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ニュース&レポート

国土交通省 長期優良住宅の認定基準の見直しに着手 省エネ性能をZEH相当水準に引き上げ

 国土交通省は6月29日、「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」の第1回を開催しました。同検討会では、改正長期優良住宅普及促進法の成立・公布を受け、長期優良住宅認定制度において新たに創設される災害配慮基準や、脱炭素社会に向けた省エネ対策の強化、共同住宅における認定促進などについて議論がなされます。今回は、一戸建住宅における長期優良住宅認定基準の見直しについて、検討の方向性をまとめました。

2018年より制度見直しを検討、今年5月改正法公布

 国土交通省では、長期優良住宅普及促進法の施行から10年が経過した2018年より、更なる普及促進に向け、長期優良住宅認定制度の見直しに関する検討が重ねられてきました。2018年11月に設置された「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」では、制度等に対する評価や課題の整理がなされました。2020年8月からは、社会資本整備審議会の住宅宅地分科会・建築分科会において、制度等の見直しの方向性について検討が行われ、今年5月に長期優良住宅普及促進法の改正案が公布されました。

 このたびの「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」は、こうした流れを受けて設置されたものです。本検討会では、災害配慮基準や建築行為を伴わない既存住宅の認定制度といった法改正により新設された認定基準に加え、省エネルギー対策の認定基準の強化及び住宅性能評価における省エネルギー対策の上位等級の創設、共同住宅の認定基準の合理化などについても議論がなされます。

災害配慮基準はリスクの大きさに応じた運用を検討

 長期優良住宅について、現行の認定基準では、地震以外の災害リスクが考慮されていません。そのため、今般の法改正において災害配慮基準が創設され、認定基準に「自然災害による被害の発生の防止または軽減に配慮されたものであること」が追加されました。これを受け、本検討会では、①土砂災害特別警戒区域等の災害の危険性が特に高い区域については原則として認定しないこと、②浸水想定区域のように、一定の災害の危険性があるものの一律に居住を避けるべきとまでは言えない区域については、所管行政庁が必要な構造・設備に係る制限を定められるようにすること、などを基本方針(告示)とする方向で検討が進められます。

 また、既存住宅について、現行基準では増改築を伴わないと認定を受けられませんが、今回、建築行為を伴わない場合についても、維持保全計画のみで認定できる制度が創設され、その仕組みが検討されることとなります。

断熱性能、一次エネ消費量性能ともにZEH相当水準に

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ性能を一層向上させつつ、長寿命でライフサイクルCO2の排出量が少ない長期優良住宅やZEHの更なる普及拡大が求められています。これらを背景として、本検討会では、長期優良住宅の「認定基準に関する省エネルギー対策の強化」及び「住宅性能評価における省エネルギー対策に関する上位等級の創設」について、検討が進められます。

 このうち、「認定基準に関する省エネルギー対策の強化」については、新築住宅における省エネルギー対策に関する認定基準について、ZEHの断熱性能や一次エネルギー消費量性能を満たしつつ、太陽光発電設備の設置を求めない「ZEH Oriented」レベルの要求水準とする案が示されました。現行の基準では、断熱等性能については、建築物省エネ法に基づく省エネ基準であるUA※1値≦0.87(6地域の場合)を採用している一方、一次エネルギー消費量性能については基準が設けられていません。これを、断熱等性能については、ZEH相当水準となるUA値≦0.6(6地域の場合)とし、一次エネルギー消費量性能についても基準を設け、同じくZEH相当水準のBEI※2≦0.8とする方向で検討がなされます(図1)。

省エネ対策見直し案

断熱等性能等級、一次エネ消費量等級に上位等級を創設

 住宅性能表示制度についても見直しを進めています。これまで、省エネルギー対策等級に関する現行基準は、断熱等性能等級4、一次エネルギー消費量等級5が最高等級となっており、また、住宅性能評価の取得に当たっては、断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級のいずれかを選択して取得すればよいこととされています。これについて、本検討会では、より高い省エネ性能の住宅を評価するべく、上位等級を創設する案が示されました。

 見直し案では、長期優良住宅の認定基準の見直し案と同様、断熱等性能等級の「等級5」として、「ZEH Oriented」レベルの要求水準となるUA値≦0.6(6地域の場合)、一次エネルギー消費量等級の「等級6」として、同じくBEI≦0.8とする方向で検討が進められます(図2)。また、住宅性能評価の取得においても、長期優良住宅の認定基準と同様、断熱等性能等級及び一次エネルギー消費量等級の両方を必須項目として位置付ける方針です。

>国土交通省「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」

※1 外皮平均熱貫流率(住戸内外の温度差1度当たりの総熱損失量(換気による熱損失量を除く)を外皮の面積で除した数値)
※2 基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合(その他一次エネルギー消費量を除く)