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政府 改正公共建築物等木材利用促進法が成立 対象を民間建築物に拡大 木材利用の更なる促進へ
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が6月11日、参議院本会議にて可決、成立しました。これにより、法律の名称が「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改正されるとともに、木材利用を促進する建築物の対象範囲の拡大などがなされます。今回は、同改正法のポイントについてまとめました。
名称・目的に「脱炭素社会の実現」を明記
今回成立した「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下、改正法)は、2010年に施行された公共建築物等木材利用促進法を改正したものです。同法は、木材の利用の確保を通じて林業の持続的かつ健全な発展を図り、森林の適正な整備および木材の自給率の向上に寄与することなどを目的としたもので、これにより公共建築物の木造化・木質化が推進されてきました。
改正法においては、木材利用を促進する対象について、現在の低層の公共建築物から民間建築物にまで拡大したほか、法の目的として「脱炭素社会の実現に資すること」との文言を新たに追加しました。
更に、木材の利用促進は、森林による二酸化炭素の吸収作用の保全および強化や、二酸化炭素の排出の抑制とその他の環境への負荷の低減などが図られるように行われなければならないこと、山村その他の地域の経済活性化につながるものでなければならないことなどが、新たに基本理念として定められました。事業者の責務についても新たに規定され、林業および木材産業の事業者は、建築用木材等の適切かつ安定的な供給に努めなければならないことが盛り込まれています。
なお、同法は、今年10月1日に施行される予定です。
中高層建築物、非住宅では需要拡大の余地残す
公共建築物等木材利用促進法の施行以来、建築物の木造化・木質化が積極的に進められてきました。林野庁によると、2019年度に国、都道府県および市町村が着工した木造の建築物は2,212件に上り、同法において積極的に木造化を促進するとされている3階建て以下の低層の公共建築物の木造率(床面積ベース)については、2010年度の17.9%から10.6ポイント増加し、28.5%まで上昇しています(図1)。なお、公共建築物全体では、2010年度の8.3%から5.5ポイント上昇し、13.8%となっています。
また、林野庁では、民間の住宅・建築物を含めた建築物全体について、国土交通省「建築着工統計調査2020年」に基づき、用途別・階層別の木造率について公表しています(図2)。これによれば、1~3階建ての低層住宅については、木造率が8割に上る一方で、4階建て以上の中高層住宅および非住宅建築については、いずれも1割に達していないという現状にあります。特に非住宅については、1階建てでは19.3%、2階建てでは17.6%、更に3階建てでは3.0%にとどまっています。
木材需要を更に拡大していくには、こうした非住宅や中高層建築物における木造化・木質化を進め、新たな需要を創出することが重要とされています。同法施行後、これらの課題に対処するため、木質耐火部材やCLT等といった新たな製品・技術の開発が進んでおり、制度面や技術面において、環境整備が進んできています。また、各地で非住宅・中高層建築物の木造化等を促進する動きがあり、企業・団体等が連携して、課題解決を図る取り組みが実施されてきました。
協議会と議員連盟が連携して法改正へ
こうした中、2019年5月には、川上から川下までの団体・企業が参加して、「森林(もり)を活かす都市(まち)の木造化推進協議会」が設立されました。同年4月に発足した「森林(もり)を活かす都市(まち)の木造化推進議員連盟」と連携し、法律・制度の見直しを含めた、都市の木造化・木質化の実現に向けた取り組みが進められてきました。
昨年6月には、同議員連盟の総会において、同協議会から「木材利用促進のための法律の拡充に関する要望書」が提出され、木材利用促進法の抜本的な改正について要望が出されました。今回の改正法は、同議員連盟からの要望を受けて取りまとめられたもので、先の国会に議員立法として提出されていました。
施策の拡充で木材の利用促進を更に強化
こうした動きの中で成立した改正法では、建築物における木材の利用促進について、基本方針、都道府県方針および市町村方針における対象範囲が、公共建築物から民間建築物を含む「建築物一般」に拡大されました。加えて、民間建築物における木材の利用を促進するために、国および地方公共団体は、木造建築物の設計および施工に関する先進的な技術の普及促進や、中高層の木造建築物または大規模な木造建築物に関する設計および施工に関する知識や技能を有する人材の育成、建築用木材および木造建築物の安全性に関する情報提供など、必要な措置を講ずるよう求められることになります。
また、国や地方公共団体と事業者等による「建築物木材利用促進協定」の制度が創設されました。同協定では、事業者等が掲げる建築物における木材の利用に関する構想や、その実現に向けた国や地方公共団体による支援の内容などについて定められています。国は、事業者等の取り組みを推進するために、財政上の配慮といった必要な支援を行い、地方公共団体は、国の措置に準じて、必要な措置を講ずるよう努めることが求められます。
「木材利用促進本部」を設置し、基本方針の策定等を所轄
農林水産省に、特別の機関として「木材利用促進本部」が新たに設置される予定です。同本部では、建築物における木材の利用の促進に関する基本方針の策定および実施の推進、木材利用に関する施策の実施の推進などを担います。同本部の構成は、農林水産大臣が本部長、総務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣等が本部員となっています。
そのほか、木材の利用促進について国民の関心と理解を深めるために、木材利用促進の日および木材利用促進月間が設けられました。10月8日が木材利用促進の日、10月が木材利用促進月間と制定され、国や地方公共団体は、この期間において、その趣旨にふさわしい事業が実施されるようにすることが求められます。