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高付加価値な素材開発で建築分野のみならず非建築分野の木質化市場を開拓 「脱プラ・木質化R&Dセンター」を設立

 ナイス株式会社は、10月1日付の組織改編において「脱プラ・木質化R&Dセンター」を設立しました。同センターでは、「国産材利用促進に資する木質化事業」をコンセプトに掲げ、木質化市場の更なる拡大を通じて新たな事業展開を図ります。今回は、同センターが見据えるビジネスモデルやビジョン、具体的な取り組みについてご紹介します。

環境負荷軽減に向けた脱プラ・木質化

 森林は、温室効果ガスの吸収源として大きな役割を担っていますが、木は樹齢を重ねるごとに温室効果ガスの吸収量が減少していきます。国内の森林の状況を見ると、人工林の増加により森林蓄積量が増え続けている一方、人工林は少子高齢化が進んでいます(図1)。そのため、伐期を超えた大径材の活用を推進し、人工林の若返りを図ることが求められます。このような中、2021年10月に「都市(まち)の木造化推進法」が施行されたことにより、建築物の木造化の動きは着実に進展しています。

人工林の樹齢構成の変化

 一方、マイクロプラスチックに代表される難分解性プラスチックにより、環境汚染や健康への被害が社会問題となっており、世界規模で脱プラスチックの動きが加速しています。UNEP(国連環境計画)によると、世界で生産されるプラスチックのうち、約16%が建材分野で使用されており、容器包装等の約36%に次いで高い割合となっています。こうした状況の中、建材分野における木への代替を進めることで、木材利用を更に推進していくとともに、地球温暖化や環境汚染の防止に取り組むことが急務となっています。

付加価値の高い木質素材開発を推進

 当社では、今年5月に公表した「中期経営計画2023」において、到達目標の一つとして「国産木材№1」を掲げ、その達成に向けた成長牽引策として内外装木質化事業の推進を図っています。新たに設立した「脱プラ・木質化R&Dセンター」では、付加価値の高い木質素材の開発及びブランド化に取り組むことで、建築物のみならず、非建築物分野における木質化市場の開拓を目指しています。

 当社はこれまで、スギをはじめとする国産針葉樹を用いたオリジナル木質素材の開発に取り組んできました。例えば、表層圧密テクノロジー「Gywood®」は、軟らかく傷がつきやすい針葉樹の表層部を特に高密度化することで、針葉樹本来の特長である軟らかさ、軽さ、熱伝導率の低さなどを維持したまま、表面硬度と形状安定性を高めた進化した無垢材です。また、宮崎県産飫肥(おび)杉の大径材のうち赤身部分のみを使用した「ObiRED®」は、豊富な抽出成分によって高い耐久性を有するとともに、独自の乾燥技術によって形状安定性を高めています。

 今後は、これらオリジナル木質素材における機能の複合化として、高耐候性、高機能塗装、防炎・不燃化などの研究を進めるとともに、付加価値が高く、差別化が図れる新たな木質素材の開発に向けた研究を進めていきます。

素材を武器とした新たなビジネスモデル

 「Gywood®」「ObiRED®」をはじめとするオリジナル木質素材は、建築物の内外装材としての採用事例が増加しています。例えば、当社グループが構造設計から木材調達、元請け施工まで一貫して携わった木造の保育園「Rita School」では、床やデッキ、バルコニーなど内外装材として幅広く採用されています(図2)。また、建築物のみならず、家具などの非建築物分野においても、オリジナル木質素材が採用される事例が増えつつあります。具体的な取り組みとして、老舗家具メーカーの柏木工㈱が製作する家具に「Gywood®」が採用され、家具に求められる傷の付きにくさに加え、スギの大径木ならではの美しい木目や滑らかな手触りが生かされています(図3)。更に、アピトンなどの南洋材が使われることが多いトラックの荷台について、「Gywood®」へ代替する取り組みも開始しており、11月30日・12月1日に開催する「木と暮らしの博覧会」では、実物が展示される予定です(3面に関連記事掲載)。

図2Rita School図3柏木製家具

 今後、「脱プラ・木質化R&Dセンター」では、家具や住宅設備機器、生活雑貨、玩具といった非建築物分野へ素材提供することで、安定的かつ持続的な受注、無垢化粧材の規格化・標準化などを実現し、木材・無垢材が使われてこなかった用途の開発を推進することで、木質化市場の更なる開拓を目指します。

「脱プラ・木質化R&Dセンター」 が掲げる三つのビジョン

1. インフラ再生

 独自の技術を持つ木材加工業者様との連携により、丸太や製材の歩留まりだけではなく、付加価値の高い素材の開発を目指します。これにより、製材加工業の収益力向上に貢献するほか、開発した素材について新たな需要を創造し、様々な用途での利用を推進することで、日本の林産業の活性化を図ります。

2. 環境再生

 持続可能な資源であり、森林が持つ多面的機能の発揮にもつながる木材の利用推進によって、SDGs達成への貢献を目指します。プラスチックをはじめとする化石資源由来の材料から木材・無垢材への代替を通じて、本物の素材を利用することによるQOLの向上や、有機的循環利用サイクル(5R=リデュース:削減、リユース:再利用、リサイクル:再生利用、リカバー:熱回収、リニュウ:再生産)による環境再生に大きく貢献できると考えています。

3. 資源再生

 日本の森林は、スギ・ヒノキ等の針葉樹人工林の蓄積が過半を占め、その蓄積量が年々増大している一方、林業の担い手不足による荒廃が進み、森林資源の「少子高齢化」が進行しています。これら針葉樹をはじめとする資源で付加価値の高い素材を開発することで、川上への利益還元や資源の更新可能性を高め、花粉症問題等で低下しているスギ・ヒノキの価値向上につなげ、人・モノ・経済の生きた循環(LIVE CYCLE)を目指します。

脱プラ木質化センターお問い合わせ

Gywood® 公式サイト

ObiRED® 公式サイト