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山の日特集 地球温暖化防止へ向けて森林が果たすべき役割
これまで経験したことのないような豪雨や大型台風による災害、異常気象による農作物への被害などが世界中で発生しており、気候変動問題に対する具体的な対策は今すぐにでも講じるべき喫緊の課題となっています。今回は、山の日特集として、二酸化炭素の吸収源となるなど、地球温暖化防止に向けて森林が果たすべき役割についてまとめました。
森林の適切な更新で地球温暖化防止に貢献
地球温暖化とは、大気中に存在する温室効果ガスの濃度が高くなることにより、地球表面付近の温度が上昇することを言います。地球温暖化対策には、主な温室効果ガスである二酸化炭素の大気中の濃度を高めないことが重要となります。
樹木は、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収するとともに、炭素を蓄えて成長します。そのため、樹木の集合体である森林は、温室効果ガスである二酸化炭素の吸収源として大きな役割を果たしています。一本の樹木が吸収する二酸化炭素の量は、樹種や樹齢によって異なります。樹種別・樹齢別に比較すると、ブナやクヌギといった広葉樹と比べて、スギやヒノキ、カラマツをはじめとした針葉樹の吸収量が多く、なおかつ樹齢が若いほどよく吸収します(図1)。現在、日本における人工林の約7割をスギ・ヒノキが占め、更にその半数以上が一般的な主伐期である50年生を超えています。本格的な利用期を迎えている今こそ、これらの森林資源を活用し、適切に更新していくことが、森林吸収源の確保につながると言えます。
また、森林による二酸化炭素吸収量については、1997年開催のCOP3で採択された「京都議定書」において、温室効果ガス削減目標の達成に向けて活用することが認められています。吸収源として認められる森林は、1990年以降に「新規植林」や「再植林」がなされた森林のほか、同じく間伐等の適切な整備など「森林経営」が行われている森林となります。ただし、日本の国土は、もとより約7割を森林が占めていることから、新規植林や再植林の対象となる土地はごくわずかです。そのため、森林吸収源となり得るのは、主に「森林経営」が行われている森林であり、今ある森林を適切に管理し、循環利用を進めていくことが重要となります。
脱炭素化へ目標を更に引き上げ
日本では、2015年開催のCOP21で採択された「パリ協定」に基づいて、2016年に「地球温暖化対策計画」が策定されました。同計画では、温室効果ガスの排出量を、2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標を掲げ、総排出量の2.0%に相当する約2,780万CO2トンを森林吸収量で確保するとしています(図2、本紙1面参照)。また、今年7月26日に公表された、2030年度末までを計画期間とする新たな地球温暖化対策計画案においては、2050年カーボンニュートラルに加え、2030年度の温室効果ガスの排出量削減目標を2013年度比46%へ、森林吸収量目標を約3,800万CO2トン(2013年度総排出量比2.7%)へ引き上げるとする内容が示されました。
この目標達成に向けて、分野横断的な施策を含め、森林吸収源対策に総合的に取り組むとしており、住宅等への地域材利用の推進、10月1日より施行される「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づく公共建築物や中・大規模建築物等の木造化・木質化、効率的な木材加工・流通施設の整備など、需要に応じた国産材の安定供給体制の構築などが盛り込まれています。