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ナイスグループ 2023年度 木造建設事例のご紹介 木材利用の促進に向けて木造・木質化を推進
「都市(まち)の木造化推進法」が2021年10月に施行されて以降、建築物における木材利用に向けた気運は高まりを見せています。一方、低層及び中高層の非住宅建築物における木造率はいまだ15%未満と低い水準にあり、この分野における更なる木材利用促進が求められます。今回は、2023年度にナイスグループが携わった木造・木質化の事例をご紹介します。
元請けとして全体の施工管理を担当
「青葉保育園」は、敷地面積約5,000㎡、延べ床面積約1,270㎡の木造平屋建てで、社会福祉法人青葉学園が運営する保育園です。昨年7月に着工し、今年3月に引き渡しが行われ、4月1日より開園しました(図1)。施設東側に0~2歳児室や地域交流室、中央に遊戯室やダイニング、西側に3~5歳児室が設けられています。設計は㈱日比野設計が担当し、ナイスグループが木材調達及び元請けとして全体の施工管理を行いました。
細部までこだわり木質感のあふれる空間を実現
同保育園の遊戯室では、梁幅120㎜、梁高450~750㎜の大断面集成材を採用することで、100㎡以上の柱のない大空間を実現しています(図2)。また、内装については積極的に木質化が図られており、準耐火構造に対応するために構造材を石膏ボードで被覆しながらも、天窓付近の梁が露出した部分には木質材料の化粧板を施しているほか、ステージに上がる際に使用する階段の踏板には、スギの表層部を特に高密度化した当社のオリジナル商品「Gywood®」が採用されています。更に、遊戯室をはじめダイニング、地域交流室などの共用室では木質の壁材を使用した上で、壁付けのコンセントやスイッチなどをできるだけ1箇所に集約して壁材の面積を大きくするなど、各部屋で木の温かみを感じられる仕上がりとなっています。
そのほか、青葉学園の保育方針に沿って、園児が自発的かつ快適に学べる環境を実現するための工夫も施されています。1・2歳児の保育室では、目的に応じて空間を使い分けることで今後の園児の活動の幅を広げられるよう、各部屋の間に可動式間仕切りや引き戸が採用されています(図3)。加えて、トイレを含む全ての部屋に自然光が入るような間取りになっているほか、子供の手ばさみを考慮してドアと枠の間に小さな隙間を設けるなど、園児のために細部までこだわり設計された保育園となっています。
―木造に至った経緯を教えてください。
藤本氏 「青葉保育園」として個性のある建物にしたかったという想いがありました。加えて、木や自然をしっかりと感じながら園児がのびのび育つ環境を作れるように、木造平屋で建てたいという夢が以前からあったため、木造を選定しました。
池谷氏 今回は木造かつ準耐火仕様を求められており、躯体を見せることができない部分がありました。そうした中でも木の良さを感じてもらえるように、内装でも木質感を演出できるよう設計しました。
―木の壁材に囲まれた大空間の遊戯室は特に印象的です。
藤本氏 遊戯室が一番木を感じられる空間だと思います。広さもありながら、天井が高いため開放感もあります。今後はここで色んな行事を行い、園児が思い出をいっぱい作ってくれたら嬉しいです。
池谷氏 どの保育室からも入りやすくするために園の中央に位置するよう設計しましたが、方位的に光が差し込みづらくなる可能性がありました。照明器具でも明るさは確保できますが、天窓を設置することで、自然の光を取り込めるようにしました。
―施工を担当したナイスグループはどのような印象ですか。
藤本氏 徹底した工程管理で、安心してお任せすることができました。日比野設計さんとナイスさんの組み合わせで良かったと思っています。
池谷氏 これまでの経験と比べ、今回はかなり余裕をもって完了検査の日を迎えることができました。ナイスさんの段取りのすごさを表していると思います。
―今後の非住宅における木造の可能性について教えてください。
池谷氏 昨今SDGsの取り組みが高まる中で、再生可能な資源である木材はこれから更に重要になると考えています。コロナの影響で国産材への注目度も高まった中、木材利用の促進に向けた取り組みが進めば、今後更に大規模な木造建築が増えていくと思います。
LE VERDURE(レヴェルドゥーレ)FARM HAKUBAは、延べ床面積約240㎡の木造2階建てで、白馬農場㈱が運営するイタリアンレストランです。一昨年の8月に着工し、昨年3月に引き渡し、4月1日より開業しました。1階にはカウンター席やテーブル席、個室などのレストランスペース、2階にはマスタールームとサブルームの二部屋からなる1日1組限定の宿泊スペースが設けられています。設計及び施工は㈱白馬平林建設が担当し、ナイスグループは設計プランの提案を行ったほか、プレカット加工から納材までを担いました。
本物件では、初期の設計段階で、木造建築に関するファーストコール機能を有する「木造テクニカルセンター」にご相談いただきました。提供していただいた平面図を基に、木造化の可否について検討を行ったほか、建物の重心と剛心のずれを示す偏心率を改善して耐震性能を向上させるため、新たに耐力壁を追加する提案などを行いました。
ナイスグループでは、「ウッドビルディングネットワーク」という概念のもと、「情報」「設計」「調達」「生産」「施工」という、中・大規模木造建築を手掛ける上で欠かせない各分野について、案件の性質や内容に応じて必要な機能を補完できるよう、総合的なサポートを可能としています。本物件では、同ネットワークにおける同業連携によって、躯体材の加工についてナイスプレカット㈱が中心となって調整を行い、実際の加工作業は提携のプレカット工場が担当しました。
本物件では、45分準耐火構造とするため、強化石膏ボード等で主要構造部を被覆するメンブレン型工法が採用されています。設計を㈱錬設計が担当し、ナイスグループは木造としての構造設計、木材調達、プレカット加工、元請け施工を担いました。
また、事業主様が保有する土地の有効活用を目的としていたため、経済合理性を重視した設計がなされました。建物を構成する木材のほぼ全てに一般流通材を用いた上で、かかる応力によって部位ごとに強度の異なる樹種を使用するなど、コストに配慮した仕様となっています。耐力壁についても、外周部には構造用パーティクルボードを、室内側には筋交いを採用することで、効率的に耐震性能を確保しています。
本物件は地上3階建ての木造で、川崎市内に現存する市立小中学校としては唯一の木造校舎となります。同校の生徒数増加に伴い、普通教室の不足が見込まれることから、その対応として校舎の増築が計画されました。設計を㈱田設計事務所、施工を㈱八木工務店が担当し、ナイスグループは構造設計と木材調達を担いました。
同校舎には、柱に神奈川県産スギのJAS構造材が採用されているほか、土台に宮崎県産ヒノキ、梁桁に長野県産カラマツや栃木県産スギなど、国産材がふんだんに用いられています。同校舎における木材利用量は185.7㎥で、木材利用率は1㎡当たり0.2㎥と、川崎市が設定する学校等における木材使用量の目標値を大きく上回っています。