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ナイスグループ 高経年マンションの木質化リノベーションを実施 内装木質化による資産価値の向上を実現
カーボンニュートラルの実現に向けて建築物への木材利用の促進が図られる中、ナイスグループでは、建築物の木造化に加えて、マンションの共用部及び専有部などにおける木質化に取り組み、付加価値の向上を目指しています。今回は、ナイス㈱が保有する「ナイスフォーラム鶴見」の木質化リノベーションが収益性に与えた影響と、当社グループが協力した東京大学の内装木質化の事業性に関する研究についてご紹介します。
木質化リノベにより満室稼働と賃料アップを実現
「ナイスフォーラム鶴見」は、ナイス㈱が保有する住居とオフィスの複合ビルです。築32年を迎えた2022年に、内装の木質化リノベーション工事を実施しました。本リノベーション工事では、エントランスの壁や天井に不燃仕様の木質パネルやルーバーを使用したほか、床は木質と相性の良い木目タイルに張り替えることで、温かみが感じられ、高級感のある空間を演出しています(図1)。住戸フロアの廊下では、落ち着きのあるウォールナット色を基調としつつ、各住戸の玄関前に木質パネルをアクセントとして設置しています(図2)。各住戸においては、遮音性能を有する無垢もしくは突板のフローリングを採用しているほか、自由に組み合わせてオリジナルの収納がつくれる無垢の棚板収納を備え付けています。室内デザインは全部で6種類用意し、アクセントクロスや床の色調等で変化を持たせています(図3)。
本リノベーション実施後、1部屋(約20㎡)当たりの月額賃料を築年数が同等の近隣物件よりも1万円ほど高い水準で設定し、入居者募集を行ったところ、約2カ月という短期間で全34戸が成約に至りました。年間賃料の合計で考えると、近隣相場を約350万円上回っています。また、満室稼働を継続することで、合計賃料によって本リノベーション工事に要した費用を1年未満で回収できる計算となります。
東京大学の内装木質化の事業性に関する研究に協力
ナイスグループは、東京大学農学生命科学研究科 木材利用システム学寄付講座が行った「木質内装を用いた住居改装による事業性評価※」についての研究において、データ提供等の協力を行いました。
本研究では、民間における木材利用の飛躍的な拡大に向けては、木材を用いることによる環境及び社会課題に対する貢献に加え、事業収益の確保も重要であるとし、内装木質化による賃貸住居の改装が賃料に与える影響を実際のデータから推計しています※。
当社グループは、「ナイスフォーラム鶴見」におけるリノベーションをはじめとして、マンションやオフィス等における内外装の木質化を通じて、高経年物件の資産価値を向上することを目指していることから、本研究へ協力する運びとなりました。具体的には、本研究の分析対象である神奈川県内の賃貸ワンルームの賃料等のデータ提供や、オブザーバーとして賃貸管理業に関する情報提供を行ったほか、木質化が与える印象等に関する社員アンケートを実施しました。
本研究によると、非木質の建材を用いてワンルームの物件を改装した場合の賃料の増加額は1㎡当たり494円となった上(図4①)、木質建材を用いることで、1㎡当たりの賃料は更に288円増加するという結果となりました(図4②)※。これにより、賃貸住居の改装においては、木質内装を用いることで物件の経済的な価値が高まることが客観的なデータによって示されました。当社グループでは引き続き、木質化の更なる推進を行っていきます。
※ 長坂健司、井上雅文:木質内装を用いた住居改装による事業性評価. 第74回日本木材学会大会講演要旨集(電子版), 2024, W13-03-1015.