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林野庁 次期全国森林計画案を取りまとめ 新たな施策の導入を踏まえた見直しを実施
人工林の年間当たりの造林面積を約3倍に
林野庁はこの度、次期全国森林計画案の取りまとめを公表しました。同計画は、森林の整備及び保全の目標、森林施業、林道の開設、森林の土地の保全、保安施設等に関する事項を明らかにするもので、5年ごとに15年を1期として立てられます。今回は、2024年4月1日から2039年3月31日までを期間とした計画案をまとめており、新たな計画期間に応じた計画量の算定のほか、2021年6月以降に生じた情勢の変化や新たな施策の導入を踏まえた見直しが行われています。
次期計画案における森林の整備及び保全においては、森林蓄積を現状の222㎥/ha(2022年3月31日時点)から計画期末までの15年間で238㎥/haに増加させる目標が掲げられています。また、計画量の算定のうち、伐採立木材積について、年間の平均材積を4,897万㎥(2019~2021年実績)から5,927万㎥にする計画となっています。人工造林面積については、年間当たり3万4千ha(同実績)から5万8千ha増の9万2千haに拡大するとしています(図)。
森林の土地における盛土等の制度を厳正に
同計画案では、今年5月に施行された盛土規制法を踏まえ、盛土等の安全対策の実施に関する記述が新たに追加されました。具体的には、都道府県知事等が指定する規制区域の森林の土地においては、集水性の高い場所における盛土は極力避けるとともに、盛土等の工事を行う際の技術的基準を遵守させるなど、制度を厳正に運用する案が示されました。
また、太陽光発電設備を設置する場合には、小規模な林地開発でも土砂流出の発生割合が高いことから、許可が必要とされる面積規模の引き下げや適切な防災設備の設置といった、林地開発許可の基準見通しを踏まえた内容が追加されています。そのほか、今年4月に改正されたクリーンウッド法の内容に基づき、木材関連事業者による合法性確認等の実施や、合法性確認木材等の取扱数量の増加などの取り組みを着実に進めるとしています。
花粉症発生源対策を加速化
森林の整備等については、今年5月の「花粉症対策の全体像(花粉症に関する関係閣僚会議決定)」を踏まえ、発生源対策に関する記述が拡充されています。具体的には、花粉の発生源となるスギ等の人工林の伐採及び植え替え等を促進した上で、花粉の少ない苗木による造林に努めることなどが盛り込まれました。
また、林業労働力の確保についても内容の充実が図られ、地域の実態に応じた林業への新規参入・起業など林業従事者の裾野の拡大や、女性等の活躍・定着、外国人材の適正な受け入れなどが追記されています。そのほか、新たな技術の進展を踏まえ、航空レーザー計測等による高度な森林情報の活用など、ICTの活用に関する内容が加えられました。
同計画案については、9月の林政審議会における答申を経て、10月にも閣議決定される予定です。