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ニュース&レポート

政府 花粉症対策 初期集中対応パッケージ取りまとめ 来年の飛散時期見据え集中的な対応を実施

    政府は10月11日、第3回花粉症に関する関係閣僚会議を開催し、「花粉症 初期集中対応パッケージ」を取りまとめました。同パッケージには、伐採・植え替え等を実施する重点区域の設定や、国産材を活用した住宅に関する表示制度の構築、国産材使用状況の公表など、新たな施策が盛り込まれています。今回は、発生源対策としての具体的な取り組みを中心にご紹介します。

社会課題である花粉症問題の解決

 多くの国民が発症し、その症状に悩まされる花粉症問題の解決に向けて、関係省庁が連携して様々な対策を効果的に組み合わせて実行していくため、今年4月に「花粉症に関する関係閣僚会議」が設置されました。5月には、来年の花粉の飛散時期を見据えた施策とともに、今後10年を視野に入れた施策も含め、花粉症解決のための道筋を示す「花粉症対策の全体像」が明らかにされました。

 来年の花粉の飛散時期が近づく中、「花粉症対策の全体像」に基づき、「発生源対策」「飛散対策」「発症・曝露対策」を3本の柱に据え、全体像が想定する期間における初期の段階から集中的に実施すべき対応について、「花粉症対策 初期集中対応パッケージ」として取りまとめ、本パッケージに沿って着実な実行に取り組むとしています。

伐採・植え替え等の重点区域を設定

 花粉の発生源であるスギは、成長が早く、日本の自然環境に広く適応できる樹種として、高度経済成長期における木材需要の増大をはじめとする社会・経済的要請に応えるために、積極的な造林が推進されてきました。現在、スギ人工林の面積は約444万haで、日本の人工林面積の約44%を占めています(図1)。

日本の人工林面積の割合

 社会問題となっている花粉症の解決に向けて、スギ人工林を減少させる必要があることから、本パッケージでは、「発生源対策」として、スギ人工林面積を10年後の2033年度に約2割減少させることを目指して、スギ人工林の伐採・植え替え等の加速化、スギ材需要の拡大等の対策が集中的に実施されます(図2)。

新たな花粉症対策の展開

 伐採・植え替え等の加速化については、重点的に伐採・植え替え等を実施する区域を今年度中に設定したうえで、伐採面積を現行の年間約5万haから、10年後には約7万haまで増加させるとともに、花粉の少ない苗木や他樹種への植え替え等を進めることにより、スギ人工林の減少スピードを約2倍にすることを目指すとしています。具体的には、スギ人工林の伐採・植え替えの一貫作業の推進や、伐採・植え替えに必要な路網整備の推進、意欲ある林業経営体への森林の集約化の促進等を進める考えです。

住宅生産者の国産材使用状況等を公表へ

 スギ材需要の拡大については、スギ材を活用した木造建築物の着工面積の増加、住宅分野におけるスギ材製品への転換の促進、大規模・高効率の集成材工場等の整備等を進めることにより、スギ材製品の需要を現行の1,240万㎥から10年後に1,710万㎥へ拡大する目標が掲げられています。

 具体的には、国産材を活用した住宅に関する表示制度の構築や、住宅生産者による国産材使用状況等に関する公表などについて今年中を目処に実施するほか、2024年4月に施行予定の、建築物での木材利用をしやすくする改正建築基準法の円滑な施行を目指す方針です。また、横架材等のスギ材への置き換えに資する集成材工場の整備や、スギ材のJAS構造材等を利用した建築を行う事業者への支援、スギ材の活用に向けた技術開発等、スギの利用促進に向けた取り組みが実施される予定です。加えて、木材利用の意義等を国民に向けて情報発信するなど、スギ材の需要拡大に向けた普及・啓発活動にも取り組むとしています。

花粉の少ない苗木の生産を拡大

 伐採後の植え替えにおいては、花粉の少ない苗木の増産体制の整備を官民連携で短期的かつ集中的に進めることで、花粉の少ないスギ苗木の生産割合を現行の5割から10年後に9割以上に引き上げることが目指されます。具体的には、国立研究開発法人森林研究・整備機構における原種増設施設の整備支援、民間事業者によるコンテナ苗増産施設の整備支援、スギの未熟種子から花粉の少ない苗木を大量増産する技術開発支援等が実施されます。

 また、林業労働力の減少が見込まれる中、意欲ある木材加工業者等による高性能林業機械の導入を促進するとともに、他産業との連携や外国人材の受け入れ拡大等の施策により、10年後も、過去10年と同程度の生産性の向上及び現在と同程度の労働力の確保を図るとしています。

花粉飛散量の予測と飛散防止

 「飛散対策」としては、スギ花粉の飛散量予測と飛散防止に向けて様々な取り組みが実施されます。来年の花粉飛散時期には、より精度が高く、分かりやすい花粉飛散予測が国民に提供されるよう、航空レーザー計測による森林資源情報の高度化やそのデータの公開が推進されるほか、今秋に実施するスギ雄花花芽調査において、民間事業者へ提供する情報の詳細化等に取り組む考えです。

 また、「発症・曝露対策」として、花粉症の発症を予防し、症状を緩和させるため、花粉症の治療のための体制整備や適切な情報提供、花粉飛散時期に合わせた花粉症対策製品や予防行動の普及啓発などが進められます。

花粉症に関する関係閣僚会議