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全国知事会 「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた提言
3年ぶりの対面開催で各提言について議論
47都道府県の知事で組織される「全国知事会」は、7月28、29日の二日間にわたって「全国知事会議」を奈良県奈良市において開催し、各本部、委員会、プロジェクトチーム等における提言等が議題に上げられました。
このうち、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けて、国内において長年培ってきた木の文化を次世代に確実に引き継いでいくための「国産木材の需要拡大に向けた提言」、エネルギーの安定供給に万全の対策を講じつつ、日本の脱炭素化を力強くリードしていくための「脱炭素社会の実現に向けた対策の推進に関する提言」についても議論がなされ、それぞれ提言内容について取りまとめられました。
国産木材への転換を図る支援を強化
「国産木材の需要拡大に向けた提言」においては、①民間非住宅建築物の木造化・木質化の推進、②公共建築物の木造化・木質化の推進に向けた財源の確保、③大規模木造建築物の設計や施工を担う建築士等の育成、④国産木材への転換促進の四つの重点事項が示されました。
①では、JAS構造材の流通量の拡大を図るべく、生産拡大に必要な施設の整備やJAS構造材の活用に対する支援に加え、JAS認証の取得や維持に要する経費の負担軽減につながる支援などについて述べられています。更に、国産木材の量を促進する新たな制度案などについても示されています。②では、公共建築物の木造化・木質化を促進するために必要な予算を確保するとともに、既存事業の見直しや、地域の実情に応じた新たな助成制度の創設など、地方公共団体等に対する支援の拡充を図ることが盛り込まれました。③では、非住宅木造建築物の設計、提案、施工が可能な建築士等を増加させるため、国が主体となった人材育成を行うとともに、大学の教育課程における木造建築や木材利用のカリキュラムの充実を図ることなどが挙げられています。また、④では、国産木材への転換を図るべく、国産材製品の流通対策、国産材製品への転換を図る設計・施工方法の導入や普及への支援などについて、より一層強化する必要があると述べています。
建築物のネット・ゼロ・エネルギー化を早期に実現
「脱炭素社会の実現に向けた提言」では、交通、建築、産業、再生可能エネルギー等の各分野における施策について取りまとめられました。
このうち、建築分野では、住宅をはじめ、公共施設や社会福祉施設、商業用ビルなど、建築物のネット・ゼロ・エネルギー化を早期に実現するための提言がなされています。新築住宅については、再生可能エネルギーの導入を要件としたZEHの早期適合義務化を図ることや、地域でのZEHを上回る先導的取り組み等への支援等が盛り込まれました。また、既存住宅については、高断熱性能の確保や再生可能エネルギー設備等の設置に向けて、優遇税制等の施策を検討することなどが示されました。
そのほか、全国知事会の脱炭素・地球温暖化対策本部では、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた各都道府県における共通の行動目標として「脱炭素・地球温暖化対策行動宣言」を掲げ、それぞれの地域の実情に応じながら、個性や強みを生かした施策を実践していく決意が示されました(図)。