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木材を適材適所に活用 Jリーグ「FC町田ゼルビア」クラブハウス竣工
ナイス㈱が建築に携わった、サッカーJリーグ所属「FC町田ゼルビア」のクラブハウスがこのほど竣工しました。今回は、鉄骨造に「CLT」や「TJIジョイスト」といった木の新素材が併用された本クラブハウスの概要と、2月11日に㈱ゼルビア様の主催により開催された完成お披露目会の様子について、関係者のコメントとともにご紹介します。
前面に広がる緑のグラウンドと一体化
FC町田ゼルビアは、東京都町田市を本拠地とする、サッカーJリーグ所属のクラブチームです。このたび竣工したクラブハウスは、同チームの運営会社である㈱ゼルビア様が、鶴見川クリーンセンターの一部の土地を町田市から借り受けて進めている整備事業の一環で、クラブハウス2棟のほか、サッカーコート2面分の広さを有する天然芝グラウンドの整備がなされました。
同クラブハウスは、建築面積1,107.86㎡、延べ床面積1,775.21㎡の2階建てで、設計・監理を隈研吾建築都市設計事務所が担当しています。閑静な住宅街と緑豊かな環境に調和するとともに、スポーツ施設としての躍動感が表現されており、完成した建物内からは、前面に広がる天然芝のグラウンドを一望することができるなど、建物と周囲の環境が一体となった開放的な空間を実現しています(図1)。ナイス㈱は、元請けとして全体の施工監理を行うとともに、主に木部分の調達・施工等を請け負いました。
木の新素材を活用したハイブリッド構造
クラブハウスは鉄骨造のブレース付きラーメン構造で、屋根を木造とするハイブリッド構造が採用されています。屋根については、野地板に㈱鳥取CLTによる36㎜厚の「CLT36」が約34m3、屋根を支える垂木には、アメリカのウェアハウザー社の「TJIジョイスト」が約14m3使用されています。TJIジョイストは、軽量でありながら高い強度と安定性を持ち合わせていることが特長で、本物件では600㎜ピッチで設置されています。屋根梁には幅広のH型鋼が採用され、その上に105㎜角のスギのJAS材を配置し、垂木と接続しています。また、屋根を支える垂木は、チーム名「ゼルビア」の由来でもあるケヤキ(英語名:ゼルコヴァ)がモチーフとなっており、鉄骨のフレームにTJIジョイストを架けることで、まるでケヤキの枝が広がっているようなフレーム構成の現しとなっています(図2)。加えて本物件では、構造部だけではなく、選手のロッカールームなどの内装部においても木質感のある素材が多く用いられており、温かみのある空間が演出されています(図3)。
建物の意匠については、ボールが跳ねるように屋根が大きく跳ね出す形状となっており、グラウンドへの広がりを感じさせる造りとなっています。跳ね上げられた屋根の下にはデッキテラスが配置され、光を採り入れた明るい室内を実現しています。最大で3.5m跳ね出した外周部のTJIジョイストには、㈱染めQテクノロジィが開発した透明な防水塗料を塗布し、木質感を維持しつつ劣化を防止する処置が施されています。そのほか、グラウンド側の外壁には、大小様々な大きさの窓をリズミカルに配置することで、建物内に緑豊かな周辺の自然を取り込み、グラウンドに躍動感を与えるような工夫が施されています(下写真)。
完成お披露目会を開催 多くの関係者が集う
念願のクラブハウスに感謝のスピーチ
2月11日には、現地において㈱ゼルビア様主催の完成お披露目会が開催されました。当日は天候にも恵まれ、町田市の石阪丈一市長をはじめ、多くの来賓、関係者の皆様が参加されました。お披露目会では、冒頭にFC町田ゼルビアのオーナーで、㈱サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏、㈱ゼルビア代表取締役社長の大友健寿氏による挨拶が行われました。大友社長は、「ようやく私たちにとっての『家』ができた。隣接する散策路を近隣の方々が散歩しながら選手たちの練習を眺める、そんな雰囲気のクラブハウスにしていきたい」と述べました。また、主賓を代表して、石阪市長より「チーム創設当初は十分に整備されていない環境で練習をしていたが、多くの方の支援があってここまでこられた。そんな思いを噛み締めながら本日はお祝いしたい」と祝辞が贈られました。
その後、クラブハウス前のゼルビアガーデンに場所を移し、関係者による記念撮影及びテープカットが実施され、テープが切られると会場からは盛大な拍手が送られました(図4)。また、クラブハウスの建設に携わった、隈研吾建築都市設計事務所とナイス㈱に対して、記念品として花束と選手のサイン入りユニフォームが贈呈されました。続いて、チームを代表してランコ・ポポヴィッチ監督から、「私が10年前に監督に就任した時には、こんなに素晴らしい環境が整うとは夢にも思わなかった。皆さんの思いを背負ってピッチで戦い、結果を出して恩返しがしたい」と感謝の気持ちとともに来シーズンへの意気込みが語られました。最後には、㈱ゼルビア取締役会長の下川浩之氏による「人から人へのつながりがあり、今のチームがある。J1昇格にとどまらず、いずれはクラブワールドカップに出場できるくらいのクラブチームにしていきたい。今後とも、FC町田ゼルビアをよろしくお願いします」との閉会の挨拶で締めくくられました(図5)。