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国土交通省 「国土の長期展望専門委員会」が中間とりまとめ 2050年を展望した国土の方向性と課題を整理
目指すべき国土の姿を整理
国土交通省は10月23日、「国土の長期展望」に関する中間とりまとめを公表しました。同省は、昨年10月以降、国土審議会計画推進部会の下に国土の長期展望専門委員会を設置し、2050年の国土の姿と長期的な課題について検討を進めてきました。これらの内容を踏まえ、今回の中間とりまとめでは、人口構造をはじめとする2050年の国土を巡る長期的な推計等を示すとともに、「物」にとどまらない「真の豊かさ」を目指すことを基本的な考え方として明確化しています。また、国土づくりにより対応すべき「リスク・課題」や、豊かさの実現のために目指すべき「国土の姿」に関して、論点を明らかにしています。
将来推計による今後の展望
今回の中間とりまとめでは、長期展望の検討に当たって前提となる日本が置かれている状況について、人口減少・少子高齢化、気候変動と自然災害の激甚化・頻発化、感染症等に対する危機意識の高まり、技術革新の進展などの項目で整理をしています(図1)。その上で、2050年をターゲットとして、将来の国土を見据えた状況変化に関する推計がなされました。
このうち、人口減少・少子高齢化に関しては、2050年の総人口は1970年時とほぼ変わらないものの、65歳以上の人口割合は1970年の7.1%に対して2050年の推計値は37.7%と大幅に高齢化していること、少子高齢化地域が2050年に居住地域の56%となる見込みであることなどが示されました。また、自然災害の激甚化・頻発化について、洪水、土砂災害、地震、津波に対してリスクのある地域は全国に広がっており、これらの災害リスクにさらされる人口比率は2050年には全体の73.4%に上ると予測しています。
「真の豊かさ」を実感できる国土形成
国土づくりに向けて対応すべき「リスク・課題」については、突発性のリスクとして自然災害と感染症を、進行性の課題として日本の活力低下や地球環境の変化、東京一極集中などを示しています。更に、このたびの新型コロナウイルス感染症の拡大で認識されたリスクとして、自然災害と感染症の同時発生などの複合リスクを挙げています。そして、地域の核への集約を図りながら地域内・地域外をネットワークでつなぐ多核連携型の国土づくりを通じて、これらのリスクや課題に適切に対応していくことが不可欠であるとしています。
これらのリスク・課題を整理した上で、「真の豊かさ」を実感できる国土形成に向けては、特にデジタル化の流れが働き方や暮らし方に大きな影響を与えており、いかにデジタル化のメリットを享受して利便性の高い国土を実現していくかが重要だと述べています。そして、今後の論点として、時間・空間・生活ともにゆとりのある豊かな暮らし、様々な働き方や暮らし方を選択できる自由度の高さ、多様な価値観の理解と新たな価値の創造などを挙げ、国土政策や関連分野の議論を深めていくことの必要性を示しました。
同省は、今回の中間とりまとめの内容を踏まえつつ、更に検討を深め、2021年初夏を目途に「国土の長期展望」の最終とりまとめを行う予定です。