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ニュース&レポート

政府 第6次エネルギー基本計画を閣議決定 2030年度の再エネ比率を大幅に引き上げ主力電源化

エネルギー基本計画を3年ぶりに改定

 政府は10月22日、第6次エネルギー基本計画について閣議決定しました。エネルギー基本計画とは、エネルギー政策の基本的な方向性を示すために、2002年に制定された「エネルギー政策基本法」に基づき、政府が策定するものです。今回の改定では、2018年の第5次エネルギー基本計画の策定後、脱炭素化に向けた世界的な潮流や、国際的なエネルギー安全保障における緊張感の高まり、新型コロナウイルス感染症拡大の教訓など、気候変動問題以外のエネルギーに関係する情勢変化が反映されています。

 第6次となる新たな基本計画は、気候変動問題への対応と、日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服という二つの大きな視点で策定されています。これらの視点を踏まえ、2050年カーボンニュートラルに向けた課題と対応と、2030年に向けた政策対応により構成されており、今後のエネルギー政策の進むべき道筋を示しています。

 また、エネルギー政策を進める上での大原則として、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図る、「S+3E」の視点が重要であると述べています。

電力部門の脱炭素化と非電力部門の電化を推進

 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応では、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが重要であり、産業界、消費者、政府などが総力を挙げて取り組む必要があるとしています。

 電力部門においては、再生可能エネルギーや原子力といった実用段階にある脱炭素電源を活用し、着実に脱炭素化を進めることが求められると述べています。特に、再生可能エネルギーについては、2050年における主力電源として最優先という原則の下で、最大限の導入に取り組むことが明記されました。また、現時点で実用段階にある脱炭素技術に限らず、水素・アンモニア発電などのイノベーションを追求していくことが示されました。

 非電力部門では、脱炭素化された電力による電化を進めるとともに、電化が困難な部門では、水素や合成メタン、合成燃料の活用などにより脱炭素化を促進するとしています。また、業務・家庭部門における対応として、住宅・建築物については、建築物そのものの断熱性能の強化や、高効率機器・設備の導入が必要とした上で、耐用年数を踏まえながら、建て替えや設備を入れ替えるタイミングを考慮することなどが盛り込まれました。

 これらの取り組みも含め、安価で安定したエネルギー供給によって、国際競争力の維持や国民負担の抑制を図りつつ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてあらゆる選択肢を追求するとしています。

2030年度エネルギー需給の見通し

需要サイドには徹底した省エネルギーの追求を求める

 2030年に向けた政策対応における需要サイドの取り組みとして、徹底した省エネルギーの更なる追求や、省エネ法改正を視野に入れた制度的対応の検討などが進められます。このうち、業務・家庭部門においては、2025年度までに住宅及び小規模建築物の省エネ基準への適合を義務化するとともに、2030年度以降に新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引き上げや、省エネ基準の段階的な水準の引き上げを、遅くとも2030年度までに実施するとしています。

 また、供給サイドの取り組みのうち、再生可能エネルギーについては、主力電源化を徹底し、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、最大限の導入を促すとしました。

2030年に再エネ比率36~38%程度を見込む

 本基本計画では、2030年度におけるエネルギー需給の見通しについても公表されました(図)。これは、2030年度の新たな削減目標を踏まえ、徹底した省エネルギーや非化石エネルギーの拡大を進める上での様々な課題を克服した場合に、どのようなエネルギー需給となるかを示したものです。このうち、再生可能エネルギーの電源構成比について、既存目標の22~24%から36~38%に大幅に引き上げ、更に研究開発の成果の活用・実装が進んだ場合には、38%以上の高みを目指すとしています。

 再生可能エネルギーの導入拡大に当たっては、適地の確保や地域との共生、系統制約の克服、コスト低減などの課題に着実に対応するため、関係省庁が一体となって取り組むと述べています。

第6次エネルギー基本計画
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html