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ニュース&レポート

国土交通省 「国土の長期展望」最終取りまとめ案 真の豊かさを実感できる国土の実現へ

急激な状況変化に応じた国土づくりの方向性を示す

国土交通省は5月20日、国土審議会における国土の長期展望専門委員会の第15回を開催し、国土の長期展望に関する最終取りまとめ案を示しました。同委員会では、昨年10月の設置以降、昨今の国土を取り巻く状況変化を踏まえ、2050年までに日本の国土や人々の暮らしがどのように変化しているかを調査・分析し、今後の国土づくりの方向性について議論を進めてきました。

最終取りまとめ案では、現行の第二次国土形成計画が策定された2015年以降にも、中位推計を大幅に下回る出生数の減少や新型コロナウイルス感染症の拡大、風水害を中心とした自然災害の激甚化・頻発化、デジタル革命の急速な進展、「2050年カーボンニュートラル」宣言に見られる地球環境問題の切迫など、国の持続可能性を脅かしかねない急激な状況の変化が生じていることを課題に挙げ、今後の国土づくりにおける方向性を示しています。

三つの視点で具体的取り組みを推進

本取りまとめ案においては、2050年を見据えて目指す国土づくりの究極目標として、「『真の豊かさ』を実感できる国土」が掲げられています。そして、「真の豊かさ」を追い求めるために必要となる共通の土台として、「安全・安心」「自由・多様」「快適・喜び」「対流・共生」の四つを示しました。その上で、目標実現に向けた基本的方針として、個性豊かで利便性の高い持続可能な地域を創出していく「ローカル」の視点、激化する国際競争の中で稼ぐ力を維持・向上させていく「グローバル」な視点、人・モノ・情報の交流だけでなく、土地・自然・社会とのつながりも加えた「ネットワーク」の視点の三つの視点が重要であるとしています。

具体的な取り組みの方向性として、「ローカル」の視点について、デジタル世界は地方の地理的条件の不利を軽減するとし、ポストコロナ時代には大都市と地方の双方の強みを生かす国土づくりを目指すべきとの考えを述べています。その上で、デジタルとリアルが融合する地域生活圏の形成に向けて、テレワーク等で地方に居住し都市の所得を得る新たな暮らしの実現などを示しています。

「グローバル」の視点については、国際競争力の向上に向けて、イノベーションの創出による付加価値の高い製品・産業の創出や生産性の向上など、新時代に対応した産業構造への転換に加え、大都市のリノベーション、東京・名古屋・大阪の三大都市圏が一体となったスーパー・メガリージョンによる新たな価値の創出の重要性を挙げています。

「ネットワーク」の視点については、リアルな交流の基盤である「交通ネットワーク」の充実、リモートの交流の基盤である「情報通信ネットワーク」の強化に加え、土地や自然、社会と人とのつながりの重要性を示しました。そして、2050年カーボンニュートラルの実現に資する国土構造の構築に向けた取り組みとして、昨年12月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の推進とともに、これと連動して、エネルギーの地産地消に向けた分散型エネルギーシステムの形成などの必要性を述べています。更に、農林業をはじめとした地域産業の収益の確保を図りつつ、木質バイオマス発電などの再生可能エネルギーの生産・導入や、森林の適切な整備・保全および木材利用の拡大等による炭素の吸収・固定を図っていく必要があるとしています。加えて、非住宅・中高層建築物分野への木材利用などにより、「伐って、使って、植える」循環サイクルを確立し、林業の成長産業化を実現するとともに、中長期的な森林吸収量を最大限に確保していく方針を示しました。

新たな国土計画の必要性

同委員会では、現行の第二次国土形成計画が2015年からおおむね10年間を目標とする計画であることを踏まえ、速やかに新たな国土計画の検討を開始すべきと指摘しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大がデジタル化の急速な進展をもたらし、これまで目指してきた政策を一気に進める契機になっているとの認識を示しています。その上で、新たに策定する国土計画は、本取りまとめの内容を踏まえ、具体的な政策につながる実効性のあるものにするよう提言しています。

>国土交通省 報道発表資料