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国土交通省 「令和6年能登半島地震」建物被害に関する中間取りまとめを公表 耐震性確保に向けた対策の方向性を示す
現地調査の結果等を踏まえて有識者委員会が原因分析
国土交通省は11月1日、「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」における中間取りまとめを公表しました。同委員会は、国土交通省国土技術政策総合研究所及び国立研究開発法人建築研究所によって開催されており、両研究所が実施している「令和6年能登半島地震」に関する現地調査の結果に加えて、様々な機関による調査の結果や関連データを幅広く収集・整理し、専門的、実務的知見を生かして原因分析等が行われています。
本取りまとめでは、3回にわたって行われた議論を踏まえて、地震及び地震動の特徴について分析するとともに、木造建築物をはじめとする住宅構造別の被害の特徴と要因、調査結果を踏まえた対策の方向性などが示されています。同省では、本取りまとめの内容を踏まえて、建築物の耐震性の確保及び向上に向けた具体的な方策を検討する方針です。
新耐震基準導入以前の木造建築物の約2割が倒壊
木造建築物の被害の特徴と要因については、建築された年代ごとの被害状況が明らかにされています。これによると、新耐震基準導入以前の木造建築物の倒壊・崩壊は19.4%(662棟)、新耐震基準導入以降では、2000年の接合部等の基準の明確化以前の倒壊・崩壊は5.4%(48棟)、2000年以降の木造建築物の倒壊・崩壊は0.7%(4棟)となり、これらの結果は、平成28年熊本地震の際に実施した調査結果と同様の傾向となっています(図)。なお、2000年以降の木造建築物で倒壊・崩壊した4棟のうち図面が収集できた2棟については、壁の釣り合いの良い配置の規定を満たしておらず、このうち1棟については壁量規定を満たしていなかったことが確認されています。
また、地方公共団体の補助を受けて耐震改修を行った木造建築物における被害の状況については、旧耐震基準の木造建築物38棟のうち、無被害が34%(13棟)、軽微から中破までが58%(22棟)、大破が8%(3棟)となり、倒壊・崩壊した建築物は確認されませんでした。これらの結果から、耐震改修を行っていない旧耐震基準の木造建築物の被害割合と比べ被害が小さく、耐震改修により被害が軽減されたとの考えが示されています。
建築物の耐震化を一層促進
調査結果を踏まえ、構造躯体等の耐震安全性の確保に向けた課題として、住宅の耐震化率が挙げられています。能登半島における住宅の耐震化率は、輪島市で45%、穴水町で48%、珠洲市で51%となっており、国土交通省の推計による全国の住宅の耐震化率87%(2018年)と比較して低く、耐震化が進んでいないことが被害の拡大につながったと指摘しています。旧耐震基準による建築物の耐震化を一層促進していくとともに、国土交通省が今年8月に公表した「木造住宅の安全確保方策マニュアル」について、地方公共団体や関係事業者等へ広く周知することなどにより、木造住宅の安全確保の推進を図るとしています。
また、新耐震基準の木造建築物については、接合部の仕様等が明確化された2000年以降の倒壊率が低く、現行の規定が地震による倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められる一方で、明確化された仕様等に適合しない住宅があることにも留意し、新耐震基準導入以降の木造住宅を対象とした効率的な耐震診断方法の周知普及を図る方針です。