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山の日特集 ナイスグループ 循環型サプライチェーン「徳島モデル」 森林資源の循環利用の推進で山を豊かに

 ナイスグループでは、伐採から再造林まで、森林資源の循環利用に向けたサプライチェーンの構築を進めています。今回は、徳島県における取り組みとして、素材生産事業等を行う「ナイス原木流通㈱」と、製材事業を手掛ける「ウッドファースト㈱」における取り組み内容を中心にご紹介します。

森林資源を次世代へつなぐ

 ナイスグループでは、森林の保全育成、伐採等の素材生産、製材、流通、加工、建築物等への利用、植林・育林に一貫して携わることで、国産材利用における循環型のサプライチェーンを構築しています(図1)。特に、徳島県においては、社有林から素材を生産し、伐採跡地に再造林を行うなど、川上での取り組みを開始しています。更に、製材工場における製材やその後の流通、利用促進に至るまでを網羅し、森林資源の循環利用に向けた取り組みを推進しています。

ナイスグループにおける循環型サプライチェーン

 森林を構成する樹木は、光合成によって大気中のCO2を吸収し、伐り出されて建築物や家具となった後も炭素を固定し続けます。温室効果ガス吸収源としての機能を確保し、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、森林資源を適切に管理し、次世代につないでいくために、「伐って、使って、植えて、育てる」という循環を更に促進していくことが求められます。

「ナイス原木流通㈱」-素材生産・植林・育林-

社有林から素材を生産

 当社では、木材の安定調達と森林資源の循環利用を目指すべく、一昨年に素材流通部を新設し、製材工場や合板工場などの各事業者様へ原木供給等の取り組みを開始しています。また、昨年10月には、地元の木材事業者様から山林事業を承継する形でナイス原木流通㈱を設立しました。同社では、社有林をはじめ、その他の山林における伐採、選木などの素材生産を手掛けるほか、伐採跡地への植林、育林を行うなど、川上における循環型の取り組みを進めています。

 伐採作業については、1班4名体制で行っており、素材生産量は月間300~400㎥程度となっています。まず始めに作業計画を立て、伐採及び搬出作業をより効率的かつ安全に行うために作業道の整備がなされた上で、2名体制で立木を伐倒していきます(図2-①.②)。その後、スイングヤーダによって集材された原木を、枝払い、測尺、玉切りを連続して行うプロセッサによって造材します(図2-③)。玉切りされた原木は、荷台に積んで運搬するフォワーダで伐採地に設けられた仮の土場に集約された後、同社敷地内の土場へまとめて搬出されます(図2-④)。

伐採から選木までの流れ

マーケットインで需要に対応

 広さ約6,000坪の土場へ搬出された原木は、曲がりなどの形状をはじめとする品質や用途によって、製材用の「A材」、合板や梱包材用の「B材」、チップ化してバイオマス燃料に用いられる「C材」に分類されます。曲がり具合、節の大小や数、色味などから原木の分類を判断し、仕分けを行います(図2-⑤)。分類された原木は、更に径級ごとにまとめられるほか、特定の販売先を想定し、需要に応じた径級の組み合わせで仕分けてはい積みするケースもあります(図2-⑥)。

 同社では、徳島県内の中小製材工場を中心に、約30社と個別に契約を結び、原木を販売しています。単に伐った原木をそのまま販売するのではなく、マーケットインの発想で顧客のニーズに沿った商品を提供しています。例えば、一般的に需要の多い長さ3m、4mの原木を基本としつつ、6mや8mの主に梁用に使われる長尺材や、化粧用に使われる太い大径材なども在庫にラインアップし、需要に応じて出荷できるようにしています。

 同社は、山林における循環型の事業モデルとして、原木を生産して販売するだけではなく、その後の再造林によって山林を次世代につなげていくことを目指しています。加えて、ナイス㈱の流通機能によって木材を安定した価格及びボリュームで流通させることにより、山林に適正な利益を還元し、経営が成り立つようにすることを目的としています。そこで働く人も含めて山を豊かにしていくことを見据えつつ、今後、社有林の新規取得や伐採班の増員などを進め、ナイスグループ全体としてこうした取り組みを全国に広げていく予定です。

「ウッドファースト㈱」-製材-

最新鋭の設備で年間取扱量36,000㎥

 ナイス原木流通㈱から出荷された原木は、同じくナイスグループのウッドファースト㈱徳島製材工場へも納品されます。同工場は、JAS機械等級区分構造用製材規格の取り扱い認定工場で、2014年5月より稼働しています。大径材にも対応するツイン帯鋸無人製材機などの最新鋭の製材加工機械によって、多様化する取引先様のニーズに即した高品質な製品を提供しています。柱、梁、桁等の構造材や羽柄材など、建築用部材を中心に生産しており、原木の年間取扱量は36,000㎥に上ります。取り扱う樹種の比率については、スギが約8割、ヒノキが約2割となっています。

ウッドファースト株徳島工場全景

工程①皮むき

 製材の工程に入る前に、専用の機械によって皮むきを行います。これにより、樹皮で隠れた傷や石、釘などの異物を取り除き、製材の際に帯鋸を痛めることを防ぐほか、成長段階における捻じれや節などを見やすくすることができます。剥がされた樹皮は、同工場に設置された乾燥機のボイラーにおいて、バイオマス燃料として活用されます。

工程1皮むき画像

工程②製材

 皮剥きを終えた丸太は、製材棟で角材や板材へ製材されます。同工場には、無人製材設備「クリアシステム」が導入されており、最新の計測技術と多彩な木取りシステムで原木の形状を瞬時に計測し、高速・高精度の無人製材を実現しています。クリアシステムによって角材及び盤木に、盤木はツインオートテーブルで板材に製材されます。そのほかの外周部については、横型帯鋸盤とツインリッパーによって薄板材に仕上げられ、寸法ごとに仕分けられます。不要な周辺材については、細かく粉砕しチップとして出荷されます。なお、これらの設備は一つのラインでつながっており、工程の省力化や生産性の向上が図られています。

工程2製材画像

工程③乾燥

 製材された製品は水分を多く含んでいるため、人工乾燥機によって乾燥させます。乾燥の際、ボイラーから送られてくる水蒸気が通りやすいように、間隔を空けて桟を置いた上に木材を並べる「桟積み」が必要となります。人の手によって行われるケースも多くありますが、同工場では自動で桟積みされる設備を導入しているため、効率的に乾燥工程に移ることが可能となります。人工乾燥機については、主に構造材を乾燥させる高温乾燥機が5台、間柱等を乾燥させる中温乾燥機が3台備えられています。なお、乾燥に必要な熱源として、丸太の樹皮や製材から出るおが粉などをバイオマス燃料として活用しています。

工程3乾燥画像

工程④加工・保管

 乾燥後は、加工棟において正確な製品寸法に加工するほか、鋸刃によって裁断されたざらつきの残る断面を、モルダー等の機械によって滑らかに仕上げていきます。また、加工棟には構造用製材の強度を計測する打撃式グレーディングマシンが備えられています。この設備は、「針葉樹の構造用製材のJAS規格に規程される機械等級区分製材の測定器」として認定されており、徳島県内では唯一同工場が保有しています。

 これらの工程を経て生産された製品は、ナイス㈱の岡山市場、滋賀市場、小牧市場、長野市場、新潟市場などの各拠点を通じて、建築用部材として全国各地に流通されます。

工程4加工保管画像

ナイスグループ-木材の需要創造及び利用促進-

国産材のシェアと価値の向上を

 ナイスグループでは、川下での取り組みとして、「国産材のシェアの向上」と「国産材の価値の向上」を目指しています。

 「国産材のシェアの向上」に向けた取り組みの一つが、構造材の利用促進です。当社では、「ウッドビルディングネットワーク」という概念のもと、これまで培ってきたグループ内の機能や取引先様とのネットワークを生かし、非住宅の木造化を推進しています。加えて、住宅1棟分の木材を国産材でパッケージ化した「国産材パッケージ」の提案を通じて、木造住宅における国産材使用比率の向上を目指しています。

 「国産材の価値の向上」に向けた取り組みとしては、オリジナル木材製品の開発に取り組んでいます。針葉樹の表層部を特に圧密して高密度化した「Gywood®」は、スギの長所を生かしつつ傷に強い硬さを併せ持つハイブリッドな無垢材です。また、宮崎県産飫肥杉を使用し、豊富な抽出成分による耐久性と、独自の乾燥技術による高い形状安定性を誇る「ObiRED®」は、エクステリア材として用途が広がっています。非建築分野も含め、これらの製品によるあらゆる木質化提案を行っています。

 こうした取り組みを通じて、川下における木材の需要創造及び利用を推進し、森林資源の循環利用に貢献してまいります。

awaもくよんプロジェクト画像