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経済産業省 住宅の高断熱化に向けて、窓の性能表示制度を見直し 星マーク6段階表示で、 消費者のより良い窓の選択を促進

 経済産業省では、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて住宅の高断熱化を図るべく、断熱性能の高い建材の普及促進を進めています。その施策の一つである窓の性能表示制度について見直しに向けた審議がなされており、このたび、検討結果の取りまとめが行われました。今回は、同制度の見直しの概要と今後の方向性についてまとめました。

窓への性能表示ラベルの貼付を促進

 経済産業省は6月20日、総合資源エネルギー調査会の建築材料等判断基準ワーキンググループにおける検討結果として、「窓の性能表示制度に関する取りまとめ」を公表しました。「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能を確保することが目指されており、住宅の高断熱化の促進が急務となっています。そのような中、同省では、熱の出入りの大きい窓等の開口部の対策について検討を進めており、このたび、窓の性能表示の見直しについて検討結果の取りまとめがなされました。

 今回は、表示方法、表示内容、性能の等級の決定方法の三つについて見直しがなされています。

 一つ目の表示方法については、窓の性能表示がこれまで運用されてきた中で挙げられた課題を踏まえて見直されました。窓の流通形態の多くは、サッシメーカーがサッシを、ガラスメーカーがガラスを出荷し、代理店や販売店がそれらを組み合わせ、窓として住宅生産者に出荷しています。しかし、代理店や販売店の多くは、窓の性能計算や性能表示ラベルの貼付など、業務負担が増えることから、窓の性能表示について普及が進んでいないのが現状でした。これらの実態から、従来通り、サッシやガラスのメーカーにおいて対応が可能なカタログへの掲載(WEBを含む)や、ショールーム等の展示場での表示に加え、代理店や販売店に対し、性能計算に必要な能力の向上や支援ツールの導入を図るとともに、容易かつ正確に貼付できる性能表示ラベルを供給するなど、製品への性能表示ラベルの貼付を目指していくとしています。

ZEH基準の水準の窓は星三つ表示に

 表示内容については、窓の性能表示制度において参照している「JIS A 4706」が昨年2月に改正され、断熱性能の上位等級と日射熱取得性の評価指標が新たに追加されたことに伴い(図1)

断熱性の上級等級の追加

今回、窓の断熱性能を示す星マークの割り付けが4段階表示から6段階表示へと見直されました(図2)。

新たな星マークの割り付け

 新たな星マークの割り付けの考え方としては、消費者にとって分かりやすく、「JIS A 4706」において新設された上位等級が評価できること、今後、ZEH基準の水準を満たす窓の熱貫流率2.3[W/(㎡・K)]が市場における性能の平均値になることを想定し、当該性能が星の数で過半数超とならないこと、2030年の住宅の断熱性能を基に算出した建材トップランナー制度の目標基準値と整合するよう、熱貫流率2.08[W/(㎡・K)]を上回る等級H-6が星の数で過半数以上となるよう設定すること、現在の市場における窓の断熱性能の平均値2.6[W/(㎡・K)]を考慮し、平均以下の性能についてもある程度段階的に評価できるよう設定すること等が示されています。

日射熱取得率を新たに表示

 「JIS A 4706」で新設された日射熱取得性の評価指標については、「日射熱取得率」の数値及びその数値に応じた3段階の等級で表示する方法が示されました(図3)。

窓の性能表示のデザイン

なお、日射熱取得性については、地域や方位によって適切な窓が変わり得るため、単に数値が高いものや日射量の多いマークが良いかのような印象を消費者に与えることを避けるべきであるとし、名称について、性能を想起させる「日射熱取得性」ではなく、「日射熱取得率」を用いることが定められました。

 また、「日射熱取得率」については、現時点で消費者が内容を十分に理解しているとは言えないため、「窓の性能表示ラベルに係るガイダンス」を関係業界と協力して作成し、消費者及び営業担当者や設計担当者等に提供して理解を醸成していくとしています。

 表示ラベルのデザインについては、「断熱性能」と「日射熱取得率」を合わせた表示とし、縦と横の2通りとしました。また、ラベル作成の負担を考慮し、熱貫流率及び日射熱取得率の数値を表示しないものであっても良いとする方針です。

同一シリーズの製品は共通の性能等級に

 また、性能の等級の決定方法についても見直しがなされました。窓の断熱性能の指標である熱貫流率は、窓のサイズによって数値が変わるため、消費者にとっては分かりにくく、事業者にとっても管理上の負担が大きく説明が難しいという声が多かったことを受け、今後は、同一シリーズの窓製品であれば代表サイズを採用して評価することを認めることで、共通の性能等級を使用できるようになりました。具体的には、同一シリーズと認められる開閉形式の範囲及び代表サイズについて、(国研)建築研究所が定める「窓、ドアの熱貫流率に関し試験体と同等の性能を有すると認められる評価品の範囲を定める基準」に基づくこととしています。

 同省は今後、供給側の対策だけでなく、需要側の対策を講じていくことが極めて重要であるとの認識を示しています。この認識を政府と製造事業者等が共有し、窓の性能表示制度の活用をはじめとした消費者への普及啓発に努めることで、窓の断熱性能向上がより良い住環境を実現する上で不可欠であるとの意識を醸成し、消費者が主体的により良い窓を選択するよう促していくことを目指しています。

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