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防災の日特集 関東大震災から100年 改めて問われる自然災害への備えの重要性
今年は、1923年に発生した関東大震災から100年の節目の年に当たります。今回は、防災の日特集として、改めて災害について考え、備える機会とするため、近年発生した大地震や今後甚大な被害が想定される大地震などについてまとめました。また、地球温暖化の加速によって激甚化・頻発化する気象災害の実態や、気候変動への対応としてのナイスグループ環境目標についてご紹介します。
未曽有の被害をもたらした関東大震災
今年で発生から100年が経過する関東大震災は、首都圏に未曽有の被害をもたらした、日本の災害史においても特筆すべき災害です。この地震により、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県で震度6以上を観測し、全壊、全焼した家屋は約29万棟にのぼりました。また、死者・行方不明者は約10万5,000人に及ぶなど甚大な被害をもたらし、近年の大震災と比較しても、その被害規模と社会経済的なインパクトは極めて大きかったことが分かります(図1)。東京での大火災による被害が大きかったため、東京の地震というイメージが定着していますが、神奈川県から千葉県南部を中心に震度7や6強の地域が広がっており、その範囲は1995年の阪神・淡路大震災の10倍以上に達します。その発生日である9月1日が「防災の日」と定められているように、近代日本における災害対策の出発点となっています。
切迫性が高まる大規模地震の発生予測
日本は、地形・地質・気象等の国土条件から、歴史的にも自然災害による甚大な被害に見舞われてきました。特に地震については、日本列島に多くの活断層やプレート境界が分布しており、世界におけるマグニチュード6以上の大規模な地震の約18%が日本で発生しています。
気象庁では、防災関係機関等による災害発生後の応急・復旧活動の円滑化を図るとともに、当該災害における経験や貴重な教訓を後世に伝承することを目的に、顕著な災害を起こした自然災害について名称を定めることとしています。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)以降、気象庁が名称を定めた地震は11にのぼります(図2)。
今後の発生について切迫性が指摘されている大規模地震には、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下地震などがあります(図3)。中でも、関東から九州の広い範囲で強い揺れと高い津波が発生する可能性がある南海トラフ地震と、首都中枢機能への影響が懸念される首都直下地震は、今後30年以内に発生する確率が70%以上と高い数字で予測されています。地震対策検討ワーキンググループ(中央防災会議「防災対策推進検討会議」に設置)によると、これらの地震における人的被害、建物被害は、いずれも東日本大震災を超える甚大な規模になると想定されています(図4)。
住宅の耐震化は業界の使命
地震被害を軽減するためには、住宅の耐震性確保が重要となりますが、住宅の耐震性能は建築時期によって異なります。建築基準法における耐震基準は、1981年6月の大規模改正以降の基準を「新耐震基準」、それ以前は「旧耐震基準」として区別されています。更に、木造住宅については、阪神淡路大震災を受けて2000年に耐震基準の厳格化が図られ、これが現行の耐震基準となっています。つまり、旧耐震基準、新耐震基準、そして現行の耐震基準の木造住宅が混在している状況にあります。
こうした状況の中、住宅の耐震化率については、2018年時点で約87%にとどまっており、耐震性が不十分とされる住宅が約700万戸現存すると推計されています(図5)。国は、2030年までに耐震性が不足する住宅をおおむね解消するとしています。この目標に向けて、一戸建住宅の耐震改修や建て替え等の促進を通じて今後想定される大地震に備えることは、住宅業界にとって大きな使命と言えます。
世界中で起こる異常気象
近年、地震だけではなく、世界中で異常気象が毎年のように発生し、世界各地で台風やサイクロン、豪雨による洪水被害等が頻発しています(図6)。日本国内においても、「平成30年7月豪雨」「令和元年東日本台風」「令和2年7月豪雨」など、毎年のように豪雨災害による被害が生じています。
氾濫危険水位を超過した河川も増加傾向にあり、比例するように土砂災害の発生件数が増加しています。国土交通省によると、2018年には過去最多の3,459件にのぼり、2019年には1,996件、2020年には1,319件と、近年多くの土砂災害が発生しています。また、2020年に発生した「令和2年7月豪雨」においては、37府県において961件の土砂災害が発生し、過去最大クラスの広域災害となりました。1990年代には年間平均963件であった土砂災害が、2010年代には約1.5倍の1,495件となり、明らかな増加傾向となっています。
「地球沸騰化の時代」が到来
こうした気象災害の激甚化・頻発化の背景には、地球温暖化の進行があると考えられています。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、2021年8月に公表した第6次評価報告書第1作業部会報告書において、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と明記し、地球温暖化の原因が人間活動であると断定しています。更に、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は7月27日、ニューヨークの国連本部で記者会見を開き、「気候変動はここにあり、まさに恐怖であり、そしてそれは始まりにしかすぎません。地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。空気は呼吸できないほどです。高温は耐え難いほどです。」と述べた上で、各国政府などに対してより強力な気候変動対策を講じるよう促しました。
気象災害の激甚化・頻発化は世界的な課題であり、長期的な取り組みが必要となります。このため、地球温暖化の緩和策として、脱炭素化に向けた温室効果ガスの削減などの推進が求められます。
図1、2、6は気象庁資料、図3、4は内閣府資料、図5は国土交通省資料より作成