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内閣府 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会 最大クラスの地震で津波高30m弱に
巨大津波の発生が切迫した状況
内閣府は4月21日、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」(座長:佐竹健治東京大学地震研究所教授)の概要報告を公表しました。同報告では、日本海溝・千島海溝のうち、北海道から岩手県の太平洋沖にある領域で最大クラスの地震が発生した場合について、津波高と震度分布などの推計結果が示されました。
同検討会では、2011年の東北地方太平洋沖地震における震源断層域の北側領域あるいは南側領域で、今後、巨大な津波を伴う最大クラスの地震が発生する可能性があるとし、このうち北側領域にある日本海溝・千島海溝沿いを対象領域として、地震・津波の対策の見直しを行うべく検討が進められてきました(図1)。検討に当たっては、過去約6千年間における津波堆積物の調査資料を基に推定しており、過去に発生した津波の間隔が300~400年であることを踏まえると、最大クラスの津波の発生が切迫している状況にあるとしています。
岩手県から北海道の太平洋側で強い揺れ
今回の概要報告では、対象領域を岩手県沖から北海道日高地方の沖合の「日本海溝(三陸・日高沖)モデル」と、襟裳岬から東の「千島海溝(十勝・根室沖)モデル」に分けて検討しています。そして、津波断層モデルの地震の規模は、前者モデルがモーメントマグニチュード(Mw) ※9.1、後者モデルがMw9.3として推定しています。
これらの推計結果によると、津波高は北海道えりも町で27.9m、青森県八戸市で26.1mとなったほか、岩手県宮古市で30m近く、宮城県や福島県でも10m超と、東日本の太平洋沿岸の広範囲で大きな津波が想定されています(図2)。
また、震度分布については、岩手県から北海道の太平洋側の広い範囲で強い揺れが推定されています。北海道厚岸町付近で震度7、北海道えりも町から東側の沿岸部で震度6強、青森県の太平洋沿岸や岩手県南部の一部で震度6強となっています。
なお、同検討会はこれらの推計結果について、広範囲におよぶ領域での全体を捉えた防災対策の参考とするためのものであり、必ずしも各局所的なエリアにおける最大の津波高・震度分布を示しているものではないとしています。
内閣府では、今回の概要報告を受け、中央防災会議の下に設置された「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」において、地震の被害想定および具体的な防災対策を検討していく方針です。また、同検討会ではWGでの審議を踏まえ、報告書をとりまとめる予定となっています。
※モーメントマグニチュード(Mw)とは...地震による岩盤のずれの規模をもとにして計算したマグニチュードのこと。一般にマグニチュード(M)は地震計で観測される波の振幅から計算されるが、規模の大きな地震になると岩盤のずれの規模を正確に表せないため、モーメントマグニチュード(Mw)が有効となる。