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ニュース&レポート

環境省 官民連携で脱炭素型の製品・サービスの創出目指す

 環境省は10月26日、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」を立ち上げたことを公表しました。同国民運動では、将来の脱炭素につながる豊かな暮らしの全体像を明らかにすることで、新たな消費や行動の喚起に加え、国内外における市場創出が目指されます。今回は、同国民運動の背景や内容のほか、同時に立ち上げられた官民連携協議会の概要などについてご紹介します。

脱炭素化に向けて具体的なアクションや選択肢を提示

 昨年10月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減し、更に、50%削減の高みに向けて挑戦を続けていくとする目標を踏まえ、その裏付けとなる対策・施策等の道筋について記載されています。部門別では、家庭部門が66%、業務その他部門が51%、運輸部門が35%などと高い削減目標が設定されており、国民の暮らしやライフスタイルの分野において大幅な温室効果ガスの削減が求められています(図1)。

地球温暖化対策計画の概要

 一方で、国民・消費者においては、約9割が「脱炭素」という用語を認知しているものの、実際に行動に移している人は約3割にとどまるなど、その実現のための具体的な行動には結び付いていないとの統計もあります(図2)。

脱炭素に関する国民消費者の意識

 こうした状況を背景に、環境省がこのたび立ち上げた「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」では、国の継続的かつ一貫したメッセージを発信しつつ、単なる呼びかけにとどまらない具体的なアクションや選択肢を提示するとしています。更に、自治体、企業、団体、消費者との連携による取り組みやキャンペーンを展開し、新しい暮らしを支える製品・サービスへの大規模な需要を創出すると述べています。かつての「クールビズ」での成功体験の要素を取り入れつつ、第2の成功事例を目指して、同国民運動を展開していく方針です。

四つの切り口で豊かな暮らしづくりを後押し

 同国民運動では、国民・消費者の行動変容やライフスタイル変革を促すために、衣食住の分野における「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後」の全体像を明らかにし、具体的なアクションが提案されています。例えば、省エネ住宅への引っ越しや断熱リフォームによって、一戸当たり年間1,130.7kg-CO2の温室効果ガス削減、年間約9万4,000円の光熱費節約につながるなど、具体的な算出根拠に基づいた効果やメリットなどが示されています。

 また、①デジタルも駆使した、多様で快適な働き方・暮らし方の後押し、②脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを支える製品・サービスの提供・提案、③インセンティブや効果的な情報発信を通じた行動変容の後押し、④地域独自の暮らし方の提案、支援という四つの切り口で、国や自治体、団体、消費者等の取り組みを結集し、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしづくりを後押しするとしています(図3)。

新たな国民運動における四つの切り口

 同国民運動の一環として、環境省において個別アクションの実施が予定されており、その第一弾では、「ファッション」「住まい」「デジタルワーク」の各分野における10年後の新しい暮らしについて提案がなされます。このうち、「住まい」の分野については、快適で健康な暮らしにつながる住宅の断熱リフォーム促進キャンペーンが展開される予定です。

共感につながる機会・場を設定

 同省は、国民・消費者の幅広い行動変容、ライフスタイル変革を進めるためには、脱炭素につながる豊かな暮らしについて、具体的な製品・サービスとともに周知していくだけでなく、体験・体感といった共感につながる機会・場の提供が欠かせないと述べています。そのため、消費者のニーズに応じて、人が多く集まるショッピングモールやモデルルームなどの「アナログ」と、メタバース、スマートフォンやアプリなどの「デジタル」の双方において、「脱炭素de豊かな暮らし応援拠点」として様々な場を設定していく考えです。

 今年度については、実証事業としてトライアルで設定し、具体的な製品・サービスに関して消費者への訴求を試行した上で、そこで得られた課題等を踏まえ、来年度以降、全国に拡大させていく方針です。

官民連携協議会立ち上げで一体的な展開を図る

 同国民運動における取り組みを官民連携で効果的な実施につなげることを目的に、国、自治体、企業、団体、消費者等による官民連携協議会(プラットフォーム)を同時に立ち上げ、一体的な展開が図られます。同協議会への参画は個人・法人問わず自由に行うことができ、10月25日時点で313の企業・団体等が参画しています。

 同協議会では、参加者間で協議の上、①デジタル活用や製品、サービスを組み合わせた新しい豊かな暮らしのパッケージ提案、機会・場の創出など消費者への効果的な訴求に向けた連携、②環境省の「グリーンライフポイント事業」など、各主体の取り組みで得られた知見、経験、教訓の共有とベストプラクティスの横展開、③環境省普及啓発予算の具体的な用途やアイデアといった政府施策への提案・要望の三つのアクションについて実施されます。

 今後は、11月25日に予定されている第1回協議会を皮切りに、当面の間は月1回の頻度でオンラインによる協議会が開催される予定で、必要に応じて分科会やワーキンググループを設けるなど、進め方については柔軟に対応する方針です。なお、協賛金や負担金、運営幹事等の役割などは課されないほか、参画や脱会はいつでも行えるようにするなど、フラットな形式で協議会に参加できるよう配慮するとしています。

ポータルサイトで取り組みや製品の登録を募集

 10月25日には、東京都千代田区のベルサール半蔵門において、「脱炭素につながる新しい暮らしを創る国民運動」及び官民連携協議会の発足式が開催されました。西村明宏環境大臣、山田美樹環境副大臣、国定勇人環境大臣政務官のほか、官民連携協議会参画予定の企業・自治体・団体等から計279名が出席し、西村大臣から同国民運動の趣旨説明や、「脱炭素につながる豊かな暮らしの10年後」の絵姿(図4)の発表などがなされました。

脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後の絵姿

 また、同日付で同国民運動のポータルサイトが公開されました。同サイトでは、新着情報やイベントのレポートなどが掲載されるほか、取り組みや製品・サービスの登録や、官民連携協議会への参画について募集がなされています。取り組み等の登録については、先述の四つの切り口(図3)を参考として、「新しい暮らしを支える製品・サービス」「各主体の取り組み情報」について積極的な登録が呼びかけられています。登録された情報については、環境省ホームページやSNS、プレスリリース等を通じて発信される方向性です。

 同省では今後、これらの取り組み内容について、11月6日にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開幕した国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)や、2023年5月に広島県広島市にて開催が予定されているG7サミット(主要国首脳会議)などをはじめ、国際的な場においても提案・発信していく考えです。

環境省HP

ポータルサイト

環境省 ㈱脱炭素化支援機構の創立総会を開催

 環境省は10月28日、東京都港区の三田共用会議所において、㈱脱炭素化支援機構の創立総会を開催しました。同機構は、国の財政投融資からの出資と民間からの出資を原資としてファンド事業を行う組織で、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素に資する多様な事業への呼び水となる投融資を行い、脱炭素に必要な資金の流れを確立し、経済社会の発展や地方創生への貢献、知見の集積や人材育成など、新たな価値の創造への貢献が目指されます。

 当日は、民間株主のほか、西村明宏環境大臣を始めとする関係省庁の関係者など、計153名が参加しました。西村大臣は挨拶の中で、関係者への感謝の意を示すとともに、脱炭素社会実現への決意を表し、オールジャパンの体制で、脱炭素社会の実現に向けた投資を一層盛り上げていくことを呼びかけました。また、同機構が、今後10年間で150兆円もの脱炭素投資を実現する政府方針の先駆けとして資金を供給し、多くの脱炭素プロジェクトが創出されることへの期待の言葉を述べました。総会終了後には直ちに会社設立に関する登記申請がなされ、同機構が正式に設立されました。

 同省では、脱炭素化に意欲のある民間事業者等の取り組みを同機構が後押しすることで、脱炭素社会の実現に貢献できるよう、民間の株主や関係省庁と連携して対応していく考えです。

環境省 脱炭素化支援機構設立