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国土交通省 木造建築物の適切な維持保全・維持管理情報をまとめたパンフレットを公表 建築物の木造化・木質化に向けて懸念事項を整理
維持保全・維持管理の考え方や事例を紹介
国土交通省は10月18日、木造建築物の適切な維持保全・維持管理情報をまとめたパンフレット「中大規模建築物に木材を使用する際に知っておきたい維持保全・維持管理の考え方と設計等の工夫」を公表しました(図)。
木造建築物の維持保全・維持管理の方法については、資料や情報の蓄積が少ないことから、2023年度に「木造建築物の適切な維持管理情報の提供事業委員会」において、既存建築物の事例調査や耐久性確保のための留意点などの整理がなされました。このたび公表されたパンフレットは、同委員会における成果をもとに、建築物の木造化・木質化を検討する際、懸念事項となる経年劣化や維持管理方法、コストなどについてまとめたものです。
本パンフレットにおいて対象とされている木造建築物のイメージは、低層を含む4~5階建て程度の非住宅用途または共同住宅です。構法や耐火要件にかかわらず、躯体や内外装材に木材を利用する場合の一般的な維持保全・維持管理の考え方や、部位別の維持保全・維持管理の考え方に加えて、参考情報として、木材を利用した場合のコストシミュレーション例が紹介されています。
腐朽・蟻害は早期の発見と対応が必要
躯体や内外装材に木材を利用する場合の維持保全・維持管理の考え方については、環境による木材に生じる変化の違いや、構法によって目視確認ができる範囲が異なることを考慮して、維持保全・維持管理を実施することが効果的であるとしています。具体的には、被覆する場合、室内側に全体現しとする場合、屋外に全体露出する場合など、構法によって異なる維持保全上の留意点についてまとめられています。
また、木材の表面に生じる変化について、色彩の変化(エイジング)、風化(ウェザリング)、生物汚染に分けて、変化が生じる原因や変化の内容、必要な対応などについて紹介されています。加えて、木材特有の生物劣化現象である腐朽・蟻害については、これらが躯体を構成する木材に発生した場合は構造安全性に大きく影響することから、最も注意が必要であると述べています。必要に応じて耐久性の高い木材を用いるとともに、点検等による早期発見、建築物の診断等による原因の特定及び補修方法の検討、補修・修繕の実施が重要であるとしています。
部位別のメンテナンスについて事例を示す
部位別の維持保全・維持管理の考え方については、床下、屋根・屋上、外装材、躯体と接合部、外部建具、内装材に分けて、生じる経年変化と不具合の例や設計等における工夫の例などが示されています。例えば、外装材に生じる経年変化や不具合について、直射日光や雨水から躯体を守る機能を長期にわたって維持するために、初期の木材保護塗料の塗装、定期的な再塗装及び修繕を実施するとともに、外壁面が位置する方位によって塗装の周期を変えるなどの工夫の実例が示されています。
また、参考情報として、木材を利用した場合のコストシミュレーションの例についても紹介されています。内外装材に木材を用いた場合の建設コストや、外壁の一部を木質化した場合の維持保全コストに関する試算結果が、具体的な数値で示されています。