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ナイスグループ 木材の用途拡大で注目される「木質化」
脱炭素社会の実現に向けて、国を挙げて木材利用の更なる促進が図られている中、木材の用途拡大に向けて建築物の内外装木質化への関心が高まっています。ナイスグループでは、従来から注力している建築物の木造化に加えて、マンションの共用部及び専有部、オフィス等における内装の木質化に取り組んでいます。今回は、当社グループが手掛けた木質化事例についてご紹介します。
高経年マンションの付加価値向上
国土交通省によると、築40年以上の高経年マンションは、115.6万戸(2021年末時点)となっており、20年後には425.4万戸と更に増加する見込みです(図1)。また、マンション管理事業を手掛けるナイスコミュニティー㈱では、今年3月時点で68,933戸を管理していますが、このうち約15%が築40年以上の物件となっています。今後、高経年マンションの更なる増加が見込まれる中、その管理や建て替え等を円滑に実施していくことが重要となっています。区分所有法により、マンション等の管理や建て替え等の意思決定は、区分所有者及び議決権による多数決で決議することとされている一方、費用等の問題による反対に加え、所有者の高齢化・相続等を背景として、所有者が住んでいない、または不明なケースが増えており、決議に必要な賛成を得るのが困難な状況にあります。これらに対応するべく、国は区分所有法制の見直しに向けた検討を進めており、2024年通常国会に改正案を提出する方針です。
近年、既存マンションの流通量は増加傾向にあり、2021年度の首都圏における新築マンションの発売戸数は約3.3万戸、既存マンションの成約件数は約3.8万戸と、6年連続で既存マンションの成約件数が上回っています(図2)。これらの状況から、既存マンションの価値を評価する基準の一つとして、物件の管理状況等に関する情報の必要性が高まっており、既存マンションを適正に維持・管理した上で、改修・改良によって資産価値を高める取り組みが求められます。
ナイスグループでは、内外装の改修工事や専有部のセキュリティー強化のほか、木質化リノベーションによって更なる付加価値の向上を提案しています。
拡大が見込まれる木質化市場
林野庁では、「建物の内装木質化のすすめ」として内装を木質化した建物事例やその効果などについて発信するなど、木質化による木材利用の促進を図っています。同庁によると、内装等が木質化された公共建築物は、2019年度の132件から2021年度には177件と拡大傾向にあります。民間においても、建築物の木質化市場は、脱炭素社会の実現に向けた動きの拡大、ESG投資への関心の高まりなどから、今後拡大することが予測されます。既存マンションの流通量の増加に伴う木質化の進展のほか、オフィスにおいては、ウェルネス効果への期待やテナント満足度の向上、環境配慮に取り組むことによるCSRアピール要素の増大などの理由から、木質化の需要が高まり、木材利用が進むことが期待されます。