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東京都防災会議 10年ぶりに見直し、防災対策の進展と課題を示唆 首都直下地震等による被害想定を公表

 9月1日は「防災の日」です。東京都はこのたび、「首都直下地震等による東京の被害想定」について10年ぶりに見直しを行い、報告書を公表しました。これは、2011年の東日本大震災等の具体的事例や最新の知見を踏まえて策定されたものです。今回は、被害想定の概要についてまとめるとともに、本想定によって明らかになった防災対策の進展や、今後の課題等についてご紹介します。

環境の変化や最新の知見を踏まえた見直し

 東京都防災会議地震部会は5月25日、「首都直下地震等による東京の被害想定」及び「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」を10年ぶりに見直し、「首都直下地震等による東京の被害想定」と題した報告書を公表しました。前回となる2012年の公表以降、住宅の耐震化や不燃化等の取り組みが進展する一方、高齢化や単身世帯の増加等、取り巻く環境は変化しています。加えて、2018年の熊本地震など、全国で地震が頻発し、地震の発生確率が上昇しています。こうした10年間の変化や地震の発生による最新の科学的知見を踏まえ、首都直下地震発生時の全体像を明確化するとともに、今後の防災対策の基礎とするべく、被害想定が取りまとめられました。

 本想定では、より実効性のある方策を検討するために、科学的・客観的な手法やデータを用いて可能な限り定量的に評価しています。一方で、定量化が困難な建物被害や人的被害、生活への影響、インフラやライフラインの復旧の長期化等については、定性的に評価がなされています。また、今回は新たに、時間の経過とともに変化する被害の様相や、応急復旧の進捗をより具体的に描き出すことで、被害の全体像を分かりやすく表現し、地震に対する課題についても明らかにしています。

一番被害が大きいのは、都心南部直下地震

 本想定では、「都心南部直下地震」「多摩東部直下地震」「大正関東地震」「立川断層帯地震」「南海トラフ巨大地震」の五つの地震を設定しており、それぞれの被害想定結果が示されています。

 このうち、都内で一番被害が大きいとされる都心南部直下地震では、震度6強以上の範囲が区部の約6割を占め、建物被害が19万4,431棟、死者が6,148人と想定しています(図1)。

都心南部直下地震M7.3の被害想定

前回公表時に想定した東京湾北部地震による被害と比較すると、建物被害は約11万棟減少、死者数も約3,500人減少しており、これは、建物の耐震化や不燃化の進展が主な要因とされています。

 また、多摩東部直下地震では、震度6強以上の範囲が多摩地域の約2割に広がり、揺れの被害が想定される一方で、南海トラフ巨大地震や大正関東地震については、揺れによる被害よりも、津波による被害が大きいこと等が示されています。

不燃化や耐震化により、被害の軽減が可能

 東京都は「防災都市づくり推進計画」を定め、木造住宅密集地域の不燃化や木造住宅の耐震化を目指しています。木造住宅密集地域の面積は、この10年間でおよそ半減したものの、いまだに8,600ヘクタールが残っており、一部の地域では火災リスクが高いままであるのが現状です。一方、東京都の住宅における耐震化率は92.0%と、全国平均の約87%より高い水準に達しています。

 更に、本想定では、現状において想定される被害量だけでなく、今後の取り組みにより見込まれる被害縮減の効果等についても推定されています。今回の想定では、前回公表時より死者数・全壊棟数が3~4割減少しましたが、耐震化を更に進めることで、死者数、全壊棟数をより減少させることが可能であると推計しています(図2)。

耐震化の推進等による被害軽減効果

全ての建物が建て替えや耐震補強等の実施により、1981年基準を満たした場合、死者数・全壊棟数を約6割減少させることが可能と推計したほか、2000年基準を満たし、全ての建物が建て替えられた場合、被害を約8割軽減させ、死者数が約500人、全壊棟数が約1.4万棟となることが推計されています。また、家具転倒防止対策や出火防止対策の推進によっても、死者数、焼失棟数を大幅に減少させることが可能と推計しました。

 東京都は今後、本報告書を踏まえて地域防災計画を修正し、必要な対策を強力に推進することで、防災力を向上していく方針です。

東京都防災ホームページ