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今年度より森林環境税の徴収が開始 森林を持続的に生かしていく取り組みが全国で拡大
森林環境譲与税の財源となる森林環境税の徴収が今年度より開始されました。今回は、森林環境税及び森林環境譲与税の仕組みのほか、各市町村における森林環境譲与税の活用事例についてご紹介します。
森林整備に向けて全国全ての市町村及び都道府県に配分
今年度より徴収が開始された森林環境税は、国税として一人当たり年額1,000円を賦課徴収するものです。徴収された森林環境税は、森林環境譲与税として全国全ての市町村及び都道府県に配分され、森林整備やその促進のための取り組みに活用されます(図1)。
森林環境譲与税は、間伐等の「森林の整備に関する施策」と、人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の「森林の整備の促進に関する施策」に活用することとされています。また、都道府県においては、「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることが義務付けられています。
4年間で約9.8万haの森林整備等を実施
森林環境譲与税を活用した取り組みの進展に伴い、活用額も増加しています(図2)。2023年度における森林環境譲与税の活用予定額は、537億円(市町村分:467億円、都道府県分:70億円)と、同年度の譲与予定額を上回っており、今後も、より本格的な森林整備等の取り組みが見込まれる状況です。
森林環境譲与税を活用した取り組みとして、森林整備では、伐採跡地などに樹木を植える「植栽」、植えられた樹木の生育の妨げになる草木を刈り取る「下刈り」、樹木同士の過密さを防いで適切に日光が当たるように一部の樹木を伐採する「間伐」、そして、これらの作業に必要となる林道の整備など様々な取り組みが行われ、森林環境譲与税の譲与が開始された2019年度から2022年度までの4年間で、約9.8万haの森林整備等が実施されました。
森林整備を担う人材育成では、林業の担い手を育成するための研修や、林業従事者への安全防護服の購入補助、林業に必要な技能講習経費への助成等が実施され、4年間で、約2.7万人が研修等に参加しました。
また、木材利用・普及啓発として、都市部を中心に、公共建築物の木造化・木質化、植樹・木育などのイベント等が開催されています。4年間で、約6.9万㎥の木材が活用されたほか、約6,100回の普及啓発イベントが実施され、約45.8万人が参加しました。
更に、2022年度は、全ての都道府県が市町村支援に取り組んでおり、市町村に提供する各種情報の精度向上や高度化、県レベルの事業支援団体の運営支援、アドバイザーの派遣、市町村職員の研修などを行うところが多く見られました(図3)。
実施可能な市町村の取り組みを紹介
林野庁と総務省は、これまで各市町村が森林環境譲与税を活用して実施してきた取り組み事例を踏まえ「森林環境譲与税を活用して実施可能な市町村の取り組みの事例」(通称:ポジティブリスト)を作成しました。これによると、森林整備では、人工林の整備等として、森林経営管理制度等に基づき、私有林人工林について市町村が発注者となって間伐や地ごしらえ、造林、下刈り等の森林整備を行っているほか、花粉発生源対策として、市町村が発注者となってスギ等の人工林の伐採や花粉の少ない苗木や広葉樹等への植え替えが実施されました。
人材育成では、林業事業体や林業従事者への支援として、新規就業者等の人材育成研修や技術指導及び資格取得に関する経費の補助がなされるほか、研修生への支援として、林業高校の学生の資格取得及び山林実習への支援が挙げられています。
木材利用・普及啓発では、利用者の多い民間建築物の木造化・木質化への補助や木育インストラクター養成講座が開講されました。また、都市側は森林に関する市民講座やシンポジウム等を開催したほか、山村側は、都市や山村の子どもたちの交流植林活動を行うため、植林地の整備や苗木購入等を実施しました。
ナイスグループでは、市町村との連携により、教育施設をはじめとした公共施設の木造化・木質化や、机や椅子などの木製什器の設置に関する取り組みを推進していきます(図4)。