますが、物件価格の上昇もあり、全体としては弱めの動きと判断しているところです。先行きのリスクという面では、海外経済の成長の鈍化やコスト高・物価高の影響を注視していくといった状況です。海外経済については、回復ペースの鈍化自体は一旦落ち着いたと見ていますが、再び鈍化した場合には、輸出の下振れを通じて神奈川県経済自体が下振れするリスクもあると考えています。コスト高・物価高の影響については、企業収益や家計の購買欲の低下などによって経済の前向きな循環を損なわないのか、引き続き点検をしていきたいと思います。
住宅・木材業界の展望
住宅価格は二極化・多様化が進む
津戸 木材価格はウッドショック以降、調整局面が続いてきましたが、原木コストや労務費、物流費を含めると、ほぼ底値に近付いているのかなという実感です。一方、輸入物価が上がってきており、原材料コストや製造コストが上昇していることから、住宅価格が現在よりも下がるかというと、その要素は見つからないと考えています。住宅マーケットについて、今後の見通しはいかがでしょうか。
大竹 確たる見通しが持ちづらい面もありますが、一つは建築費の高騰の影響があります。これは資材価格の高騰が一つの要因で、木材についてはウッドショックから少し落ち着いた状況ではありますが、全体としてその他資材も含めると上昇しています。労務費も上昇を続けておりますし、土地の仕入れでは地価の上昇の影響が出ています。これらの要因から、住宅価格自体は上昇を続けていると見ています。こうしたこともあって、神奈川県の住宅需要は相対的に価格の低い県西部の購入需要にシフトしているほか、購入から賃貸へのシフトの声も聞かれています。やはり、住宅価格の高騰自体が、住宅の購入・賃貸を含めたニーズに対して一定の影響を及ぼしていると思います。
津戸 神奈川県内でも住宅需要に違いが出ているということですか。
大竹 そうですね。やはり、川崎や横浜は都心へのアクセスが良好なこともあり、物件価格も上昇しています。また、湘南エリアの中でも違いは出てきています。なお、県西部への購入需要のシフトは、コロナ禍におけるリモートワーク需要で盛り上がった時とは少し異なっていると見ています。コロナ禍は通勤頻度が落ちたことから、都心から距離が離れても住みやすさや価格を重視する傾向がありましたが、現在は、出勤回帰の動きもあり通勤が重要な要素になっていることで、価格を見ながら立地の検討が行われていると見られます。
津戸 1947年から1949年生まれの団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで生じる「2025年問題」について、不動産市場に与える影響はどのように見ていらっしゃいますか。
大竹 2025年には国民の約5人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上となり、数字の上でも高齢化が意識されてくると思います。すでに相続の増加や、それに伴う空き家の増加が指摘されています。ただ、不動産市場、特に住宅市場については、その影響は必ずしも一様ではないと見ています。既に人口の減少が進んでいる、あるいは先行きで人口の大幅な減少が見込まれる地域では、住宅需要も減少が続き、住宅価格も低下していく可能性があると思います。一方で、大都市や地方中核都市はある程度人口の流入が続くと考えられますので、住宅需要も底堅く推移すると見ています。住宅価格については、地域ごとの特性や需要の強さに応じて二極化ないし多様化すると考えています。
木材利用拡大の可能性に期待が高まる
津戸 木材業界においては、トランプ次期大統領による関税引き上げやロシア・ウクライナ情勢をはじめとした地政学的リスクなど、先行きを見通す上で様々な影響が考えられます。これらの影響を踏まえ、木材をはじめとした輸入製品の動向等についてお考えを伺えますか。
大竹 トランプ次期大統領が表明している政策については、関税の引き上げという貿易に直接的な影響を及ぼすものだけでなく、財政や外交・防衛などの政策が米国経済、ひいては世界経済に影響を及ぼす可能性があると見ています。現状、選挙活動で表明した政策がどのように実行されていくのかは見通し難い部分もあるかと思いますが、足下で見ると、減税の拡大などにより国債が増発されるという見立てを金融市場では持っており、その結果、米国の国債利回りは上昇しています。このため、日米金利差が拡大するとの見通しから円安の圧力を高めている可能性があります。円安が一段と進行した場合には、わが国の輸入物価が上昇に転じる形になりますので、輸入木材等についても価格が押し上げられる可能性があります。また、ロシア・ウクライナ情勢などの地政学的リスクが低減した場合には、各国経済が改善基調となり活発化することで、様々な需要の拡大を通じて木材価格が上昇傾向を辿るという可能性もありますので、今後の動向を注視し、その影響がどう波及していくかを見極めていくことが重要であると考えています。
津戸 輸入木材について、海外サプライヤーは、中国やヨーロッパの市場が落ち込んでいるために日本市場を重視しているものの、国内需要もそこまで強くなく、現在の為替水準では十分な価格転嫁ができていないのが現状です。需給調整のために減産や解雇を行っており、仮に各国経済が復調した場合も急な増産には対応できず、木材の需給はひっ迫すると見ています。当社としては、価格変動が輸入木材と比べて相対的に少なく、安定供給が可能な国産材の供給を拡大していく方針です。
脱炭素社会の実現という観点からも、国は様々な施策を通じて国産材の利用拡大に取り組んでいます。国産材の利用拡大の可能性については、どのようにお考えでしょうか。
大竹 2021年10月に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市の木造化推進法)が施行され、以降、国や地方公共団体、民間企業との間で「建築物木材利用促進協定」を締結する動きが広まっています。「都市の木造化推進法」が、前身となる法律と異なるのは、①木材の利用の目的として脱炭素社会の実現に資するということを明記した点、②木材利用促進の対象を公共建築物だけでなく民間の一般建築物にまで拡大した点、そして③建築物木材利用促進協定の制度を設けた点の3点です。こうした形で建築物一般に対する木材利用の促進が脱炭素社会の実現に資するという国の考え方を明示したため、これについてはある種「お墨付き」ということで、建築物木材利用促進協定の締結が促されている側面があると思います。木材利用の拡大という可能性は一段と広がっていくことが期待されると考えています。
津戸 当社グループも、2023年5月に農林水産省と「国産材の利用拡大に関する建築物木材利用促進協定」を締結しました。様々な企業様が同協定を締結している中で、同じく農林水産省と協定を締結されているセブン‐イレブン・ジャパン様が新たに福岡市に出店された環境配慮型店舗において、福岡市産または福岡県産の木材の調達と加工を担当させていただきました。セブン‐イレブン・ジャパン様に木材を多用した店舗の反応をお聞きしたところ、様々な自治体からお問い合わせがあったようで、木材利用促進協定の動きは確かに広がりを見せていくのではないかと思います。更に、農林水産省と協定を締結した企業同士が情報交換の場を持つなど新たな動きも今後見込まれ、木材利用促進の機運が一層高まっていくことが期待されます。
大竹 景観上、広告に制限がかかる地域などでは、地域の特殊性に応じて、これまでは店舗の外観などにおいて配慮されてきましたが、これからは内装等も含めて地域産材の循環利用などが意識されていくことになるのかもしれませんね。
津戸 本社の近隣で、当社が所有する築32年のマンションについて、共用部分と専有部分を含め1棟まるごと木質化リノベーションを実施し、全34戸の居室について築年数が同等の近隣物件よりも1万円ほど高い水準で設定し、入居者募集を行ったところ、約2カ月という短期間で全てが成約に至りました。当社グループでは本物件について、東京大学農学生命科学研究科木材利用システム学寄付講座が行った「木質内装を用いた住居改装による事業性評価※」の研究において、データ提供等の協力を行いました。本研究によると、木質建材を用いることで1㎡当たりの賃料は288円増加するという結果が得られました。木の持つ温かみなどの情緒的価値だけでなく、経済的価値をお示しできると、今後の木材利用も更に広がっていくものと考えています。
※ 長坂健司、井上雅文:木質内装を用いた住居改装による事業性評価. 第74回日本木材学会大会講演要旨集(電子版), 2024, W13-03-1015.
大きく変化する経営環境
価格転嫁と人手不足対応が重要
津戸 最後になりますが、環境変化が著しい中で、住宅・木材関連事業者様へのメッセージ、また、企業経営として生き残っていくためのアドバイスを頂戴できればと思います。
大竹 コロナ禍を経て、企業経営の環境は大きく変化しました。特に2022年以降、企業の倒産件数は増加に転じています。これまでのところ、倒産の多くは、コロナ禍の前から業況が良くなかった中小零細企業が占めておりますが、新しい経営環境への対応が全ての企業にとって重要な経営課題となっていると感じています。少し具体的に申し上げると、1つ目は仕入価格だけでなく、エネルギーコストや人件費、労務費を含めたコスト上昇に対応するべく価格転嫁をどう実現するのか、2つ目として、給与等の引き上げを通じた人手確保などの人手不足への対応が重要な課題と言えると思います。また、小幅ではありますが金利上昇が始まっており、資金の借り入れコストが上昇することへの対応が必要となってきています。金利上昇については、日本銀行では2024年中に3月、7月と2回にわたって政策金利の引き上げを行っています。この間、市場金利連動型の借り入れに適用される基準金利は上昇を続けており、短期プライムレートも7月の利上げ後は各金融機関が引き上げる動きが広まっています。今後は新規の借り入れや、変動金利における既存の借り入れの金利更改のタイミングで借り入れ金利が上昇する形になりますので、ご留意いただければと考えています。
近年、様々な技術の進歩に伴い、構造部材としての木材の利用が広がってきています。加えて、建築物木材利用促進協定にあるように、脱炭素の観点からも木材の役割が高まっていると感じています。こうした役割を今後も維持していくという上では、原木の生産から、住宅・建築物の建設、そして維持管理までつながる、木材利用のサプライチェーンが適切に機能する状態を維持していく必要があると思っています。木材を生産、加工、利用する関連事業者の皆様が自社の経営の安定化に取り組まれることと同時に、自社の取引先とのつながりや、共存共栄を意識して取り組まれていくことが大事なのではないかと考えています。また、住宅はもちろん、商業建築や伝統的な社寺建築などにおいても、多様な種類の木材を様々に加工して活用されていると思います。このように考えると、木材に関するサプライチェーンは昔から構築・維持されてきた部分があり、関連事業者の皆様1社1社の取り組みを通じて、今後も社会全体での安定的な木材の利活用が続いていくことを期待しています。
津戸 本日は多岐にわたり、様々なお話をいただき誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。