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ニュース&レポート

国土交通省 デジタル改革関連法が5月施行 不動産取引における電子書面交付がスタート

  宅地建物取引業法の関連規定の改正を含む「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(デジタル改革関連法)」が、5月中に施行されます。これにより、不動産取引においては、契約書や重要事項説明書等の書面の電子化等が可能となります。今回は、同法の施行に向けて国土交通省が実施してきた社会実験の検証結果と、その結果を踏まえて整理された事項についてまとめました。

不動産取引における書面が電子化

 不動産取引のオンライン化については、テレビ会議などを活用したオンラインによる重要事項説明(IT重説)の運用が、賃貸契約では2017年10月から、売買契約では2021年3月から本格的に開始されています。一方、書面の電子化については、宅地建物の売買等における、①重要事項説明書、②契約締結時の書面、③媒介契約締結時の書面に関し、現行の宅地建物取引業法で宅地建物取引士(以下、宅建士)が書面に記名押印して契約当事者に交付することが義務付けられており、オンラインでの取引のハードルとなっていました。

 今回、デジタル改革関連法が施行されることで、これらの義務が緩和され、①及び②における押印が不要になるとともに、①~③の書面の交付について、相手方の承諾を得た上で、郵送することなく、メール等の電磁的方法で行うことができるようになります。これにより、印紙税や郵送代等のコストの削減をはじめ、スケジュール調整、事務作業、保管・管理といった業務の効率化などが期待されています。

電子書面交付に関する社会実験を実施

 国土交通省では、書面の電子化の実施件数やトラブル等の発生状況等を把握することを目的に、賃貸取引については2019年10~12月及び2020年9月~2021年12月、売買取引については2021年3~12月の期間において、社会実験を実施してきました。本社会実験では、電子書面の交付について主に電子署名サービスが利用されており、従来のオンラインでの重要事項説明に加え、書面の電磁的交付に関する具体的なルールの検討がなされています(図1)。

書面交付に係る社会実験の実施方法

 また、事業者から送付された電子署名済みの電子ファイルが改変されていないことや、署名の作成者などについては、電子認証業務サービス事業者を利用することで確認できるとした上で、電子書面上で行う電子署名の実施及び確認方法についてのルールを示しました(図2)。

電子署名の実施と確認の流れ

 本社会実験では、宅建士とその説明の相手方に対して、実験中のトラブルの有無等に関してアンケートが実施されています。これによれば、電子書面の交付については、宅建士は賃貸・売買ともに98%が、説明の相手方は賃貸では95%、売買では99.4%が「トラブルがなかった」と回答しました。電子署名については、賃貸では96%、売買では95%が利用されており、説明の相手方における電子書面の改変がなされていないことの確認については、賃貸では97%、売買では98%の割合で確認できていました。

社会実験を受けて、遵守・留意事項を整理

 本社会実験の結果を受けて、国土交通省では、書面の閲覧方法や改変の有無の確認方法といった「分かりやすい操作方法の説明・環境の確認」と、スマートフォン使用時における書面の見にくさ等の改善といった「書面作成の工夫」を課題として挙げながら、書面の電子化の実施に当たって遵守すべき事項10項目と、留意すべき事項7項目について整理しています。

 具体的には、媒介契約締結時書面(34条の2書面)、重要事項説明書(35条書面)、契約締結時書面(37条書面)共通で遵守すべき事項として、事前に相手方から電子書面を用いることについて書面で承諾を得ることや、それと併せて、利用するソフトウェア等に相手方が対応可能かどうか確認すること、電子書面交付後に相手方に届いているかどうか確認することなど、8項目を挙げました。また、留意すべき事項として、電子書面が改変されていないことを容易に確認できるよう、電子署名やタイムスタンプを利用することや、電子書面の保存の必要性や保存方法について説明することなどが望ましいとしました。

 そのほか、重要事項説明書については、遵守事項として、相手方のIT環境が、電子書面と説明中の宅建士の画像を同時に閲覧できることを事前に確認すること、留意事項として、電子書面の交付から一定期間経過後に重要事項説明を実施することなどを求めました。

 同省では今後、政省令や解釈・運用の考え方、マニュアルの改正等を行った上で更に周知を進めていく考えです。

国土交通省 第8回 ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会