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ニュース&レポート

林野庁 過剰木材在庫利用緊急対策事業の公募開始 公共建築物等の木造化・木質化を緊急支援

林野庁は2020年度の補正予算において、新型コロナウイルス感染拡大による対策として、公共建築物等における木材利用を支援する「過剰木材在庫利用緊急対策事業」を講じています。このたび、同事業の事業実施主体である(一社)全国木材組合連合会が公募を開始しました。

構造材・内装材・外構材の活用を推進

 林野庁による「過剰木材在庫利用緊急対策事業」は、新型コロナウイルス感染拡大による輸出の停滞等により、丸太や木材製品の在庫量の増加といった影響が生じていることを受け、公共建築物等の構造材や内装材、公共の場に設置される外構部等における木材の利用促進を緊急的に支援するものです。工務店等の施工者に対して、材料費や工事費などが助成されます。

 対象となる施設は、学校、保育園、病院、老人ホーム、駅、庁舎等の公共建築物等木材利用促進法に基づく公共施設、災害対策基本法に基づく指定公共機関の施設と、これらの施設に設置される塀や柵、デッキなどの外構施設等です。また、施主が国でないことや、事業終了後の翌年度から起算して少なくとも5年間は申請時の用途を継続することなどが要件となります。なお、産業用途と居住用途を兼ねる建築物については、居住用途部分における木材製品への利用は助成の対象に含まれません。

JAS材利用で4件以上申請可能

 事業申請は、構造材・内装材・外構材の区分ごとに、それぞれ3件以内で行うことができます。ただし、申請者がクリーンウッド法(以下、CW法)の登録を受けている場合、または一部でもJAS材を利用する場合は、4件以上の申請が可能です。なお、構造材にJAS材を利用する場合、構造耐力上主要な部分に一部でも利用することが必要です。更に、これら二つの条件をどちらも満たせば、同一の区分において10件以上の申請が可能となります。

 また、同一施設において、構造材と外構材の区分、内装材と外構材の区分とを同時に申請することは可能ですが、構造材と内装材の区分を同時に申請することはできません。

緊急対策事業内容

構造材

新築・増築・改築が対象

 構造材については、公共建築物等の新築、増築、改築が対象で、いずれも構造材の全部または一部に木材製品を使用し、新規に設置する場合に限ります。

 助成額については、①事業申請時に申告する延べ床面積に1㎡当たり3万9千円を乗じた額、②交付申請時に申告する延べ床面積に1㎡当たり3万9千円を乗じた額、③交付申請時に申告する構造材利用費(仮設工事費、基礎工事費、木工事費、および内装材利用費の合計)に2分の1を乗じた額のうち、いずれか低い額となります(図1)。

内装材

1㎡当たり最大1万2千円を助成

 内装材については、公共建築物等の修繕のみが対象で、仕上げの表面について新規に木材製品を利用することが要件となります。

 助成額については、「壁および天井」の仕上げに利用する場合は、①事業申請時に申告する内装材利用面積に1㎡当たり1万2千円を乗じた額、②交付申請時に申告する内装材利用面積に1㎡当たり1万2千円を乗じた額、③交付申請時に申告する内装材利用費(木質化部分にかかる仮設工事費および内装仕上げ工事費の合計)に2分の1を乗じた額のうち、いずれか低い額となります(図1)。

 「床」の仕上げに利用する場合は、「壁および天井」と同様の比較を、1㎡当たりの基準額を7千円に変更して計算した上で行います。

 更に、「壁および天井」と「床」をともに木質化する場合は、それぞれの①~③について合算した上で比較し、いずれか低い額が助成されます。

外構材

高耐久性の合法木材が対象

 外構材については、木材製品を利用した公共建築物等に設置される塀や柵、デッキなどの外構施設のほか、公園に設置される遊具など、公共の用に供する場所に設置される工作物も対象となります。

 「塀または柵」に利用する場合は、木材製品の利用量が1m当たり0.04㎥以上であること、デッキや遊具といった「その他外構施設」では、木材製品の利用量が0.2㎥以上であることが要件となります。なお、一定区域内で複数の外構施設を木質化する場合は、全ての外構施設における木材製品の利用量の合計が0.5㎥以上であることが要件となります(図2)。

 利用できるのは、CW法に基づき合法性が確認された木材製品です。利用部位に応じて、所定の耐久性を有していることが必要です(図3)。地際または基礎に接する部位では、①JAS規格のK4、またはAQ認証1種の木材製品を使用することが求められます。支柱などの構造上重要な部位では、①に該当する木材製品のほか、②JAS規格のK3、またはAQ認証2種の木材製品を使用することが、その他の部位では、①と②に加え、指定された規格を満たす木材保護塗料、表面処理剤の塗布等による処理を施した木材製品を使用することが必要となります。

外構材

CW法登録事業者は増額

 助成額については、3,000万円が上限となります(図4)。「塀または柵」では、①事業申請時に申告する外構利用延長に1m当たり1万7,500円を乗じた金額と、事業申請時に申告する外構材利用費(当該部の木質化部分にかかる仮設工事費、基礎工事費および木工事費の合計)の見積額を比較していずれか低い方の金額、②交付申請時に申告する外構利用延長に1m当たり1万7,500円を乗じた額、③交付申請時に申告する外構材利用費のうち、いずれか低い額となります。ただし、CW法登録事業者から全ての木材製品を調達するか、登録事業者が施工する場合は、基準額の1万7,500円が3万円に増額されます。

 デッキなどの「その他外構施設」では、①事業申請時に申告する木材製品利用量に1㎥当たり10万円を乗じた金額と、事業申請時に申告する外構材利用費の見積額を比較して低い方の金額、②交付申請時に申告する木材製品利用量に1㎥当たり10万円を乗じた金額、③交付申請時に申告する外構材利用費の金額のうち、いずれか低い金額となります。また、「塀または柵」と同様に、CW法登録事業者から全ての木材を調達、または登録事業者が施工する場合は、基準額が10万円から15万円に増額されます。

 一定区域において複数の外構施設を木質化する場合は、①事業申請時に申告する外構利用延長または木材製品利用量にそれぞれ所定の金額を乗じた金額の合計金額と、事業申請時に申告する外構材利用費の見積額を比較して低い方の額、②交付申請時に申告する外構利用延長または木材製品利用量に所定の金額を乗じた額の合計額、③交付申請時に申告する外構材利用費の金額のうち、いずれか低い額となります。

申請期限は10月30日

 申請に当たっては、申請する物件が所在する都道府県の地域木材団体に対して、事業申請書(様式1号)等を10月30日までに提出します。(一社)全国木材組合連合会(以下、全木連)は、審査の上、審査結果通知書(様式3号)を通知します。審査結果通知書に記載された日付け以前に工事に着手している場合は、助成の対象とならない点に注意が必要です。

 事業者は、事業が完了した日から起算して1カ月を経過した日、または2021年2月26日のいずれか早い期日までに、地域木材団体を経由して全木連に対して、助成金交付申請書(様式6号)および木材製品の使用量が判別できる書類などの必要書類を提出します。全木連は、交付申請内容を審査した上で助成額を確定し、交付決定通知書(様式7号)を通知します。その後、事業者が助成金交付請求書(様式8号)を全木連に提出することで、林野庁より助成金が支払われます。

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