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第一部 新春特別鼎談 2023年 林業・木材産業の展望 ―国産材サプライチェーンの再構築に向けて―
長引くコロナ禍やウッドショックに続き、2022年も林業・木材産業にとって変化の大きい一年となりました。2023年の年頭に当たり、国産材の需要拡大、安定供給に向けたサプライチェーンの再構築をテーマに、2022年7月に林野庁長官に就任された織田 央氏、2022年5月に(一社)全国木材組合連合会会長に就任された菅野 康則氏、ナイス㈱杉田 理之社長による新春特別鼎談をお送りします。
世界情勢に左右された2022年を振り返る
杉田 長引くコロナ禍における経済社会活動の影響やウッドショックによる木材価格の高騰に続き、2022年はロシアによるウクライナ侵攻、円安、資源価格の高騰など、環境変化の大きい一年となりました。
織田 コロナ禍において国内外の需要が減退する中、ロシア・ウクライナ情勢によって、燃料や資材の価格が高騰し、為替の変動などの影響も重なって、非常に変化の大きい一年となりました。世界経済は微妙なバランスで成り立っており、小さなバランスの狂いでも、大きな影響を及ぼすということ、そして我が国の林業・木材産業も例外でないことを改めて実感しました。その都度様々な想定をしながら対策を講じているものの、経済を見通すことの難しさを痛感しています。
一方で、脱炭素化に向けた世界的な流れは更に加速しており、特に二酸化炭素の吸収、炭素の貯蔵に資する林業・木材産業に対して、これまであまり関わりがなかった方々からも関心を持っていただけるようになった一年でした。
菅野 世界における木材の需給バランスが崩れ、価格が暴騰したのがウッドショックですが、昨年はその需給バランスが一定の水準で保たれていたという認識を持っています。ただし、年後半にかけて、旺盛であった中国の木材需要もゼロコロナ政策などにより減退し、さらに、米国では政策金利の引き上げなどにより住宅着工戸数が減少に転じるなど、世界全体の木材需要が急激に減退しました。国内においても、給与住宅や賃貸住宅が予想以上に堅調に推移した一方で、持ち家の着工戸数が減少傾向となり、中盤以降は需給バランスにおいて需要の減退が目立つ形になってきました。その影響もあり、前半は国産材の価格も上がり、販売も順調に推移していましたが、後半にかけて価格が下がってくるなど、変化の大きな一年であったと言えます。
杉田 ウッドショックにより、昨年は輸入材を国産材で代替する動きが見られました。国産材の利用促進という観点では、どのような影響があったとお考えでしょうか。
織田 いわゆるウッドショックによって、国際情勢やエネルギー価格、為替の変動といった様々な要因により影響を受けやすいという輸入材のリスクが一気に顕在化しました。そのような中で、国産材については、山林所有者や素材生産業者などの川上、木材加工業者などの川中、住宅メーカーや工務店などの川下というサプライチェーンが分断されていたことで、混乱が起きたと感じています。一部のプレカット工場や住宅メーカーからは、国産材への代替についてどこに相談すればよいか分からないといった声も聞かれ、まさに「顔の見える」サプライチェーンが構築できていなかったということだと思います。
これを機に、国産材のサプライチェーンを再構築し、更なる安定供給と利用拡大に努めていかなければなりません。そういった意味では、ウッドショックは一つの大きなきっかけになったと言えます。
国産材の需要拡大、安定供給体制の確立
杉田 今後の国産材の需要拡大と安定供給に向けた取り組みや方向性についてお聞かせください。
織田 輸入材から国産材への転換を進め、国産材のシェアを拡大することによって、海外情勢の影響を受けにくい需給構造へとシフトさせていかなければなりません。そのためには、他資材や輸入材に対抗できるよう、品質や性能の確かな国産材を供給していく必要があり、JAS構造材等の普及・利用実証の支援や、JAS認証工場に関する情報の見える化を推進するほか、JAS規格について、利用実態に即して区分や基準の見直しを実施するなどの合理化に取り組んでいきます。また、住宅メーカー等からの安定的な国産材需要を獲得した上で、製材や集成材といった木材製品の安定供給に向けた加工流通施設の整備を進めていくために、先述の「顔の見える」サプライチェーンを構築していくことが重要となります。その一環として、林野庁では、川上から川下までの多岐にわたる関係者による「需給情報連絡協議会」を継続的に開催しており、需給動向の把握と関係者間における正確な情報共有を図っています。こういった中で、住宅メーカーと製材工場が国産材利用に向けた組織を立ち上げるなど、具体的な動きも見られ始めています。
杉田 当社においても、川上から川下まで「顔の見える関係」を構築し、構造材から羽柄材、内外装材に至るまで、家一棟分の国産材をセレクトしてパッケージ化した「国産材プレミアムパッケージ」の提供を開始しています。これまで培ってきた製材事業者様とのネットワークを生かし、多種多様な木材を、木材市場や物流センターといった木材ストックヤードに常時ストックした上で、邸別に必要な部材をアッセンブルして安定的に供給する体制を整えています。また、木造軸組住宅の中でも特に国産材比率の低い横架材について、構造計算によって強度を検証した上で国産材への代替を提案するなど、国産材の利用促進に向けて取り組んでいます。
織田 ウッドショックにおいて最後まで木材調達に苦労されていたのは地場の中小工務店であったため、そうした方々にとって、ナイスさんの取り組みは効果的であると考えており、中小工務店への安定的な国産材供給を進めていく上で、重要な取り組みとして期待しているところです。
杉田 全木連として、国産材利用拡大に向けた機運についてどう見られているかお聞かせいただけますか。
菅野 木材業界全体として、国産材の利用促進に向けた流れを皆さん意識しておられるので、追い風が吹いていることは間違いありません。一部の先進的な企業においては、国産材の利用促進のための新たな取り組みが進められており、国産材に対する見方が変わりつつあります。全木連としても、木材・建築業界全体に対して国産材の利用促進について発信・啓発しやすい環境になってきていると感じています。
一方で、課題も残されています。ウッドショックにおいて国産材への代替の動きが進んだものの、代替できなかった部分もあると見ており、その結果として価格が一気に高騰してしまいました。国産材についてもある程度の数量的な余裕を持たないと、今回のウッドショックのような急激な価格変動につながってしまうため、やはり一定のストックを保有することは必要であると考えています。ただし、原木については傷みやすさから長期のストックは難しく、そうした面も含め、国産材のストックのあり方について考えていく必要があります。全木連では、サプライチェーンにおける在庫機能がより一層必要になるとの考えから、林野庁に対して要望書を提出しました。需給バランスの一時的な崩れで生じる流通段階での価格変動に対抗する措置として、在庫に必要な倉庫などの施設や、在庫が持てるような環境整備への補助を要望しています。
また、ウッドショックによって国産材への代替が進み、国産材の良さを工務店やビルダー、プレカット工場といった需要家の方々に認めてもらった点は良かったと感じていますが、課題はやはりコストです。使う側の立場からすれば、需給バランスによって価格が大きく変動するスキームでは継続的な利用は難しく、一定の期間内において安定して価格が推移する仕組みが求められます。国産材の需要拡大や安定供給に向けて、これまで見えていなかった課題が提示されていると感じています。
杉田 ウッドショックによって、在庫を持たず、効率的に高速で回転させることが重視されてきた風潮が見直され、ストックの重要性が再認識されたことは、当社のような流通事業者にとって非常に大きいことだと感じています。サプライチェーン全体の中で、ストック機能としての役割をしっかりと果たせるよう今後も取り組んでいきます。
都市における中高層建築物への木材利用
杉田 「都市(まち)の木造化推進法」(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)の施行から一年が経過し、建築物の木造化の動きが一層加速することが期待されています。最近では、高層建築物の木造化の進展も目立つように感じます。都市における木材の利用促進について、お考えをお聞かせいただけますか。
織田 「都市(まち)の木造化推進法」の施行によって、木材利用促進の対象が公共建築物から民間建築物も含む建築物一般へと拡大されたことに加え、木材利用によるカーボンニュートラルへの貢献という観点もあり、この一年でハイブリッドも含めた中・高層木造建築物が増えてきたという印象を持っています。法律に基づく様々な取り組みも進展しており、その一つが「建築物木材利用促進協定制度」です。これは、建築主である事業者等と国または地方公共団体が協定を結び、木材利用に取り組む制度で、川上と川中の事業者が協定に参加することで、地域材の利用促進にもつながるものです。昨年末時点で既に40を超える協定が締結されており、その内容に応じて取り組みが進められているところです。
また、木材利用促進月間(10月)を中心に、「ウッド・チェンジ」を合い言葉として木の良さや木材利用の意義を普及する取り組みを推進し、木材利用促進に向けた機運を醸成する「木づかい運動」を関係省庁、地方公共団体や業界団体等と連携し、展開しています。具体的には、木材利用の意義等を発信するシンポジウムやセミナー等のイベントの開催、「ウッドデザイン賞」など、木材を利用した優良な施設、製品、取り組み等を対象とする表彰制度のほか、木に触れ、木の良さや木材利用の意義を学ぶ「木育」の全国各地での展開等を支援しています。
さらに、官民連携で川上から川下までの関係者が広く参画する「民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェンジ協議会)」において、木材利用の促進に向けた課題の特定や解決方法の検討、先進的な取り組みの発信、木材利用に関する情報共有などを行うことにより、木材を利用しやすい環境づくりに取り組んでいます。こうした様々な施策の効果も相まって、木材利用に向けた機運が高まっていると考えています。
杉田 当社においても、「建築物木材利用促進協定制度」に基づき、京都市などと「建築物等における北山杉の利用促進協定」を昨年8月に締結し、北山杉の利用促進と新用途開発及び新製品開発などに取り組んでいく予定です。
菅野会長が会長を務められている木材利用推進中央協議会では、「木材利用優良施設等コンクール」を実施され、木材利用に資する施設等を対象に毎年表彰されています。今後、都市における木材利用をさらに促進していく上でのポイントはどのような点だとお考えでしょうか。
菅野 「木材利用優良施設等コンクール」においては、11階建ての純木造の耐火建築物が実現されるなど、これまでにない建築物が出てきているところです。コスト面においても、一坪当たり100万円前後と、鉄筋コンクリート造に対抗できるような木造建築物も登場し始めています。建築業界の方々からは、コストが変わらないのであれば木造で建てるという声も聞かれ始めており、木材利用に向けた機運は確実に高まっていると感じています。
一方で、こうした川下の需要に対応できる製材メーカーがまだ多くないのが現状で、木材製品を量産することによるコストメリットが出せるような環境がまだ整備されていません。中高層の木造建築物に関するガイドラインなど、国による明確な方向性が示されれば、木材製品を量産するために必要な設備投資が進むのではないかと考えています。
また、都市における木材利用をさらに促進するためには、ビルやマンションにおける内装の木質化リノベーションを推進していくことも重要です。1981年以降、新耐震基準に基づいて建設された建物であれば構造上の問題は少ないはずで、内装の木質化によって改めて価値を高めることが可能になります。そのためには、建築基準法における内装制限を緩和するなど、より一層内装に木材を利用しやすい環境を整備していくことが求められます。木材業界としては、準不燃材料や難燃材料による空間と、木質化された空間でそれぞれ火災が起きたケースを比較して、どちらの方が火災発生時の安全性が高いのかといったデータを示す必要があります。壁や天井に木材を用いた空間において火災が発生しても、類焼や上階への延焼の可能性が低いことなどが証明できれば、内装における木材利用が一気に拡大すると考えています。
杉田 当社においても、非住宅の木造化・木質化に積極的に取り組んでおり、木造建築に関するファーストコールセンターとして設立された「木造テクニカルセンター」では、中層非住宅建築物の木造化に関する相談が増加しています。また、先般ウッドデザイン賞で林野庁長官賞を受賞した「禅坊 靖寧」においては、当社の国産材製品が多数使用されています。加えて、当社が提案する木質空間コンセプト「WoWooDTM」では、オフィスや店舗などにおける内装木質化を推進していますが、菅野会長が仰った内装制限については、当社も大きな課題の一つとしてとらえています。今後も、木材製品の開発も含め、木材利用の促進に貢献できるよう取り組んでいきます。
持続可能な森林経営とカーボンニュートラル
杉田 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、木材利用の重要性の理解・浸透を図ることで、森林資源の循環利用を促進していくことが重要となります。林野庁におけるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みについてお聞かせください。
織田 カーボンニュートラルへの貢献に向けて、「伐って、使って、植える」森林の循環利用により、炭素を貯蔵する木材の利用拡大を図りつつ、成長の旺盛な若い森林を確実に造成していくことが求められます。林野庁では、2021年10月に「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」を作成、公表しました。本ガイドラインは、木材利用の一層の促進を図るため、建築物に利用した木材の炭素貯蔵量を、国民や企業にとって分かりやすく表示する方法を定めたものです。建築物の所有者や建築事業者等が、Harvested Wood Products(伐採木材製品)の考え方を踏まえ、建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量について、自ら表示する場合の標準的な計算方法と表示方法を示しています。さらなる木材利用の促進に向け、ライフサイクルアセスメントにおける数値的なデータを客観的に示していくことで、他資材との比較において環境負荷に関する優位性を高めていくことができると考えています。
また、CO2吸収源を確保する観点においては、国内ではこれまで、人工林を中心に削減目標達成に貢献してきました。しかし、人工林の高齢化に伴い、近年の森林吸収量は減少傾向にあります。木材利用の拡大を図りながら再造林を進めていくには、林業自体の生産性や採算性を向上させる必要があります。そのために、「林業デジタル・イノベーション総合対策」として、林業機械の自動化・遠隔操作化、森林資源情報のデジタル化の推進、ICT等を活用した生産管理の効率化などの取り組みに加え、地域一体となってデジタル技術をフル活用し、収益性の高い林業を実現する「デジタル林業戦略拠点」の構築を進めていきます。この構想では、森林資源情報の提供を行う都道府県・市町村、人材育成のアドバイスを行う大学・研究機関、アプリ等の開発事業の部分代行を行う機械メーカーなど、異分野の皆さんにも参画していただきながら、森林調査、伐採・流通、再造林等へのデジタル活用、通信技術活用等について取り組みを進める予定です。
杉田 温室効果ガスの排出削減が求められる中、炭素に価格を付けることで排出削減につなげる政策「カーボンプライシング」への注目も高まりを見せています。この分野における林野庁の取り組みについてお聞かせください。
織田 カーボンニュートラルの実現に向けて重要性が高まっている森林クレジットの創出拡大に向けて、CO2等の温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する「J-クレジット制度」について、昨年8月に見直しを行いました。同制度におけるプロジェクトの認証対象期間は原則8年間としていましたが、今回の見直しにより、最大16年間に延長することが可能となりました。また、主伐・再造林に係る排出量・吸収量の算定方法についても見直しを行いました。これまでは、吸収量の算定に当たって主伐は「排出」として計上することとしていましたが、今回の見直しにより、主伐後の伐採跡地に再造林を実施した場合は、植栽樹種が標準伐期齢等に達した時点の炭素蓄積を主伐による排出計上量から控除することが可能となりました。そのほか、これまで評価の対象外となっていた伐採に由来する木材の炭素固定量について、プロジェクト実施地で生産した原木の生産量をもとに、伐採木材が永続的とみなされる期間(90年以上)利用される分の炭素固定量を推計し、プロジェクト全体の森林吸収量の一部として算定対象に追加することが可能となりました。
同制度の見直しによる森林クレジットの創出拡大を通じて、「伐って、使って、植える」循環システムの確立が図られることにより、森林吸収量の中長期的な確保・強化につながることが期待できると考えています。
杉田 持続可能な森林経営という点では、林業従事者の不足が大きな課題となっています。その点についてはどのようにお考えでしょうか。
織田 まず前提となるのは、林業自体が儲かる産業にならなければならず、先ほどの再造林の話に通ずる部分があると考えています。また、林業従事者の育成という面においては、「森林・林業担い手育成総合対策」等により、様々な取り組みを進めていきます。具体的には、新規就業者等への体系的な研修、就業前の青年への給付金支給、高校生等の就業体験や女性の活躍、森林プランナーの育成、労働力のマッチング、外国人材の受け入れに向けた条件整備などの取り組みを通じて、新規就業者の確保や認定森林施業プランナーの育成を目指すほか、大きな課題の一つである労働安全面の向上や、森林経営管理制度の支援を行える技術者の育成に努めていきます。
菅野 全木連としても、原木及び製品の増産、主伐後の再造林の着実な実行に向けた体制の整備に取り組むことが必要であり、その実現に当たっては、それを担う人材の確保が重要であるとの認識を持っています。地域によって深刻な人手不足の状況にあることを踏まえ、労働力としての外国人材の受け入れに、関係者の期待が寄せられています。こうした状況を背景に、昨年8月には、森林・林業・木材産業関係団体とともに、「林業・木材産業分野における外国人材の受け入れに関する要望書」を林野庁に提出しました。この中で、即戦力となる外国人材の受け入れが可能な特定技能制度について、国内での人材確保が困難な分野に林業・木材産業分野を追加するべく、検討していただくことを要望しています。加えて、他産業に比べて労働災害の発生率が高い一方で、賃金は低い状況にあることから、国内外の人材を問わず、安心して就労できるよう、引き続き労働災害の防止と賃金の引き上げなど、就労環境の改善に向けた対策を強化するよう働きかけています。
杉田 木材の循環型サプライチェーンの構築に当たって、山元である森林所有者や素材生産業者への利益の還元という課題についてはどのようにお考えでしょうか。
菅野 木材を安定的に供給していくためには、循環型の木材利用が必要であり、全木連では植林を支援していく方針です。一方で、山元に利益が確実に還元されるスキームを構築しないと、再造林は進まないと考えています。そのため、環境整備をしつつ、長期的な森林計画の作成についても補助政策などが必要で、植林の推進に向けた森林行政の取り組みに期待したいところです。
最近では自身でも林業に取り組み始めていますが、そこで気づいた点が、山にどれだけの木が蓄積されているのかについて正確に把握している人が少ないという事実です。この点については、ICT技術によって、山林における樹種や蓄積量が正確に把握できるような仕組みができるとよいと考えています。カーボンニュートラルの観点においても、こうした技術で蓄積量や成長量の計測ができる仕組みが構築できれば、カーボンクレジット取引の対象としても有効に活用されるようになり、木の成長が山の価値向上につながるのではないかと期待しています。
また、別の視点では、例えば、輸入材の輸送に必要な燃料のエネルギー使用量を温室効果ガス排出量としてカウントするなど、国産材の優位性を高めるためのアイデアを模索しています。山元への利益還元につながり、再造林が促進されるスキームの構築に尽力したいと考えています。
業界全体でサプライチェーンの強化を図る
杉田 最後になりますが、木材・建築業界の皆様に対してメッセージをお願いします。
織田 川下である住宅メーカー、工務店などの建築業界の皆さんには、国産材の利用を促進することがカーボンニュートラルや地方創生への貢献につながるということをご理解いただき、引き続き取り組むべき課題はあるものの、ぜひ積極的に国産材を使用していただきたいと思います。また、全木連も含め、サプライチェーンの中間で日々精力的に活動していらっしゃる皆さんには、その中で川上と川下をつなぐ中心的な役割を担っていただき、「顔の見える」サプライチェーンの構築に向けた取り組みを期待しています。川上から川下まで、それぞれ担っていただく役割は異なりますが、同じ船に乗っている運命共同体であるという意識を持っていただきながら、より一層強固なサプライチェーンを構築していただきたいと思います。また、我々もそうした取り組みに対して継続的に支援させていただきます。
菅野 国が示す家づくりに関する施策は、性能や品質をより一層高める方向へと加速しており、2025年には省エネ基準適合義務化や4号特例の縮小などの施行が予定されています。こうした変化に対応するために新しい知識やスキルを学ぶ「リスキリング」の考え方が求められており、木材・建築業界においても、新しい環境に業界全体として対応していく必要があると感じています。消費者保護の観点からも、高性能で、構造安全性が確かな木造住宅を供給していくことが必要で、我々の業界が果たすべき役割は大きいと考えています。ただし、大きな変化に各企業が個別に対応していくには限界があり、川下が必要とする技術やノウハウを川中が代行してサポートするなど、業界全体でスキルアップを図って対応していくような環境を構築していかなければなりません。新しい技術やノウハウを学んだ先に、業界としての明るさが見えてくるのだと思います。木材・建築業界のさらなる発展に向けて、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思います。
杉田 本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。当社も国産材の需要創造、利用促進、安定供給に向け、サプライチェーン再構築の一翼を担っていきたいと考えています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。