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内閣府 「令和6年度 年次経済財政報告」を公表 既存住宅流通市場の活性化に向けた課題を整理
中古住宅を志向する動きを後押しするための課題を検証
内閣府は8月2日、「令和6年度年次経済財政報告」を公表しました。本報告では、日本経済の現状と課題の分析を通じて、今後必要となる政策の検討に資するための議論がなされており、マクロ経済の動向や人手不足による成長制約を克服するための課題、国内の豊富なストックを生かして豊かな経済社会を実現するための課題等についてまとめられています。このうち、住宅ストックについて、人口減少や単身世帯の増加によって新築需要が減少する一方で、中古住宅を志向する動きが広がりつつあることを踏まえ、この流れを後押しするための課題について検証されています。
既存住宅取得割合が増加傾向
住宅購入を計画している家計における住宅取得動機は、40代までは結婚、出産、子育て、50代以上では老後の安心など、ライフステージの変化を背景としていますが、近年は単身世帯の割合が増加しており、持ち家率の低下に大きく影響していると指摘しています。一方、低水準とは言え毎年の新設住宅着工戸数が積み上がる中で、持ち家の住宅ストック戸数はほぼ横ばいまたは増加傾向で推移することが考えられるとしています。既存住宅取得割合については、住宅金融支援機構が実施した「フラット35利用者調査」をもとに試算されています。これによると、10年前の中古住宅取得割合は15%程度にとどまっていたのに対して、直近の10年間で30%弱程度まで上昇しており、年率換算では20万戸程度に相当します(図)。ただし、主要先進国の水準は大きく下回っており、今後更に既存住宅流通市場を活性化してく必要があるとしています。
課題はリフォーム促進と取引の透明性
既存住宅流通市場をより活性化させるための課題として、リフォームの促進や既存住宅取引における透明性の向上を挙げています。(一社)住宅リフォーム推進協議会が実施した「2023年度住宅リフォームに関する消費者実態調査」によると、リフォームに対して不安に感じていることとして「見積もりの相場や適正価格が分からない」などの費用面の不安が3~4割あるほか、「施工が適正に行われるか」も3割程度となっています。こうしたリフォーム促進の制約となっている要因を踏まえながら、住宅リフォーム事業者団体登録制度の認知拡大など、リフォームに向けた心理的ハードルを低くしていくことが重要であるとしています。
また、既存住宅の購入が幅広い年齢層で活発化しつつある中、消費者保護の観点からも、より透明性が確保される取引制度の構築や業界団体によるコンプライアンスの徹底を進めることについて、既存住宅流通市場を成長させていく上で重要な課題の一つと位置付けています。
内閣府は、既存住宅の流通促進に向けた施策を着実に進めることによって、子育て世代をはじめ多くの人々にとって購入しやすい住宅の供給が促され、生活の質向上にも寄与すると述べています。