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林野庁 改正クリーンウッド法が2025年4月施行 川上・水際での合法性確認・記録の作成・情報伝達を義務化
2017年に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称「クリーンウッド法」)」が改正され、2025年4月に施行されます。このたびの改正では、違法伐採対策の取り組みを強化するべく、川上・水際の木材関連事業者に合法性確認等の義務付けがなされます。今回は、木材等の譲り受け等に係る義務及び努力義務を中心に同法の主な改正点についてまとめました。
合法伐採木材等の流通及び促進を強化
クリーンウッド法は、法令に適合して伐採された木材や木材製品(合法伐採木材等)の流通及び利用を促進し、地域及び地球の環境保全に資することを目的としています。同法において、事業者に対して合法伐採木材等の利用の努力義務を課すとともに、合法性の確認等を確実に行う木材関連事業者を第三者機関が登録すること等により、合法伐採木材等の流通及び利用の促進が図られています。
一方、同法施行以降、登録された木材関連事業者により積極的な合法伐採木材等の取り扱いがなされているものの、木材の総需要量に占める合法性が確認された木材量の割合は約4割にとどまっています。そのような中、更なる取り組みの強化に向けて、川上・水際の木材関連事業者の合法性確認等を義務化する改正法が2023年に成立、2025年4月に施行されます。この改正クリーンウッド法では、国内市場における木材流通の最初の段階での対応が重要になるとして、主に(1)川上・水際の木材関連事業者による合法性の確認等の義務化、(2)素材生産販売事業者による情報提供の義務化等の措置が追加されました(図1)。
義務化対象は第1種事業者と素材生産販売事業者
義務化の対象となるのは、木材等の譲り渡しの決定に直接関わる第1種事業者と素材生産販売事業者です。木材の所有権の有無は関係なく、販売受託は義務の対象となり得ます。また、自家消費等の流通に関与しない場合は、木材関連事業者に該当せず、義務対象とはなりません。
例えば、国産材の場合、原木市場等の素材流通事業者、山元から「直送」を受ける製材工場、加工まで行う樹木の所有者など、国内市場に木材を最初に流通させる者が第1種事業者に該当し、第1種事業者に対して委託を含む素材の譲り渡しを行う者が、素材生産販売事業者となります。なお、委託されて伐採や加工等のみを行う事業者については、譲り渡しを行わないため同法の対象外となります(図2)。
輸入材の場合は、輸入事業者が第1種事業者に該当し、輸入事業者と同一の法人格を持つ海外の部署等を通じて直接調達する場合は、その事業者全体が第1種事業者の扱いとなります。
そのほか、同法の対象となる木材等については、いわゆる木材については基本的に広く該当すると基本方針に規定されたほか、家具・紙等の物品については、新たに「戸及びその枠」が追加されました(図3)。
(1)川上・水際の木材関連事業者へ合法性確認等を義務化
①原材料の収集、合法性の確認
改正クリーンウッド法では、川上・水際の第1種事業者が、素材生産販売事業者または外国の木材輸出事業者から木材等の譲り受け等をする場合において、第1種事業者に対して、「原材料情報の収集、合法性確認」「記録の作成・保存」「情報の伝達」が義務付けられます(図1)。
このうち原材料情報については、樹種、伐採地域、証明書に関する情報を収集・整理することが義務付けられます。証明書には、国産材であれば、伐採造林届出書や、森林経営計画認定書、森林認証材であることを示す書類(SGEC、FSC等)、合法木材GL(木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン)に基づく合法木材証明書等が該当します。輸入材であれば、各国が発行する証明書や、森林認証材であることを示す書類等が該当します。なお、複数の証明書が入手可能でも、少なくとも一つを収集すれば義務を履行したとみなされます。
また、原材料情報に加えて、遅くとも木材等を次の者へ譲り渡す時までに、リスクに応じた合法性を確認することが求められます。違法伐採リスクは取り扱う木材や調達先によって異なるため、画一的な対応を行った場合に合法性の確認が不十分となる可能性があります。そのため、リスクを踏まえて合理的に行うことが求められます。また、収集等した原材料情報が正しいとは限らないため、国が提供する情報や取引の実績などの関連情報を踏まえて、合法性の確認の信頼性を高めることが重要となります。
合法性の確認については、トラック等の個別の譲り受け単位で行う必要はなく、任意の単位での確認となりますが、まとめて実施した場合に一部でも合法性確認木材等でない木材があった場合、確認を行った木材等の全体について合法性が認められないことに注意が必要です。
②記録の作成・保存
①で収集等した、原材料情報に関する情報、合法性確認の結果、合法性を確認した理由について、遅くとも木材等を次の者へ譲り渡す時までに電子または書面で記録を作成することが求められます。また、作成した記録については、原則5年間保存する必要があります。
③情報の伝達
原材料情報の収集結果に関する情報及び合法性確認木材等であるか否かの情報について、木材関連事業者に木材等を譲り渡す際に伝達することが求められます。伝達方法は、電子メールやFAX、情報をアップロードしたクラウドのURLなどのほか、製品の包装や納品書に印字することも可能ですが、口頭での伝達は認められていません。第1種事業者が自社のウェブサイトで消費者に販売する場合、木材関連事業者ではない事業者へ譲り渡す場合には情報伝達の義務は課されませんが、合法性の確認及び記録の作成・保存の義務は課される点に留意が必要です。
なお、情報を伝達された第2種事業者に対しては、合法木材等か否かの情報を受け取ることと、受け取った情報の保存、木材関連事業者への情報伝達という努力義務が課されます。
(2)素材生産販売事業者による情報提供を義務化
合法性の確認に資する情報の提供を義務付け
素材生産販売事業者には、素材の生産及び流通について、譲り渡し先や方法を主体的に決定する者が該当します。ただし、伐採のみを行う事業者は、伐採木の売却等の判断を行わないため該当しません。具体的には、自ら伐採及び販売を行う自伐林家や、伐採のみ委託して販売は自ら行う樹木の所有者のほか、伐採と販売の両方を受託した素材生産事業者が該当します(図2)。
改正クリーンウッド法では、素材生産販売事業者に対しては、(1)における第1種事業者の合法性の確認等が円滑に行われるよう、木材関連事業者の求めに応じて「合法性の確認に資する情報」を提供することが義務付けられます(図1)。「合法性の確認に資する情報」とは、原材料情報のことで、合法性を証明する証明書が複数存在する場合、木材関連事業者から複数の提供を求められれば、応じなければなりません。
義務が生じるのは、木材関連事業者から求めがあった時点から当該事業者が合法性確認を完了するまでで、情報提供前に当該木材が譲渡されれば、応諾義務は消滅します。なお、情報提供に応じられないことを木材関連事業者に回答した場合には、対応したとみなされ、応諾義務違反とはなりません。
(3)その他の措置
主務大臣による罰則規定を新設
前述の(1)及び(2)に関し、主務大臣による指導・助言、勧告、公表、命令、命令違反の場合の罰則規定が設けられます。このうち、命令違反となった場合には、100万円以下の罰金が科されます。
毎年の定期報告が義務化
一定規模以上の木材等を取り扱う第1種事業者に対し、取り扱った木材等の数量等について、毎年一回の定期報告が義務付けられます。一定規模の基準として、「国産材(丸太)の総量3万㎥」「輸入した木材を丸太換算した総量3万㎥」「輸入した家具・紙等の物品の総量1.5万トン」の三つの区分が定められており、いずれかの基準を上回った場合、全ての区分について報告する義務が生じます。
具体的な報告内容は、第1種事業者として譲り受けた木材等の総量と、その総量のうちの合法性確認木材等の数量となり、前年度の4月から3月を対象期間として、毎年6月末までに報告することが求められます。なお、第1回目は、2025年度実績について2026年6月末までに報告することが求められます。
合法伐採木材等の利用確保を努力義務化
合法伐採木材等の利用を確保するために取り組むべき措置が、第1種及び第2種事業者の努力義務として明確に規定されました。具体的には、責任者の設置や取り組み方針の作成などの体制の整備のほか、合法性確認木材等の数量を増加させるための措置として、取引相手の選定に当たって国が提供する情報や取引実績等を踏まえる必要があります。
また、違法伐採に係る木材等を利用しないようにするために、合法性確認木材等でない木材等または違法伐採に係る木材等を譲り受けた場合、次の取引相手の選定を行う際、取引相手の見直しや変更を検討することなどが求められます。
(4)施行日に関する考え方
施行日以降の譲り受け等の完了が対象
改正クリーンウッド法が2025年4月に施行されることに伴い、第1種事業者の譲り受け等の完了が施行日以降の場合、同法に基づく義務の対象となります。一方、第1種事業者の譲り受け等の完了が施行日前であれば、第1種事業者から他の木材関連事業者への譲渡のタイミングにかかわらず、義務の対象とはなりません。
図は全て林野庁資料より作成