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政府 2022年度第2次補正予算案を閣議決定 29兆円規模の経済対策を実施 年内成立目指す
政府は11月8日、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(10月28日閣議決定)の裏付けとなる、2022年度第2次補正予算案を閣議決定しました。一般会計歳出については、既定経費の減額も含め28兆9,222億円となり、このうち経済対策関係経費として29兆861億円が充てられます。今回は、同予算案のうち、住宅・建築物及び木材利用等に関連する内容のほか、国土交通省、経済産業省、環境省の三省連携による住宅省エネ化への支援強化の概要についてご紹介します。
国土交通省
総合経済対策の四つの柱に準じて予算を計上
国土交通省は、第2次補正予算として国費総額2兆216億円、事業費総額2兆8,547億円を計上しました。「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」において掲げられた「物価高騰・賃上げへの取り組み」「円安を活かした地域の『稼ぐ力』の回復・強化」「『新しい資本主義』の加速」「防災・減災、国土強靭化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全・安心の確保」の四つの柱について、各項目の実施に必要な経費が計上されています。
このうち、住宅対策としては国費総額1,723億円、事業費総額1,838億円が充てられました。
「こどもエコすまい支援事業」を新設
住宅関連の事業別予算としては、新設された「こどもエコすまい支援事業」に1,500億円が計上されています(3面にて詳報)。同事業では、エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えをすることで、2050年カーボンニュートラルの実現を目的としており、これら世帯におけるZEHレベルの高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対する支援がなされます。
「住宅市場安定化対策事業(すまい給付金)」には356億円が充てられます。消費税率引き上げへの対策として講じられた住宅ローン減税の拡充措置によっても、なお効果が限定的な所得層の負担を軽減し、住宅市場の安定化を図る「すまい給付金」について、実施に必要な財政上の措置がとられます。
また、DX化の推進にも予算が計上されており、中小事業者が建築BIM(Building Information Modeling)を活用する建築プロジェクトへの支援、3D都市モデル(PLATEAU)の整備・活用・オープンデータ化の推進等の取り組みに、公共事業費95億円、非公共事業費4億5,800万円が充てられます。
そのほか、公共施設等の耐災害性の強化に国費総額で140億9,500万円が計上され、防災・減災まちづくり等のため、広域防災拠点等となる都市公園の機能確保のほか、災害応急対策の活動拠点となる官庁施設における電力の確保対策等が実施されます。
環境省
既存住宅の省エネ化・省CO2化を促進
環境省は、第2次補正予算として、1,383億円を計上しました。住宅・建築物等における省エネ対策、地域脱炭素の取り組みの加速化、自立分散型エネルギーとしての再エネ・蓄電池の普及拡大などのほか、二国間クレジット(JCM)の積極展開による日本の脱炭素技術等の海外展開と、途上国の脱炭素化の同時実現を推進するとしています。
住宅・建築物分野では、「断熱窓への改修促進等による家庭部門の省エネ・省CO2加速化支援事業」に100億円が計上され、国土交通省、経済産業省との連携により、住宅の断熱性能向上が図られます(3面にて詳報)。また、「既存住宅の断熱リフォーム等加速化事業」には14億円が充てられ、エネルギー価格高騰対策につながる既存住宅の省エネ化・省CO2化が図られるほか、「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化のための高機能換気設備導入・ZEB化支援事業」に60億円が計上され、気候変動による災害激甚化や新型コロナウイルス等の感染症への適応を高めつつ、快適で健康な社会の実現が目指されます。
>環境省
経済産業省
中小企業等の資金繰り支援を継続
経済産業省は、第2次補正予算として総額11兆1,274億円を計上しました。このうち、住宅関連の取り組みとして、「住宅の断熱性能向上のための先進的設備導入促進事業」に900億円、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」に300億円が充てられ、住宅の断熱性能向上や家庭部門における省エネ対策の推進が図られます(3面にて詳報)。また、「省エネルギー設備への更新を促進するための補助金」に500億円が計上され、事業場等における省エネ性能の高い設備・機器への更新などについて、企業の複数年にわたる投資計画に対応する形で、今後3年間で集中的に支援されます。
中小企業等における資金繰りについても、引き続き手厚い支援がなされます。「民間金融機関を通じた資金繰り支援(借換保証制度等保証料補助)」に1,832億円が、「日本政策金融公庫による資金繰り支援」に778億円がそれぞれ計上され、新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響を受けて厳しい状況にある中小企業・小規模事業者について、資金繰りの円滑化が図られます。
林野庁
国産材シェア拡大へ川上から川下まで一体的に支援
林野庁は、林野関係の補正予算として総額1,162億円を計上し、重点事項の一つである「国内森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策」に498億9,100万円を充てました。同対策では、木材産業の体質強化、原木の生産基盤整備、木材製品等の輸出及び消費拡大のほか、ウッドショックによる木材不足や価格高騰の経験を踏まえ、海外情勢の影響を受けにくい需給構造の構築に向けた国産材供給力の強化、国産の製品・資材等への転換などについて、川上から川下まで総合的かつ一体的に支援がなされます。
川上においては、高性能林業機械の導入、原木供給体制の維持・拡大に向けた路網整備、森林資源情報の整備、間伐材生産、再造林、エリートツリー等の苗木生産施設の整備等による供給力の向上について支援がなされ、生産基盤の強化が図られます。
川中においては、製品供給力の強化に向けて、高付加価値品目への転換、既存施設の機能向上やストック機能の強化なども含めた木材加工流通施設の整備等に支援がなされます。
川下においては、木材製品等の輸出促進を支援するとともに、CLTやJAS構造材の非住宅等への利用実証、外構部等の木質化、住宅分野における国産材製品への転換等に支援がなされ、国産材の更なる需要拡大が目指されます。
林業労働力の確保で安定供給体制の構築へ
「林業従事者等確保緊急支援対策」には、3億1,900万円が計上されました。ウッドショック等の影響により、国産材の安定供給体制の構築が求められる中、伐採、造林等の施業を行う林業従事者等の人手が不足するなど、林業労働力の確保が大きな課題とされています。こうした中、同対策では、林業への就業ガイダンスやトライアル雇用、労働力のマッチング、多能工化、労働安全確保、外国人材受け入れに向けた条件整備など、多岐にわたる支援がなされます。
そのほか、防災、減災、国土強靭化の推進として、治山施設の設置等による対策に256億円、森林整備による対策に164億円がそれぞれ計上されています。
>林野庁