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国土交通省・経済産業省・環境省・林野庁 2023年度予算・2022年度第2次補正予算 カーボンニュートラル実現へ手厚い支援

 2022年12月23日に閣議決定された2023年度予算案は、一般会計の総額が114兆3,812億円と11年連続で過去最高を更新しました。今回は、今通常国会で審議中の政府予算案と、昨年12月に成立した2022年度第2次補正予算について、住宅・建築物及び木材関連の内容を中心にまとめました。

国土交通省

住宅施策の軸は「省エネ対策」と「木材利用の促進」

 国土交通省は2023年度当初予算案について、国費総額の一般会計として5兆8,714億円(前年度比100%)を計上しました。住宅局関係予算については、国費総額で1,766億400万円(同99%)が計上され、住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現を中心に、既存ストックの有効活用や住宅・建築分野のDX・生産性向上の推進などを重点施策に掲げています。このうち、「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業」には279億1,800万円が計上され、「省エネ対策」と「木材利用の促進」を軸に様々な取り組みが進められる方針です(図1)。

住宅建築物におけるカーボンニュートラルの実現

 「省エネ対策」に向けては、新築分野では、中小工務店によるZEH等の整備への支援、フラット35における省エネ基準適合の融資要件化など、リフォーム分野では、既存住宅の省エネリフォームへの支援の強化などが図られます。なお、2022年度第2次補正予算として1,500億円が計上された「こどもエコすまい支援事業」(3面に関連記事掲載)では、子育て世帯・若者夫婦世帯によるZEH基準の新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して補助がなされ、省エネ投資の下支えが図られます(図2)。

こどもエコすまい支援事業概要

 「木材利用の促進」については、地域材の活用促進に向けた支援強化に加え、木造の中高層建築物のうち優良なプロジェクトに対する支援や、建築物の木造化に関する比較検討への支援がなされます。

住宅・建築分野のDX化の支援を拡充

 社会全体のデジタル化が加速する中、住宅・建築分野においてもIT活用等の新技術実装等を進め、生産性の向上が目指されます。具体的には、「建築BIM活用総合推進事業」が新たに創設され、建築分野の生産性向上を図るため、建築BIMの社会実装を加速化するための基盤を整備する取り組みに対して支援されます。本事業では、社会実装が始まっているものの、一部の限定的な活用にとどまっている現状を踏まえ、建築BIMによる建築確認の審査環境の整備や、初期投資がネックとなり導入が進んでいない中小事業者等での活用促進が図られます。また、DX推進により中小工務店の労働環境の向上も図られており、労務管理、施工管理等におけるデジタル化について重点的に支援がなされます。

>国土交通省HP

経済産業省・環境省

家庭部門の省エネ対策を推進

 経済産業省は、2023年度当初予算として1兆6,896億円(前年度比138%)、2022年度第2次補正予算として11兆1,274億円を計上しました。重点事項として、エネルギー価格高騰への対応、エネルギー安全保障・資源の安定供給の確保を掲げ、先進的な省エネ設備の導入支援や、省エネ技術の開発・実用化を通じて、家庭部門の省エネ対策を強力に推進するとしています。

 このうち、住宅・建築物関連では、「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」に68億円が充てられました。本事業では、需給一体型を目指したZEHなど新たなモデルの実証、先進的な技術等の組み合わせによる民間の大規模建築物におけるZEB化の実証のほか、工期短縮可能な高性能断熱材や、蓄熱・調湿材等の次世代省エネ建材の効果の実証に対して支援がなされます。

再エネ・省エネ・蓄エネ設備の導入を推進

 環境省は、2023年度当初予算における一般会計として1,490億円(前年度比100%)、エネルギー対策特別会計として1,913億円(同115%)を計上したほか、2022年度補正予算として、それぞれ1,002億円と381億円を計上しました。気候変動問題を最重要社会課題と位置付けた上で、その対応のための重点施策の一つとして、GX(グリーントランスフォーメーション)支援による地域脱炭素移行の加速化や住宅の省エネ化など、脱炭素につながる「新しい豊かな暮らし」の提案・発信を通じて、再エネ・省エネ・蓄エネ設備の導入を推進するとしています。

 「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」には、65億5,000万円(同100%)が計上され、一戸建住宅のZEH化、高断熱化による省エネ・省CO2化が推進されます。本事業では、ZEHの交付要件を満たす住宅に対して一戸当たり55万円が補助されるほか、ZEH以上の省エネ性能等により再エネの自家消費率拡大を目指した一戸建住宅(ZEH+)に対しては、一戸当たり100万円が補助されます。

>経済産業省HP

>環境省HP

林野庁

川上から川下まで総合的に支援

 林野庁では、2023年度当初予算として3,057億円(前年度比102.7%)を計上、2022年度補正予算の1,162億円と合わせ、4,218億円が確保されており、重点事項として、カーボンニュートラル実現に向けた森林・林業・木材産業によるグリーン成長を掲げています。

 「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」には、当初予算として98億円が計上されたほか、2022年度補正予算で499億円が計上された「国内森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策」の一部が補填されます。これにより、カーボンニュートラルを見据えた森林・林業・木材産業によるグリーン成長を実現するため、川上から川下までの取り組みについて総合的な支援がなされます。

 同総合対策内では、「林業・木材産業循環成長対策」が新設され、72億円が計上されました。国産材供給体制の強化と森林資源の循環利用の確立に向けて、木材加工流通施設の整備、路網の整備・機能強化、高性能林業機械の導入、搬出間伐の実施などとともに、再造林の低コスト化やエリートツリー等の安定供給などの推進に向けた取り組みに支援がなされます。

顔の見える安定供給体制を構築

 「建築用木材供給・利用強化対策」には12億円が計上され、森林経営の持続性を担保しつつ、都市の木造化等促進への支援を行うとともに、製材やCLT・LVLの技術開発・普及等を通じた建築物への利用環境整備への支援が実施されます。このうち、「森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業」では、都市部における建築用木材の利用実証のほか、強度や耐火性に優れた建築用木材の技術開発に対して支援がなされます。また、素材生産事業者等の川上、製材工場等の川中、ハウスメーカーや工務店といった川下が連携し、顔の見える木材安定供給体制の構築が図られます(図3)。

森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業

 「木材需要の創出・輸出力強化対策」には4億円が計上され、非住宅建築物等の木造化・木質化、木質バイオマスのエネルギー利用、木材製品の輸出の促進、特用林産物の競争力強化等による木材需要の拡大について支援されるほか、合法伐採木材等の流通及び利用の促進を図るための支援や情報提供等が行われます。

デジタル技術で林業の生産性・収益性を向上

 林業の生産性や収益性の向上に向けた取り組みにも手厚い支援がなされます。その一つとして「林業デジタル・イノベーション総合対策」が新設され、6億円が計上されました。これにより、林業機械の自動化・遠隔操作化や木質系新素材等の開発・実証、森林資源情報のデジタル化の推進、ICT等を活用した生産管理の効率化のほか、地域一体となってデジタル技術をフル活用し、収益性の高い林業を実践する「デジタル林業戦略拠点」の構築が図られます。

 また、「『新しい林業』に向けた林業経営育成対策」には3億円が計上されました。伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業」の実現に向けて、「伐って、使って、植えて、育てる」が実現できる経営モデルの構築等が推進されます。

 そのほか、林業・木材産業における「人への投資」総合対策として、「森林・林業担い手育成総合対策」に47億円が計上され、新規就業者の確保や認定森林施業プランナーの育成などが推進されます。

>林野庁HP