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木材利用促進月間特集 「国産材パッケージ」 横架材も含めオール国産材の家づくりを提案
一昨年のウッドショックを経て、木材調達の安定性を確保するために、国産材による家づくりにシフトする動きが見られています。今回は、木材利用促進月間特集として、住宅1棟分の木材を国産材でコーディネートする「国産材パッケージ」について、その特長やパッケージを実現するサプライチェーン、2024年問題を見据えた地域材による提案などについてご紹介します。
相場に左右されない国産材の利用促進
2021年、新型コロナウイルス感染症の拡大に端を発して、木材の需要と供給のバランスが崩れて価格が高騰する、いわゆる「ウッドショック」が顕在化しました。ウッドショックによる輸入材の供給不安リスクを経験したことで、海外情勢に左右されない国産材にシフトする動きが加速しています。全国建設労働組合総連合が昨年12月に公表した「工務店の国産材利用の実態調査アンケート」の結果によると、ウッドショックを経た変化として、多くの工務店様が構造材を中心に「輸入材製品から国産材製品へ転換した」と回答しており、こうした需要に対応していくことが求められます(図1)。
当社においても、今年5月に公表した「中期経営計画2023」における到達目標の一つとして「国産木材No.1」を掲げたほか、同月に農林水産省と「国産材の利用拡大に関する建築物木材利用促進協定」を締結するなど、建築物への国産材の積極的な利用の推進を図っています。
これらを具現化する取り組みの一つとして、住宅1棟分の木材を国産材でコーディネートする「国産材パッケージ」を提案しています。
横架材への国産材使用について構造検証
「国産材パッケージ」では、構造材から羽柄材、内外装材に至るまで、住宅1棟分の木材を国産材でセレクトしてパッケージ化しています。材料の供給不安や価格の不安定さが懸念される昨今において、年間単位で決めた棟数に必要な木材を供給するとともに、合意した期間における価格を事前に取り決めておくことで、工務店様や住宅会社様が安心して家づくりに専念できるよう提案しています。
一戸建住宅における国産材の使用状況を見ると、木造率については約9割と高い水準にありますが、使用される木材の国産材比率は約5割にとどまっています。特に、梁や桁などの横架材については、強度などの問題から約1割にとどまっています(図2)。
「国産材パッケージ」では、建築基準法や同施行令、国土交通省告示に準拠した木造住宅構造計算システムを用いて構造をチェックし、横架材への国産材の使用について検証しています(図3)。その結果、建築プランごとに適した樹種や梁せいの国産材を選定しており、スギのKD材についても横架材の一部として使用することを提案しています。
集成材によるパッケージで大径材活用を推進
同パッケージには、国産のスギやヒノキ、カラマツなどの集成材も含まれており、これによって大径材の有効活用を推進しています。
国内の森林は高齢級化が課題となっており、建築用材としての適齢期を超えた大径材の活用を進めていく必要があります。大径材を木取りする場合、丸太の芯を中心に柱や土台、桁などの構造材を取り、周辺の肉厚な部分から大量の羽柄材が取れることになり、建築用材としての需給バランスが崩れてしまいます。そこで大径材を芯も含めて余すことなくラミナを挽き、集成材として活用することで、部材のバランス調整が容易になります(図4)。無垢材と集成材をバランス良く組み合わせたパッケージ提案によって、大径材の有効活用、森林資源の循環利用に貢献していきます。
ストックヤード、アッセンブル機能で安定供給を実現
国産材仕様の家づくりを実現するためには、安定的に国産材を調達、供給するためのサプライチェーンを構築することが不可欠です。木材市場の運営をルーツとする当社では、創業から70年以上にわたって培ってきた全国の製材事業者様などとのネットワークを生かし、国産材の安定的な調達を可能としています。大手製材事業者様だけではなく、中小の製材事業者様とも連携し、構造材や羽柄材、内外装材などをきめ細かく調達しています。
また、全国の木材市場や物流センターを木材のストックヤード拠点として活用し、多種多様な国産材を常時ストックしています。同パッケージにおいては、仙台物流センター、前橋市場、相模原市場、木更津物流センター、小牧市場、滋賀市場を主なストックヤード拠点として活用し、安定的な供給を実現しています。
更に、工務店様や住宅会社様の需要に細かく対応するために、梱包単位で販売するのではなく、構造材から羽柄材まで邸別にアッセンブルして供給する体制を整えています。実需を把握して対応することで、より多くの取引先様に材料を供給することが可能となります。
当社では、素材生産事業者様などの「川上」、製材事業者様や木材加工事業者様などの「川中」、工務店様、ビルダー様などの「川下」をつなぎ、それぞれの事業者様と顔の見える密な関係を構築しています。これを生かし、川下の実需を川中、川上に伝える役割を担うことで情報流をつくり、安定的かつ持続的な国産材の調達と供給を実現していきます。
オリジナル商品を内外装に提案
同パッケージでは、構造材や羽柄材だけではなく、内外装の木質化についても提案しています。当社は、工場を持たないファブレスメーカーとして、独自の技術を持った国内各地の製材メーカー様や木材加工メーカー様などと、付加価値と機能性を高めたオリジナル商品を共同開発し、提案しています。
例えば、主に国産針葉樹の大径材を活用した「Gywood®」は、木材の表層部を特に圧密し、高密度化した木材製品です。表層部に比べて中層部は圧密度が低いため、針葉樹の特長である調湿性の高さや熱伝導率の低さ、衝撃吸収性、軽さなどはそのままに、広葉樹のように傷が付きにくい硬さを併せ持つ、ハイブリッドな無垢素材です。フローリングや階段、カウンターなどの内装材のほか、テーブルなどの家具の素材としても用途が広がっています。同じく、オリジナル木材製品の「ObiRED®」は、宮崎県産飫肥(おび)杉の大径材のうち赤身部分だけを使用しています。飫肥杉は、豊富な抽出成分を含んでいるため高い防腐・防蟻性能を有しており、耐久性が求められる造船の材料として古くから使われてきました。加えて、独自の乾燥技術によって抽出成分を損なうことなく高い形状安定性を実現し、デッキやフェンスといったエクステリア材として活用されています。
一部の木材市場では、市場の新たな機能として「見せる倉庫」を運営しています。ストックヤード内に一定のスペースを確保し、オリジナル木材製品をはじめとする選りすぐりの国産材商品を取り揃えて常設で展示しています。木材を直接見て、触れることで、その品質を確認することができるほか、国産材仕様の家づくりについて具体的に検討することができます。
2024年問題を見据え、地域材によるパッケージ提案
2024年4月に、運送業や建設業などの業種で罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されることから、該当する各企業において業務改善、人材確保等の様々な対応が求められる、いわゆる「2024年問題」が控えています。これにより、長距離ドライバーの不足や運賃の値上げ、納品期間の延長といった事態が想定されています。木材については、九州のような産地と首都圏のような消費地に距離があるため、中継地点を設けるなどの対策を講じなければ商品が運べなくなり、納品までに数日を要するなどの影響が見込まれます。また、長距離の輸送には地球温暖化の要因であるCO2の排出が増加するという課題もあるため、環境負荷軽減の観点からも、いずれは地元エリアの木材を使って建築物をつくる、地産地消の流れが強まっていくことが想定されます。「国産材パッケージ」においても、東北、首都圏、中部、関西など、各エリアにおいて地域材を活用したパッケージを構築し、提案活動を開始しています(図5)。
例えば、中部・関西エリアにおいては、国産針葉樹のスギ、ヒノキを中心として構成しており、オール集成材仕様や、無垢材+集成材仕様など、お客様のご要望に応じてパッケージを選択できます(図6)。特に、ヒノキの構造用集成材については、全てのサイズに対応してラインアップしており、邸別にアッセンブル対応することが可能となっています。また、東北エリアにおいては、スギとカラマツの集成材を使用部位や梁せいなどの条件に応じてパッケージしているほか、各県産材を一定量以上使用して住宅を建てる際に支給される補助金なども絡めて、価格メリットも含めた提案をしています。
国産材仕様の家づくりをご検討の際には、最寄りの営業所へご相談いただき、「国産材パッケージ」をぜひご活用ください。