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政府 花粉症に関する関係閣僚会議 取りまとめを公表 10年後に花粉発生源のスギ人工林2割減少
花粉症対策の3本柱を速やかに実行
政府は5月30日、花粉症に関する関係閣僚会議を開催し、花粉症対策の全体像を取りまとめました。本関係閣僚会議は、有病率が2019年時点で約4割超に上るなど社会問題となっている花粉症問題に対処することを目的に、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって取り組むべく、今年4月に設置されたものです。
本取りまとめでは、「発生源対策」「飛散対策」「発症・曝露対策」を3本柱として、今後10年を視野に入れた施策を含め、花粉症問題の解決のための道筋を示しています。
スギ人工林の伐採面積を約7万ヘクタールに拡大
国内のスギ人工林は444万ヘクタールで、このうち花粉発生源とされる20年生超のスギ人工林は431万ヘクタールと見込まれています。本取りまとめでは、「発生源対策」の取り組みを集中的に進め、2033年度には花粉発生源となるスギ人工林を約2割減少させることを目指すとしています(図)。そして、約30年後には、継続した取り組みにより花粉発生量の半減を目指す方針です。
その取り組みの一つとして、スギ人工林の伐採・植え替え等の加速化を挙げています。スギ人工林の伐採を2020年度の年間約5万ヘクタールから、2033年度には約7万ヘクタールまで増加させるとともに、花粉の少ない苗木や他樹種による植え替え等を進め、花粉発生源となるスギ人工林の減少スピードを、2020年度の約3.2万ヘクタールから2033年度には約2倍となる約6.2万ヘクタールにすることが目指されます。
スギ材製品需要を10年後までに470万㎥増加
また、スギ材需要の拡大も図られます。具体的には、スギ製材、合板、集成材等のJAS材の増産に向けた加工流通施設整備の支援、国産材の利用割合が低い横架材等について、輸入材の代替製品を製造する技術の普及等による安定供給体制の構築や、JAS規格・建築基準の合理化などを行うことが示されました。これにより、住宅分野におけるスギ材製品への転換の促進や、木材を活用した大型建築物の新築着工面積の倍増等を図り、スギ材製品の需要を10年後までに現状から470万㎥増となる1,710万㎥に拡大することを目指すと述べています。
「林業活性化・木材利用推進パッケージ」策定へ
このほか、国や自治体等における花粉の少ない苗木の生産体制を短期的かつ集中的に整備し、10年後にはスギ苗木全体の生産量のうち、花粉の少ない苗木の割合を9割以上に引き上げることを目標に掲げています。また、スギ人工林の伐採・植え替え等の加速化に対応するべく、高性能林業機械の導入等の支援による生産性の向上や、外国人材の受け入れ拡大、新規就業者の確保・育成等により、労働力の確保に努める方針です。
本取りまとめでは、これら「発生源対策」の実現に向け、追加的な対策も含めた「林業活性化・木材利用推進パッケージ」(仮称)を年内に策定することが示されました。