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ニュース&レポート

ナイスグループ 木材利用促進協定に基づく取り組み事例 北山杉の需要創造へ新たな活用方法を提案

 建築物における木材の利用促進に向けて、「建築物木材利用促進協定制度」が設けられ、これまでに累計で70件の協定が締結されています。このうち、ナイス㈱及び菊池建設㈱では、京都市をはじめとする5者と昨年8月に「建築物等における北山杉の利用促進協定」を締結しました。今回は、同協定や北山杉の概要のほか、協定内容に基づく具体的な取り組みについてご紹介します。

京都市らと北山杉の利用促進協定を締結

 ナイス㈱及びグループ会社の菊池建設㈱は、昨年8月に京都市をはじめとする5者と、北山杉の利用促進構想の達成に向けて相互に情報や意見の交換に努め、緊密な相互連携と協働による活動を推進することを目的に、「建築物等における北山杉の利用促進協定」を締結しました。

 北山杉の利用促進構想とは、建築事業等において北山杉を積極的に活用することで、北山林業に関する技術や文化の継承並びに地域振興の推進、2050年カーボンニュートラルの実現等に貢献するとともに、合法に伐採された北山杉の利用により、北山林業における持続可能な森林経営の推進、森林の公益的機能の発揮、SDGsの達成等に貢献していくものです。

約600年の歴史を誇る北山杉の利活用

 北山杉の起源は、約600年前の室町時代に現在の京都市北区中川地区周辺で植林が開始されたという説があり、千利休による「茶の湯文化」を支える茶室や数寄屋の建築用材として広く用いられました。「京都府の木」である北山杉は、立木が天に向かって真っすぐ伸びる姿から、「伸びゆく京都」のシンボルとされています。

 製品である「北山丸太」は京都府伝統工芸品に指定されており、その品質の良さは高く評価され、主に床の間の床柱として活用されてきました。近年のライフスタイルの変化に伴い、従来の茶室や和室での利用が減少する一方で、児童施設や宿泊施設、店舗といった現代的な建築物においても活用されつつあり、更なる利用促進に向けて新たな需要創造の取り組みが進められています。

協定締結&社有林

活用事例① 本社ビル木質化リノベーション

 ナイス本社ビル1階ロビーにおけるらせん階段の手摺の一部と2階接客スペースの手摺の一部に北山杉の磨き丸太を被せ、木質化を実施しました(図1)。既存の真鍮(しんちゅう)手摺の上から、下端をU字型に欠き取った磨き丸太を被せた後、下の隙間を同じ磨き丸太材を使って年輪までそろえた形で埋木を行いました。また、2階の接客スペースには、全長9メートルに及ぶ北山杉の磨き丸太を展示しています(図2)。枝締めと本仕込みを行うことで表面に艶と粘りが出て、より優美な色調となっているほか、根元に近い「元口」と、先端に近い「末口」の太さの差が少ない点も特長の一つです。

 1階ラウンジには、北山杉を活用した和室のモデル展示スペースを設置しました(図3)。菊池建設㈱の設計・施工により、数寄屋造りのオーソドックスな和室を現代風にアレンジした空間に仕上げており、床柱には北山杉天然絞り丸太を、畳座の上がり框には北山杉の磨き丸太を、テーブルの脚には北山杉の面皮柱をそれぞれ使用しています。

 また、同社が設計・施工を手がけた住宅においても、北山杉が活用されています。直近の事例では、玄関と居室の開口部を一つの土庇でまかなうために、長さ7メートルの北山丸太を軒桁に使用したほか、その桁を支える柱にも北山杉丸太が用いられています(図4)。

活用事例①写真

活用事例② 北山杉を用いた商品開発

 北山杉の新たな活用方法として、当社オリジナル商品の「Gywood」に北山杉を用い、ヘリンボーン柄に仕上げた内装材のご提案を開始しました(図5)。無垢材の木目の美しさを生かしながら、ヘリンボーン柄に加工することで、床材や壁材、インテリア等にもアクセントを加え、モダンで上質な空間を演出します。

 また、㈱長谷川萬治商店様が開発した木ダボ接合積層材「DLT」にも、北山杉を活用し、ご提案しています(図6)。北山丸太特有の美しさを生かした表面デザインが可能となり、新たな木質素材として期待されます。

活用事例②写真

商品に関するお問い合わせ
商品開発事業部 Tel:045-503-3583

活用事例③ 様々な木肌の表情を魅せるオフィスエントランス

 一般社団法人サステナブル経営推進機構が1月に拡張移転したオフィスにおいて、北山杉を用いたエントランスウォールの監修等を行いました(図7)。京都北山地方の森をモチーフにしたデザインとし、そこから産出される北山丸太をそれぞれ異なる大きさで挽き割った板材を用い、北山地方特有の育林方法である「台杉仕立て」を表現しています。また、磨き丸太や天然出絞丸太、小丸太、面皮柱などの製品を使用しており、それぞれの木肌の様々な表情をお楽しみいただけます。このほか、同オフィスでは随所に北山杉を用いた製品が採用されています。

活用事例③写真

壁谷氏コメント

活用事例④ 「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」

洗練された現代建築に北山杉が調和

 ナイスグループが建築に携わった京都市南区の診療所「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」が、このたび竣工しました。

 同医院では「美しい医療」をコンセプトに掲げ、病気を治すだけではなく、患者の方々により豊かな人生を実感していただくことが目指されています。そのため、来院された方々にリラックスしていただける空間にしたいとの事業主様の意向により、内装には木材がふんだんに使用されています。

 北山杉については、エントランスや治療方針について話し合う相談室の壁に、板材を重ねて貼り付ける「鎧張り」をモチーフにデザインされたアクセントウォールが設置され、様々な木目や質感を感じることができます(図8)。また、階段の手すりには小径の北山タルキが、笠木には北山天然出絞丸太がそれぞれ使用されており、北山杉特有の美しく滑らかな木肌が生かされています(図9)。同医院は、特殊技術を要する手術において特許を取得しており、海外からも多くの方が治療に訪れるため、約600年の歴史がある北山杉を世界に発信する機会にもなることから、採用が決定されました。洗練されたデザインの内装に伝統ある北山杉の質感が調和し、温かみのある空間が演出されています。

一気通貫で木造・木質化に対応

 同医院の周辺は、昔ながらの住宅が立ち並んでいるエリアのため、住民の方々にも配慮し、3階建てながら高さ10mを超えないよう設計上の工夫がなされています。外壁や屋根形状などの外観は、京都の街並みを保全するための景観条例に基づいたデザインで、落ち着きと高級感のある佇まいとなり、完全予約制で患者を受け入れる同医院のコンセプトに合致した建物となっています(図10)。

 また、同物件は、延べ床面積565.4㎡の木造3階建て準耐火建築物で、当初は鉄骨造で計画されていましたが、建築資材価格の高騰などの影響から木造で再検討がなされ、設計を担当されたSHINOHE ARCHITECTS様より、当社グループの木造テクニカルセンターにご相談いただきました。当社グループとして、木造での構造提案から木材の調達、プレカット加工、元請けとしての施工に至るまで、一気通貫で建築に携わった物件となります。また、3階のドクター室に設置されたデスクには、当社オリジナルの木材商品「Gywood」が使用されています(図11)。

活用事例④写真

 3月16日には、当社主催により完成見学会が催され、設計事務所や建設会社、行政、報道機関などから多くの方々が参加され、細部までこだわって設計された建物を興味深く見学する様子が見受けられました。

医療法人顕夢会 京都耳鼻咽喉音聲手術医院

SHINOHE ARCHITECTS

木造木質化に関するお問い合わせ

活用事例④建築概要